藤原の怨念と歴史
景久は不敵に微笑み、
黄金の鏡の前にゆっくりと歩み寄った。
彼は自らの掌を鏡にかざすと、
そこから歴代の「賊軍」たちの断末魔を、
自慢げに語り始めた。
「五代、お前たちは我々の『筆』が動くたびに、
人生を、名誉を、命を奪われてきた。
その滑稽な歴史の裏側を教えてやろう。
これは我ら藤原が綴った、真実の脚本だ」
【「菅原道真」という鏡の封印 】
「道真はな、我らがとうに切り捨てた
『民への誠実さ』などという、
甘っちょろい理想を抱いた。
奴の存在は、
我ら藤原の腐敗を突きつける
不愉快な鏡だった。
だから『賊』として追い、
死後は『神』として閉じ込めた。
二度と現世の政治に口出しできぬよう、
神社の奥に幽閉したのだよ。
民は今も、
自分たちの味方を殺した者たち(我々)の
用意した社で、熱心に祈っておる。滑稽極まりない」
【「天正」の五代家への転嫁 】
「信長を殺したのは光秀だが、
光秀を追い詰めたのは我らだ。
奴が進めた能力主義は、
血脈の支配を脅かす毒。
本能寺で始末し、
その汚れをすべてお前の先祖
権兵衛に押し付けた。
お前の一族を『裏切り者』として
歴史に刻むことで、
我らの関与は完全に消え去った。
一族一人の命で、
我らの支配は四百年伸びたのだ」
【「幕末」の国家抵当 】
「宗一郎が暴こうとした密約は本物だ。
英国公使パークスと交わした、
日本を抵当に入れる契約。
我らは志士たちの熱狂を隠れ蓑に、
国を切り売りした。
宗一郎が五稜郭で死んだとき、
我らは新政府という名の
新しい『搾取システム』を手に入れたのだ」
【「大戦」の生贄 】
「隼人を死なせた特攻も、
私の祖父の演出だ。
敗戦後に我々が支配権を
維持するための資産隠蔽……
その時間稼ぎのために、
何万人もの若者を『英霊』という
美談に仕立てて散らせた。
五代の家系は、
いつの時代も我々の
『失態』を隠すための、
最高のゴミ捨て場だったのだよ」
「……すべて、自分たちが
『官』であり続けるための、
生贄だったのか」
無一郎の全身を、
歴代の先祖たちの慟哭が貫く。
景久の言葉は、1300年に及ぶ支配への誇りと、
民衆への底知れない蔑視に満ちていた__。




