冒険の書 X8
「…あった。勇者に関する資料。」
早速ギルドの資料室に通して貰った俺達は目的の本を探す。もしかしたら何か使える情報があるかもしれない。手に取ったのは【勇者伝記 簡易総集編】。結構分厚い本だ。早速読んでみるか。
「………………。」
「おお、この本凄い。貴族の女性と召使いの男の身分違いの恋の小説。」
『魔物図鑑あるよー!美味しー魔物載ってるかなー。』
ここ資料室だろ…?なんでそんな趣味全開の本があるんだよ。魔物図鑑はきになるな。
「おお…。ちゃんと濡場もある…。アイ、すごいよ。」
『わー…ちゃんと挿絵まであるね。おー…。』
「…………。」
「…間男のアンドレアル、許すまじ。」
『ねえモノ子ー。なんかアンドレアルと召使いの男の人いい感じだよー?』
「だー!!なんつーもん読んでんだ!!
ほらその本は元の所に戻してきなさい!!」
身分違いの恋の本じゃなかったのかよ。なんで主人公っぽい貴族の女性置いてきぼりなんだよ。一周まわってちょっと気になるわ。
ブーブー文句を言う二人を他所に勇者伝記を読む。
片腕だから読みにくいが、モノ子がこっちに来て左側を持ってくれた。アイは改めて魔物図鑑を読んでいるようだ。
「ありがと、……最初は初代勇者の旅の話みたいな感じか。」
ペラペラと読み進めていくが内容は普通の冒険小説と言った感じ。だが、初代勇者の部分には【勇者の制約】について書かれておらず、しばらく読み進めた後に後年の勇者の話で唐突に出てきた。
「……?なんか違和感あるけど、まあ制約に関しては俺達が知ってる以上の事は書いてないな。…というよりなんか全体的に抽象的じゃないか?」
「…ほとんど創作なのかも。一緒に旅出来ないから口伝とかの。」
その説はかなりありそうだ。俺の旅に関しても内容を知っているのは俺と途中からモノ子だけだろうし。
「…異界から来た勇者は魔王をたおして手に入れた帰還の魔法で元の世界に帰っていきました、か。」
他の資料も探すが、どれも同じような内容だ。帰還の魔法は魔王が、という記述ばかりでその詳細すら書かれていない。
逆に勇者召喚の魔法、というのは1冊にだけ書かれていた。何でも莫大な魔力と複数人での長時間の詠唱で呼び出せるとか。
でもこちらもなんというかざっくりした書き方で詳細な説明にはなっていなかった。
「当てが外れたな。これならアイの読んでる魔物図鑑読んどくべきだったか。」
「……京介、京介は…。うんうん、なんでもない。」
少し寂しそうな顔をするモノ子。どうかしたのだろうか。
『キョウスケ!モノ子!昨日食べたお肉だよー!!』
アイが開いたページにはでかい二本角の牛みたいな魔物が載っていた。昨日の夕飯のシチューの魔物かな。でもお肉呼ばわりはどうかと思う。
「おお、やっぱり前に戦った魔物だ。女将さんの調理が上手かったから美味しかったけど、俺は持て余しちゃったな。
美味しい調理の仕方後で聞いとくか。」
その後も3人で魔物図鑑を読んで勉強したり魔法についての本を読んだりした。
俺の使う魔法の大半は基礎属性魔法に分類されていたが、ちょっとアレンジが効きすぎて載っていないオリジナルの魔法もいくつかあった。
あとアランが使っていた強化魔法は無属性魔法に分類されるらしい。
これらは魔法の適正さえあれば大抵は使えるようになるとか。今後練習しておこう。
他にも気になる事はあるが、久しぶりの読書で疲れてしまったので今日はここまでにする事にした。
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「キョウスケ殿、こちらは情報提供料として支払わせていただく500万ギルです。どうぞお受け取り下さい。」
「あー…。ありがとうございます…。なあモノ子…こんなに受け取って大丈夫かな…?」
魔王に関しての情報提供の対価としてお金を要求していたが、金額を聞かれて「えーっと…500万くらい…?」と思わず答えてしまったらそのままギルドマスターに用意されてしまった。
向こうにいた頃はまだ高校生だった身からするととんでもない金額だぞ。バイト何ヶ月分だ?
「…腕1本の対価としたら少ないくらい。黙って受け取るべきだと思う。」
モノ子の方がよっぽど肝が座ってらっしゃる。ただまあこれでしばらくは生活に困らないだろう。
どこかに定住するつもりは今の所ないが、しばらく家を借りるくらいならこれだけあれば余裕でできそうだ。
「っとそうだ。キョウスケ殿はギルドの登録はされていらっしゃいませんでしたな。
いかがしましょう?自分で言ってはなんですが、登録しておけば何かと便利ですが。」
少し考える。情報を得るならかなり便利ではあると思うが、アイやモノ子、ついでに俺も結構イレギュラーな存在だ。
ギルドに登録する以上俺だけって訳にもいかない可能性もあるし…あと多分最上位の冒険者倒しちゃったからな。あれやこれやと面倒事の連鎖になる可能性は十分にある。
…うん、ここは日本人伝統のあれだな。
「あー…そうですね。しばらく考えさせていただきます。」
秘技、失礼にならないいい感じの対応。もう俺がはいといいえしか言えないと思うなよ。
「えー!!キョウスケ様登録しときましょうよ!!ギルドマスター!SSランクとか新設するのどうです!?2つ名は【神速の狂戦士】とかいってぇ!!?」
思わずまたアランの頭を引っぱたいてしまう。
いやでもガチでやめろ。恥ずかしいとかのレベルじゃない。
『えー、2つ名は【隻腕の聖魔剣士】がいいとおもうなー!!』
「2つ名とか要らん!!!では今日はこの辺で!!」
逃げるように2人を連れて俺はギルドを後にした。そんな2つ名で噂されたりしたら恥ずかしすぎる。
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色々ありすぎてわすれていたが、そういえば今日は買物に出ていた事を思い出す。とりあえず今日は食器や調理器具なんかを買っておこう。
有難いことに懐も潤沢だし、マジックバッグがいっぱいにならない程度に色々買いたい所だ。
『あ、ここだねー。』
雑貨屋と魔法道具屋が併設された店舗【ビー&ビー】に着く。手前が雑貨屋、奥が魔法道具屋になっているみたいだ。
「おお、いい感じの木製食器。器はでかい方がいいかな?2人も好きな器選びなー。1人2つずつくらいな。」
色んな種類の器があり、中には絵付けされてる物もある。俺は側面に炎のマークの描かれたやつにするかな。火魔法が1番得意だし。
「私はこれにする。」
モノ子が選んだのは剣のマークの器。うん、分かりやすいしぴったりだ。
『えーっと、アイはねー、あ!これにしよー!』
アイが選んだのは…骨付き肉のマークの器。こういうマークって異世界でも共通なんだ…。
「ははっ、2人にぴったりだな!じゃあサイズの違う奴を1個ずつ2種類と…。予備でもう1セットかっとくか。」
木製でも割れたりするかもだからな。とりあえず無地で1セットと、フォークやスプーンも取っていく。
「京介、これ。」
モノ子が手に持って見せてきたのは…。片側に取っ手のついた鍋。すげぇ、俺が元の世界で使ってたのと遜色ないぞ。
銘が書いてあるので確認してみると、【ダイモン】と書かれていた。あのドワーフの爺さんすげぇな。
「たしかにあると便利そうだがモノ子、欲しいのか?」
「ほしい。」
最初のおねだりにしては実用的すぎるが…。まあ本人が欲しがってるならなんの問題ないだろう。大事そうに抱える姿は見た目相応にみえる。
持ってるの鍋だけど。
あとは肉を焼くのに良さそうなフライパンなどを揃えて雑貨屋の買物は終了する。買った物はマジックバッグに入るからタルイヌさん様様だ。
『あ!キョースケ!マジックバッグ売ってるよー!』
続いて魔法道具屋。魔石が使われた商品や、魔法が永続的な魔法がかけられた特殊な物を扱う店だ。早速置かれているマジックバッグの値段を見るが……。
「一、十、百、千、万……。アイ見なかったことにしよう。今更タルイヌさんを探して返しに行く訳にはいかない。」
目玉が飛び出るかとおもった。まさか今回受け取ったギルの大半が吹き飛ぶレベルの高額品とは…。タルイヌさんが使ってた店が入るバッグなんて幾らするんだ。
「…へー、魔石でお湯を沸かせる焼かんか。ってほぼ電気ケトルじゃねぇか。」
他にはコンロみたいなのとか懐中電灯みたいなのとか色々ある。この間のシャワーといい恐らく魔法都市が関わってるのだろうが、文明レベル押し上げすぎだろ。
「おお…、惚れ薬。京介、飲んで。」
少し離れた棚はポーション売り場になっていた。
回復ポーション、変化ポーション、惚れ薬など色々置いてある。んなもん普通に売るなよ。
「飲まんでも二人のことは大好きだから大丈夫だ。」
『えへへ〜。』「え…あ…う…。」
嬉しそうにするアイと、顔を真っ赤にするモノ子。てれるなら仕掛けるなよ。なんとか繕って返したこっちも顔が赤くなりそうだ。
流石に魔法の道具だけあって値段もかなり高いし、今回はやめておいた。もしかしたら本場で買った方がちょっと安いかもしれないしな。
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ギルドで色々時間を使ってたこともあって時間は既に夕方。腹ぺこを訴えるアイを何故かおんぶし、右腕にはまだちょっと照れてるモノ子にくっつかれながら宿屋に帰ってくる。
「あ!おかえりなさい師匠!!こっちですこっち!!」
食堂でご飯を食べながら爽やかスマイルでこちらに笑顔を向けてくるアラン。ここの宿泊客だったんかい。昨日は気が付かなかった。
隣と前に座ってるのは彼のパーティーメンバーだろうか?こちらをジッと見ている。
「えーっと…お邪魔します?」
とりあえず席に着く。アイは待ちきれないという様子だが、すぐに給仕のお姉さんがご飯を運んで来てくれた。
「今日はオークポモドーロだよー。パンもおかわり自由だからいっぱい食べてねー!」
目の前に現れたのは昨日と同じ山盛りのパン。そしてそれに負けず劣らずの超大盛りのゴロゴロミートボールのトマトスパゲティ。
ミートソーススパゲティは大好物の一つだ。オークの肉も食った事あるが異世界でまんま豚肉が食える事に喜んだものだ。
「あー…自己紹介でもと思ったんですけど、飯の後が良さそうですね。」
お腹すいてますという俺とアイの圧に負けて少し遠慮がちになるアラン。
「「『いただきます!』」」
早速3人で手を合わせて、フォークで一斉に大盛りパスタに食らいつく。早速1口目。
やはり、この食堂の飯は美味い。
最初からしっかりとパスタに絡められたトマトっぽいソースと濃厚なチーズのような香り。そこにオークの肉で作られたミートボールから出た肉汁や脂がしっかり絡み合って食べれば食べる程食欲の湧いてくる気さえさせる。
次にパンを一つ手に取る。そのまま食べてもいいが、ここはフォークでミートボールをパンの上で潰しかぶりつく。パンに肉汁とソースがベッタリと付き美味さを1段階ひきあげている。
3人が夢中で食べればあっという間に皿は空に。
アイが元気に『おかわりー!!』と叫べば周囲の冒険者達もつられておかわりを頼み始めた…。
食べ終わる頃には、俺も、アイも、モノ子も口の周りがベッタリ真っ赤になっていた。
「悪いなアラン、それじゃお互い自己紹介しようか。」
「いえいえ、俺たちもなんか乗せられておかわりしちゃいましたし。」
アランの傍にいる2人の女性。
1人は男装的な衣装を着た知的な女性、もう1人はグルグル眼鏡をかけた三つ編みの女性だ。
「それじゃこっちから…俺は京介。一応冒険者…になるのかな?剣と魔法はそれなりに使える。」
『アイはアイだよー!特技は光の回復魔法と食べる事だよー。』
「モノ子。光と闇の魔法が使える。」
「自分はもうしたけど…まあ一応しとくか。
長いからアランです!師匠の前ではとてもじゃないが得意とは言えませんが剣と火魔法と強化魔法が使えます!」
「…アラン様の使用人 イザベルと申します。ナイフ術と闇魔法を少々。」
「わだしはミルダと申じます。田舎の出なんでちょっど訛ってますがおぎになさらず。えっど、魔法が得意です。」
うん。うちも他所のこと全く言えないけど、なかなか濃い面子だな。使用人って事はやっぱアランは貴族とかか。というか田舎訛りとかあるんだ。
「…キョウスケ様。少々よろしいですか?」
早速イザベルさんがこちらに話しかけてくる。模擬戦や魔王の件だろうか。説得に失敗したなら、俺の責任でもあるしなんとか対応を
「失礼を承知でお願いいたします。
アイちゃんとモノ子ちゃんの頭を撫でさせていただいてもよろしいでしょうか?」
一瞬聞き間違いかと思いアランに目配せするが、アランは苦笑いをして俺に耳打ちする。
「…イザベル、もの凄い子供好きなんですよ。ご飯食べてる間もチラチラ2人を見てたんで二人が良いなら撫でさせて上げてください。」
…警戒して損した。
その後、二人がもうやめろー!と言うまで撫で回されてた。知的な表情は一瞬で崩れてめっちゃ幸せそうに撫でてたな…。




