冒険の書 X11
『大いなる輝きの主よ、その眩き御身の……』
第二の間への通路を歩きながら随分長い呪文を詠唱するアイ。俺とマリィは後ろを向きながら目を瞑ってついて行っている。
『ひっさーつ!!【サンシャイン】!!』
目を瞑っているにも関わらず、視界をとてつもない光量が襲う。
事前に凄く光るから見ちゃダメだよー。と言われていたが、目を瞑っていても眩しいほどの光ってすごいな。
すぐに落下音がすると、少ししてドスッとかバコッという鈍い効果音が響く。
『あ!もう目あけていいよー!!』
目を開けるとそこにはズタボロになっためちゃくちゃデカイ翼竜。多分ケツァルコアトルスっぽいんだけど、だいぶボコボコなのでもう判別出来ない。
『いっぱいいるかもーとおもって奇襲したけど1匹だったねー。』
粘液の身体で巨大な腕を打ち合わせるアイ。人間体の時の雰囲気は僧侶とかっぽいのに、戦うときはパワーファイターよね。
「つっええな。アイさんや、今使った魔法について教えて貰ってもいいかい?」
『うんいいよー!!さっきのはねーサンシャインって魔法なんだー。』
光魔法【サンシャイン】
小さい光を放つ【ライト】の魔法の最上位版らしい。
効果自体は同じなので、一見戦闘では使えなさそうだが、問題はその光量。
使用者は辺りが明るくなるくらいの効果なのだが、周囲はその光をみただけで失明しかねない程のようだ。思ったよりずっとえげつないな。
それを使い突入と同時に部屋の上空にいる翼竜を撃ち落として、あとは殴る蹴るで倒したらしい。
詠唱がクソ長い割に攻撃力は無いから使いにくいと言ってたが使い方次第でほんとに最強魔法だろ。
「こらこら!我がなびげぇしょんする前に終わってしもうとるではないか!!
せっかくの初仕事なんじゃからもっとやらせんか!!」
プンプンと怒りながら地団駄までしている。
「そういや俺達より前にきてた冒険者はマリィの話してなかったが、その時はナビゲーターしなかったのか?」
聞いた話しでは恐らくブランホーンレクスと最初にあって戦った様な口ぶりだった。
「しふと制じゃ。我が寝ておる時間は第1の間の者が真ん中の部屋で待ち構えておる。」
ダンジョンってそんな感じなの?なんか24時間営業のコンビニみたいだ。
『大変だねー。キョースケ、これどーする?流石にお腹いっぱいだよねー。』
コアトル君の嘴を掴んで引きずってくるアイ。
味は気になるが、さっき食べたばっかりだからな。だがせっかく倒したのでしっかり解体して素材や肉は持ち帰る事に。
今回はナイフもすんなり通ったので解体は楽だった。モノ子は剣の姿で不機嫌そうだったけど。
「あ、今のは エアロコアトルスじゃ。
風魔法も使いこなしてこの広い部屋を飛び回るんじゃが…。相性が悪かったの。」
という訳で第二の間もアイが難なくクリアー。
残るは後1体とボス部屋だけって感じだ。
本当はもっと色んな竜やドラゴンと戦えると思っていたが、案外すぐ終わってしまうな。寂しい。
「それじゃあ張り切って第三の間案内してもらえるか?」
真ん中の部屋にたどり着き次の部屋に行こうとするが、よく見ると真ん中の部屋の魔法陣が消えている。
おかしい、まだ第三の間のドラゴンに会ってないぞ。
「まさか他の冒険者が入ってきて倒したのか…?」
順番通りに倒していく試練のようなダンジョンなのに横入りは流石にマナー違反すぎる。
マリィに状況を確認しようとするが、当の本人は目を逸らし脂汗をかいている。
「マリィ、トラブルでもあったのか?」
「あー、そのー。…言っても怒らんか?」
『場合によるよー。』
拳を打ち合わせで威嚇するアイ。ほんとそう言うのどこで覚えてくるんだこの子。
「うう…。実は…まだ第三の間が完成してないんじゃあ!!!
第一のブランホーンレクスはめちゃくちゃ強くしたし、第二のエアロコアトルスはずっと飛んどる意地悪な奴にしたから攻略されるまで時間が稼げるとおもったんじゃー!!!」
泣きべそをかきながら叫ぶマリィ。
そもそもこの竜神殿 エクスティン、本来は5階層からなる竜系魔物のボスラッシュのような構造にするつもりだったらしい。
だが、出来てまだまもないので全然ダンジョンが成長しておらず、その上竜系の魔物は1匹用意するだけでもとてつもないリソースを使うのだとか。
「仕方ないじゃろ!!こんなに早く攻略されると思っとらんかったんじゃから!!
大体なんじゃお主ら!!お主らが倒した魔物はだんじょんの加護もあってLv120相当の強さなんじゃぞ!この世界のLv上限は99なんじゃからいくらなんでもおかしいじゃろ!!」
ごめんな、少なくとも俺150相当なんだ。
「経営力不足をこっちのせいにされても困る。」
モノ子が結構辛辣な言葉で刺しに行く。
マリィもぐぬぬぅとぐうの音もでないようだ。
「まあとりあえずボスにご挨拶してボコボコにした後素材持って帰るか……。なんかこの調子だと攻略報酬的なアイテムも用意出来ませんでしたー!!とか言われそうだしな。」
ギクギクギクッと効果音が聞こえてきそうなくらい動揺するマリィ。いやもうちょっと取り繕えよ。
しかしドラゴンといっぱい会えると思ったのに今の所俺が戦えたのはブランホーンレクスだけか……。もっとしっかりあいつとの戦いを楽しめば良かったなぁ……。
「あ、下に行く階段もだみーじゃ。
この下はまだはりぼてじゃからの。この魔法陣に乗ってわーぷするのじゃ。」
やっぱ来る時期間違えたとしか思えんな……。
俺は肩を落としながらアイとモノ子に手を引かれて4人で魔法陣の中に入っていった。
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視界が開ける。ワープが完了したようだ。
驚いたのは目の前に広がるとても巨大な神殿。
「むふふ、驚いたかの。これが竜神殿の本当の姿じゃ。」
『すごいねー!!でもこっちにリソース注ぎすぎたんじゃないのー?』
「ここを後回しにしたらもっと上の階層で色々出せたはず。」
グサグサグサグサと図星の槍がマリィに突き刺さる。みるからに瀕死になってるじゃねぇか。
「す…好き勝手言ってくれおって……。じゃがこの竜神殿の主の姿を見たら驚きでそんな事も言えんはずじゃ!!
では我はちょっと準備があるのでちょっとしたら来て欲しいのじゃ。」
すたたたたと神殿の中に1人で入っていくマリィ。
何となく察しはついく。
モノ子の方を見ると、目を瞑ってため息を吐いている。
わかる、乗ってあげるべきなんだろうけど、どうリアクション取るべきか困るよね。
『もういいかなー!!?ほら行こーキョースケ!モノ子!』
対照的にワクワクと言った感じのアイに腕を引かれて、俺達3人は神殿の中に入っていった。
「…………。」
最初にこのダンジョンに入った時と同じように、どこか神聖な雰囲気を漂わせる少女。
初見なら息を飲む所だが、正直なんというかもうちょっとポンなのじゃロリにしか見えない。
「改めて、よく参ったの。京介、アイ、モノ子よ。
お主たちには少々しょっくかもしれんが……。
我はこの竜神殿 エクスティンのなびげぇたぁ……ではなく、主 次元の竜姫 アノマリスである!!」
「な、なんだってー。」
「知ってた。」
『おおー!!すごーい!!』
「そこの2人!!!もっとちゃんとりあくしょんせんか!!!アイを見習ったらどうじゃ!!」
いやだって経営者の苦労みたいなのゴリゴリ語ってたし、今更繕ってもリアクションとるの無理でしょ。
でもうん、やっぱりアイを見習ってリアクション取るべきだったか。
「すっげぇ!!!」「すごーい。」
「遅いわ馬鹿たれ共!!」
あまりに間の抜けた感じになってしまったので、マリィの希望で仕切り直すこととなった。
というか俺とモノ子は喋るなって言われた。酷すぎる。
「ていく2じゃ!!
改めてよく来たの、京介、アイ、モノ子
お主たちには少々しょっくかもしれんが……。
我はこの竜神殿 エクスティンのなびげぇたぁ……ではなく、主 次元の竜姫 アノマリスである!!」
『おおー!!すごーい!!』
満足気なマリィと2回目にも関わらずしっかり驚いてあげるアイ。
隣でモノ子が心底面倒くさそうな顔をしているが、もはや何も言うまい。
「それで、マリィは俺達と戦うのか?
生ぬるいって言うかもしれないが、正直同じ釜の飯を食った奴と命のやり取りはしたくないぞ。」
俺の言葉にふんっと鼻を鳴らすマリィ。
向こうはやる気みたいだ。だがもうマリィを手にかける事なんて俺には出来ないしする気もない。
「……モノ子、悪いがバッグ預かって部屋の隅に居てくれ。素手でやる。
マリィ、やるなら殺し合いじゃなく腕試しだ。」
モノ子、カオスヘイローを使いこなせれば問題無いんだろうが、今の俺ではあの斬れ味を完璧には使いこなせない。マリィを殺してしまう可能性を考えると、今はカオスヘイローを使えない。
それがわかってか、モノ子も頷きバッグを受け取って離れる。
次にアイに耳打ちする。『おおー。』と言ったあとしっかり頷いてくれたので大丈夫そうだ。
「……3対1でくれば良いものを。しかも片腕とは言え先程の戦いを見るにお主剣士であろう。
我はこの竜神殿の主、みくびるでないのじゃ。」
「まあそういうなって、こう見えて魔法剣士なん」
ドゴーンッ!!と俺の真横に雷が落ちる。
流石にゾッとした。わざと外したんだろうが当てられてたら結構やばかったかもしれん。
「【サンダーボルト】
我の魔法は雷の魔法じゃ、そこまで言うなら相手してやろう。くるがよい、冒険者よ。」
雷魔法、少なくとも俺が見た魔法の本には載ってなかった。レア魔法ってやつか……?
「……ビビらせてくれるじゃんか。
ひとつ言っとくぞマリィ!!俺はドラゴンの特徴が全然ねぇドラゴンの擬人化は絶対認めねぇからなぁ!!!」
「なんの話しじゃ!!」
巫女服きただけのロリがドラゴンを名乗るなど俺は許さん!!
風の力で素早く動けるようになる風魔法【ソニックダッシュ】を使い一気に距離をつめる。
後の事も考えると魔力の無駄使いは出来ない。
火の魔法でぶん殴って一撃で仕留める!
「走れ雷よ【チェインサンダー】!!」
マリィは多方向へと雷を走らせ、俺の逃げ道を塞いできた。威力は先程より抑え目のようだが、まだ下手に食らう訳にはいかない。
俺は地面に手を付き地属性の魔法 【ロックストライク】で地面を盛り上げて雷を防いだ。
「はっは!!今までは何となくで使ってたが名前と効果が分かると魔法ってのは使いやすくて便利だな!!」
そのまま盛り上げた地面をマリィの方に飛ばす。
先程雷を完全に防げた所をみるに地魔法は雷魔法に有利!!
「ふんっ!甘いわ!!」
マリィの蹴りが飛ばした地面を軽く砕く。
さすが竜姫なんて名乗るだけの事はあるようだ。
身体能力は強化魔法を使った俺と同等、下手したらそれ以上か。
これはアランみたいにはいかないな……。
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戦闘が始まって恐らく10分程。
以前までなら【オーバードライブ】の時間制限で血反吐を吐いてぶっ倒れる頃だ。
だが今は二人と交わした危険な魔法は使わないという約束がある。使える手札で上手くやるしかない。
「はぁ……はぁ……ふぅ、おいおい次元の竜姫さんよ、魔法のキレがわるくなってきたんじゃないか?
まだこっちは1発も当たってないぜ。」
「ふん、そういうお主は随分息が上がっておるようじゃ。なんなら食事休憩でも用意しようかの?」
そうしてくれた方が有難いな。
今は互いに決定打がない状況。高威力広範囲の魔法は発動に時間を要するからマリィは使ってこないが、その分小回りの効く魔法で俺の接近を許さない。
ただ、これで意識は完全に俺に向いてる。
今なら行ける。
「【ロックストライク】!!」
わざと声に出して魔法を使う。今度は俺の周りにではなく、俺とマリィの横を一直線に、できるだけ高く。
「なんのつもりじゃ……?っは!?」
マリィが何かに気づいたように振り返る。危なかった、もう数秒気づくのが早かったら作戦失敗だったかも。
壁から高速で突撃してくるアイ。壁には俺がロックストライクを使うのと同時に作っておいた風魔法のジャンプ台。そこから加速したアイの必殺パンチだ。
『合体ひっさーつ!!【ソニックパーンチ】!!』
「ぐえっ!?」
パンチと言いながら勢いがつきすぎてタックルになっている。しかも弾かれたマリィがそのまま俺に衝突し、ビリヤードみたいになった。
避けられた時用に反対側にいたのが仇になった!!
「ぐはっ!?!?」
吹き飛ばされて壁際まで転がる。ロックストライクの岩が消え、地面で倒れてる俺達3人がモノ子の視界にはいる。
「……真面目にやったら?」
いやモノ子さんや、大真面目なんすよこっちは。




