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敗北した元勇者の放蕩の旅  作者: 頂 有栖
第2章 マリーシア編

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冒険の書 X17

「サァ盛リ上ガッテキタネ!!トップガ1周シタ所デ現在の状況ダヨ!!

現在トップハ我ラガ王 リバイアサン!!続イテ2位ハモチモチ推薦チーム!!ソシテ3位ハ キングオルカダー!」


《キングオルカ、あの黒と白の魚。もうだいぶこっちに迫ってきてる。魔法を使う時巻き込まない様気をつけて。》

「わかった!…シャチの魔物か。こっちは魔法で強化してるってのにどいつもこいつも馬鹿みたいに速えな。

マリィ!体力は大丈夫か!」

『無論じゃ!』


こちらも2周目に突入。

後方を見るとキングオルカという名のシャチの魔物が凄い勢いで迫ってくる。

この距離だと【イグニッションブースト】を使うと巻き込んでしまうから使えないな!!


「フッ…ガス欠カ?」


次の手を考えてる間にキングオルカに並ばれる。

こいつも喋れるのかよ!?俺がほとんど会わなかっただけで喋れる魔物って結構いるのか?


そのまま少し前を行かれる。素の速さなら向こうがかなり上か。


『くっ…むかつくのじゃ!!主よ!!』

《京介、今なら》

「了解!アイ!シールド頼む!」

『ガッテーン!』


直線で再び【イグニッションブースト】の爆発で加速、速度強化の魔法もかけ直し、何とかマグロサンとキングオルカに食らいつく。

だがおもったより俺とアイの魔力消費が激しい。

二属性を同時に使う魔法は消費する魔力も多い。そのダメージから防いでくれるシールドもかなり魔力を使う様でアイにも疲れが見える。

その上カーブもそれなりにあるため、水や風の魔法で速度を落とさない様に曲がる為にゴリゴリ魔力が減っていく。


《京介、大丈夫?》

「だい…丈夫!!でも魔力切れになったらぶっ倒れるからその時は頼むな!」


魔力は休んであると少しづつ回復する。一気に回復する手段が無い分、ペース配分を間違えたら一気に減速してしまう。


再びきた連続カーブ。

マリィが身体を捻ると同時に魔法を放ち加速していく。

しかしその後もカーブでは少し距離を詰めれても直線で少し離されてが続く。

2週目を走り終わり、3週目に突入。振り切られないように魔法を維持しながらマリィの体力を魔法で回復していく。

やはり飛び抜けて速いのは前の2匹のようだ。後方の姿はほとんど確認出来ない。



そして…3週目も中盤、なんとか食らいついてはいるがもう終盤なのに前の2匹との距離は完全には詰められない。

俺の魔力もまだ残ってるが、【イグニッションブースト】ではせいぜい並ぶのが限界。このままでは勝てない…!!なら…やるしかないっ!!


「……2人ともごめん!!

マリィ!今から1番強い強化魔法をかける!ダメージは俺が受けるからここからは任せる!!」

《京介、まさか…。》

『え!?何!?』


最初にかけるのは闇魔法【スケイプゴート】、マリィが受ける魔法による代償を代わりに俺が受ける魔法だ。

次に使うのは2人に使うなと言われた必殺魔法、勝つにはこれしかない。


「【オーバードライブ】!!」

『お!おお!?何じゃ力がみなぎるぞ!!こんな隠し球を持っておったとはの!!』


火と水の最強の強化魔法。オーバードライブ以外の魔法による補助は維持出来なくなって無くなったが、その分段違いに速くなったマリィの全力の泳ぎでマグロサンとキングオルカに追いつく。

水中のお陰で身体が煮えるように熱いのはなんとかなるが、痛みが今まで使った時より数倍キツイ…!!


『…………!!』

「ナカナカヤルナ!!ダガ今日ノチャンプハ渡サン!!」


三者ならび、最後の直線を駆ける。

途切れかける意識の中、ナディさんの「ゴール!!!」の声だけが響いて聞こえた。



─────────────────────



目を覚ますと青空が見える。

何かの上で眠っていたようだ。すこし身体がダルいが、それだけで特に問題はない。


「ってレース!!どうなった!?」


飛び起きようとした瞬間、べしっと頭を叩かれ倒れ込む。

倒れ込んだ先にはぷにょんと柔らかい感触。これは…アイの身体か。


「京介、私二度と使わないでって言った。なのにオーバードライブつかった。」

『…もう治してあげないって言ったのにー。』


アイとモノ子の怒った顔に見つめられ、思わず縮こまる。


「あー、えっと…水の中なら大丈夫かなーって。ほら、熱くなる魔法だし…。」


実際の所はスケイプゴートで肩代わりしたからか、自身に一切の強化が無い分身体へのダメージが思った以上にでかかった。ガチで痛みで死ぬかと思ったぞ。


「馬鹿者、主が無茶して我らが喜ぶなどと思うでない!主に何かあったら我らはどうするのじゃ!」


隣に居たマリィは目に涙を溜めており、ポコポコと叩かれる。しまった、思ってる事が筒抜けだった。


「3人とも悪かった!!本当にもう使わないからこの通りだ!!」


全力で謝罪する。間違いなく今回は約束を破った俺の落ち度だ。


『…キョースケ。もう身体痛くない?』

「え…ああ。少しダルいけど全然痛くない。」

『良かった。ほんとのほんとにこれが最後だからね。』

「…ごめん。アイが治療してくれたんだよな。アイも魔力いっぱい使ったのにごめんな。」


「私は許さない。…でも、デート…。オーシャでデートしてくれたら許す。その…二人で…。」


2人でデート…。モノ子の言葉にチラっとアイとマリィの方を見る。マリィはため息をつくと頷き、アイはむむむっと言った顔をしている。


『アイともデートしてくれるなら許すよー!』

「はぁ、好きにするがよい。そうじゃ、我も何か買ってもらおうかの。」


「…わかった。3人とも別々にエスコートさせていただきます。

ってそうだ、レースの結果は!?」


「オ、起キタンダネ。ナイスファイトダッタヨ。」

「想像以上ダッタ、妻二良イ所ヲ見ミセタカッタノダガナ。マタ共二泳ゴウデハナイカ。」


俺達のいる場所に上がってきたのはナディさんとキングオルカ。


「優勝ハ王、2位ハアンタ達、3位ハオルカダヨ。アタシノ旦那二勝ツナンテスゴイジャナイカ。」

「悔シイガ負ケダ。次ハ勝ツゾ。」

「次は我の力だけで勝つからの。楽しみにしとくんじゃ。」


この2人…夫婦だったんだ。喋れるし、キングオルカの泳ぎは凄かったし名の知れ渡ってる魔物なのかな。

そうおもっていると突然背後からでかい水飛沫が飛び散る。跳ねたマグロサンによる水飛沫みたいだ。そのままマグロサンは何処かに泳いで去っていった。

結局何者だったんだろう、魔物?ありえない程デカかったが、見た目はマグロそのものだし。でも圧というか存在感はとてつもなかったな。


「…今回は負けじゃ、主らのさぽーとありじゃが結構いい線行ったんじゃがの。」


しょぼんとするマリィ。しかしそっか、マグロサンには負けちゃったか。悔しいが命は無事だしもっと強くなってリベンジするとしよう。あれ…俺達何しにきたんだっけ…。


「まあまだ伸び代あるって事で、次こそ優勝出来るよう頑張ろうな。…所でここどこ?」


地図にはこの一帯には陸地は無かったと思うが…。そう思い周りを見渡すと、よく見ると甲羅の上だと気づいた。


「これ…でっかい亀か…?」

『モチモチ達のお迎え亀さんなんだってー。』


お迎え亀?亀のタクシー…いやアイドル用のバス的なやつか?

俺が起きるまで海上に上がってくれてたのか。モチモチ達には世話になりっぱなしだな。


「ソレジャ アタイラモ行クヨ。マタ会エルノヲ楽シミ二シテルネ。」

ナディさんとオルカも海に潜って去っていく。

よく見るとあれだけ大量に居た魚達の殆どが居なくなっていた。


モチモチ達にお礼を言った後、そのまま来た時の海岸近くまで送って貰える事に。

マリィの話ではここでの仕事は終わったので、これから別の海域に向かうらしい。たまたまだったがこの子達に会えて良かった。


「いっぱい世話になったな。元気でな。」

『またねー!!』

「モチモチ…ばいばい。」

「またのー!!」


「キュキューキュー!!」


モチモチ達が巨大亀の背中にくっついて去っていった。

当分沖に出る事はないだろうから、しばらくは会うことは無いと思うがまた会える気がする。


「さて、オーシャに帰るか。」


─────────────────────



「っと言うわけでもうあの海域は問題ないかと思います。」

「……………。」


早速オーシャのギルドに戻って船長に報告する。

モチモチ達に確認してもうあの海域が大丈夫なのは分かってるから報告はちゃんと出来る。


「…あんたら、昨日の今日であのリバイアサンとやりやって解決したって?」


「解決ではないの。あやつらが勝手にどっか行ったのじゃ。」

『負けちゃったもんねー。』


むむむっという表情をするマリィ。俺達を乗っけてとはいえサポートありで負けたのが相当堪えているようだ。


「まあ…今から偵察だして大丈夫なら明日から船が出せるよ。ありがとね、本当に助かったよ。」

「いえ、多分俺達が何もしなくても今日には魚たちも解散してたと思います。」


実際そうだ。俺達が1日遅れてオーシャに来たり、オーシャでもう1日のんびり準備してたら海に行っても何も無かっただろう。


「アタイらじゃもう安全かどうかの確認さえ命懸けだからね。アンタらも無事帰ってきて良かったよ。」


その後、報酬を受取り宿に戻る事に。戦いこそしなかったが濃い1日だったな…。

宿に着くと丁度夕食時、食堂につき空いてる席に4人で座ると山盛りの料理が運ばれてくる。


1つは平らな鉄鍋にベイと山盛りのシーフードが盛られたパエリアみたいな料理。もう1つは魚のステーキみたいな料理。最後は柔らかいチーズみたいなのが乗ったサラダだ。


『おいしそー!!』

「よし。今日も皆お疲れ様。それじゃ手を合わせまして…」

「「「『いただきます(じゃ)!』」」」


早速大きなスプーンでパエリアに食らいつく。

魚介とオリーブの旨みがベイにしっかり染み込んでて美味い!!エビはプリプリ、イカも美味い。

オリーブの実も入っていた。昔は苦手だったが、面白い食感と風味で癖になりそうだ。


続いて魚のステーキ。サラダと共に取り分けてくれたモノ子に礼を言いつつ1口。

あ、マグロだ。脂身の味が強いから中トロだろうか?漬けてから焼いているのか中までしっかり味がついてて美味い。パエリアとも合うが白いベイに乗っけて食べても美味そうだ。

あの超でかいマグロサンを思い出してしまうが…。


そしてサラダ、葉野菜のサラダだが乗っているフレッシュチーズのような物にナッツなどがまぶしてある。クリーミーなチーズにナッツと葉野菜の食感が合わさって美味い。だが結構あっさり目の味なのでパエリアやマグロステーキとも相性ぴったしだ。

おかわりもしてみんなも大満足のようだ。こうして今日もいっぱいご飯を食べた。



食事を終え宿の部屋に戻る。一緒にシャワー浴びようというアイを2人に任せて一息ついた。


「ふぅ…。しかしあんな凄いのがいるとは…。

戦ったらどうなるかは分かんないけど、この世界にはまだあんな化け物みたいなのが居るのかな…。」


魔王と戦った時を思い出す。魔法も攻撃もちゃんと効いてるのか分からない程に強かった。

そして今日のマグロサンとオルカ。魔王以外ならもう早々負けることは無いと思っていたが結果は惨敗。正直レースなら魔法使えば余裕だろとか思っていたが、1度としてマグロサンの前を取る事も出来なかった。その上もう使わないと約束していた魔法まで使ってしまった。


「……ダメだな、1人だと後ろ向きな事ばかり考えちまう。」


あの子達と楽しい旅にするって決めたんだ。

だからその為にも、もっと強くならなくては。


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