文明という名の絶望
暗闇の奥から、衣擦れの音が響く。
黄金の鏡を背負い、
現代のスーツ姿でありながら、
平安の貴族のような
冷徹な威圧感を放つ男
――西園寺景久が姿を現した。
「来たか、五代無一郎。
……惨めな『賊軍』の末端よ。
お前は、我らがなぜこの国を愛さず、
ただ支配し、搾取し続けてきたか、
その理由を知りたくはないか?」
景久の言葉には、勝者の傲慢さではなく、
数百年かけて煮詰められた毒のような
「絶望」が混じっていた。
「祖・鎌足が夢見たのは、
法と知性が支配する
完璧な『文明国家』であった。
しかし、この島国の民はどうだ?
どれほど法を説いても、
結局は土着の情念に溺れ、
血縁という泥の中で這いずり回る。
……我ら藤原は、1300年前、
この国の『未開さ』に絶望したのだ」
景久の瞳が、
鏡の光を反射して怪しく光る。
「我らは、
この国を文明へと引き上げるために、
一族の娘を政争の具として供出し、
人間性を捨ててきた。
だが、日本という宿主は、
我らの献身を吸い取るだけで進化せぬ。
……ならば、もう救う必要はない。
この国を、
我ら一族が永遠に食いつなぎ、
最後には共に滅びるための
『家畜小屋』であればよいのだ」__。




