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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第三章 花の都

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第76話 再会

チリーに乗って、上へ上へと光の道を進んでいく。

不思議なことに、時折魔物が見えるのだが魔物はこの光の道が嫌いなようで、浄化のバズーカを撃たずともこの道を避けていく。

何の邪魔もなく進んでいくと突如、私とチリーの周りの空気だけがぐんと重くなったような圧を感じた。

押さえつけられるような圧につい身体が前かがみになってしまう。


「なに、これ……空気が、重い!」

「ルシア! 前、見て!」


チリーが叫ぶ。

遅れて前を見上げると光の道が真っ黒な闇に吸い込まれていた。

闇はぐんぐん上下左右に広がり、闇の壁となって私たちの方へ近づいてくる。

まるで私たちを追い払おうとしているかのようだ。

この光の道の先でレネが戦っていると思っていたけれどレネもいない。

光の道も途切れ、辺りが急に暗くなる。

よく見えない分厚い灰色の空間で、目の前の闇だけが圧倒的な威圧感を放っている。

闇の壁がさらに私たちに近づく。

光の道がないからかさっきより速いスピードで近づいてくる。


「回避!」


チリーが左に旋回し、距離をとる。

旋回しながらバズーカを構え、闇に打つ。

これだけ大きいなら、当たらないなんてことはない。

私が撃ったバズーカは、一瞬闇に大きな穴をあけた。だがすぐに周りの闇が穴を塞いでいく。

続いて二発目。

同じように闇に大穴を開けるも、闇は瞬時にその穴を修復してしまう。

闇が再び迫ってくる。

その時、背後からもう一度光の道が来た。

私のバズーカよりも大きな光を受けた闇の壁の動きが止まる。

ここを撃つっす! そう言われたような気がして、光の道に軌道を重ねてバズーカを撃つ。

先の二回と同じように穴が開く。


「レネ!」


すぐに闇に包まれ見えなくなってしまったが、穴の向こうにレネがいた。

咄嗟に私もチリーも声をかけたが、瞳を閉じて脱力した状態のレネはピクリとも動かなかった。

遅かった……。

私だけが、レネの中にいた闇に気がついたのに。

あまりにも遅い自分の能力開花に唇をかむ。


「ルシア、もう一回! レネ助けよう」

「うん、また真正面にお願い!」


チリーが再び旋回して、さっきレネがいた場所の真正面に飛んでいく。

バズーカに力を込めながら、狙いを定めた。

3.2.1.心の中でカウントを数え、引き金をひく。

自分の力をバズーカに絶えず流して、引き金はずっとひいたまま。

穴がふさがらないよう、穴が広がるよう。

自分が撃っている光の奥でレネが眠っている。

起きろ、起きろ、起きろ!

そう願って光を打ち出し続けても、光の奥にいるレネは眠り続けたまま。

背後からオルビーの光の道がやってくる。

闇が消えることはないが、光の道が穴をふさがるのを止めてくれている。


「チリー! 今のうちにレネを連れ出そう!」

「掴まれ!」


チリーが光の道を猛スピードで突進する。

闇の中に入ったその瞬間、ドクン。レネの体が動いた。

レネの目が開いた。

やった、レネ! と声をかける間もなく、それがレネ以外であることが分かって、声が出なくなる。

闇の中が荒れ始める。まるで嵐の前兆のようにどこからか風が吹き、渦を巻いていく。

どんどん強くなる風。

光の道もチラチラと吹き消されていく。

このままでは私たちも吹き飛ばされる。穴も閉じる。

どうすれば……。


不思議とやるべきことが心の中に浮かんできて、チリーの上から飛び降りる。


「ルシア―――!!」


チリーが叫んでいるのを、なぜかゆっくりと眺めながらチリーに向かってバズーカを撃った。

チリーが外に出られるように。

閉じかけていた闇に再び穴が開く。

ゆっくり、ゆっくり。まるで私たちの周りだけ時がゆっくり流れているかのように、闇が押し出す風に飛ばされ、チリーはゆっくりと私が開けた穴から外へと出て行った。


真っ暗になってどれだけの時が経ったことだろう。

いつの間にか眠っていたのか瞼が重い。

重い瞼を持ち上げる。

右も左も前も後ろも真っ暗な闇の中で、私の鎧だけがぼんやりと光っていた。

あぁ、浄化した魔石の粉が練り込んであるからだろうか。

あったかマントをしっかり纏い、歩き出す。

進むべき道が分かっているわけじゃない。

でも、何とかレネを探したくて一歩また一歩と歩を進めた。

真っ暗で何もない闇の中では、私の頭の中ばかりが忙しくなる。

あぁ、最初にレネに会った時。

私とレネは『森姫』の感想で正反対のことを言ったっけ。

私は素敵だったと言って、レネは待ってるだけはつまらないと言ったのだ。

ねぇ、レネ。

レネにはこんなところ似合わないよ。

一か所にとどまってじっとなんてしてられない。

誰一人生きて帰ってきた人はいないと言うのに、それでもレネは闇から出て行こうとしたじゃない。

闇から逃げて、冒険者に会って、どんどん強くなってさ。

レネはどこへでも冒険できる強さを持っているんだよ。

冒険はこれからだよ。風みたいにぴゅーっといろんなところへ冒険しに行こうよ。


声が出ていたのか、頭の中で考えていただけなのかはわからない。

けれど、不意に呼ばれたような気がして走り出す。


「レネ! いるの!?」


走っても走ってもレネは見えない。確かに前にレネがいるような気がするのに、出会うことができない。


「はぁっ、はぁっはぁ。もう走れない。本当、いつだって限界を超えて練習しないとこんな時に都合よく限界を越えられるなんてことはないね」


いつまでも追いつけないレネ。

きっとこのまま無理して走っても、捕まえることはできないだろう。


「走って追いつくのは無理。でもね。私、まだあきらめていないよ」


バズーカを構えて、レネの気配にむかってぶっ放す。

真っ暗な闇を裂いて浄化エネルギーが光の道を作る。

その道の先で、レネが膝をついて苦しんでいた。


「レネ!」


発見したことが嬉しくて、疲れて走れないはずの足をもつれさせながら、走っていった。


「あぁぁぁぁ!」


突然、レネが咆哮をあげた。

光の道がかき消えていくほど闇がうねり、レネの中へと入っていく。


「キタ。キタヘトベ、キタヘ……」


よろよろと立ち上がりながら、レネがうわ言のように北へと繰り返す。

だめだ、飛ばしたら絶対に間に合わない!

重いバズーカはいつしか投げ捨てていた。

走って、走って、走って。足がもつれた。

目の前の飛んでいこうと体勢を整えるレネの足を転びながら掴んだ。

レネが不思議そうに振り返る。


「離せ」

「いやだ」

「離せ」

「絶対離さない」


一人で闇を抱えて飛んでいくなんて絶対に嫌だ。

まさに飛び立とうとしている今もレネの中へと闇は入り続け、足を掴んでいるのにレネがどんどん遠ざかっていくような気がした。

掴んだ足から浄化の力をレネに流す。

お願い、レネ。戻ってきて。


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