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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第三章 花の都

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第71話 初陣

船が進むほどに魔物に遭遇する数も増えてきた。

冒険者の島はまだまだ先。どうやって辿り着けばいいのか。

ドンと何かが壁にぶつかる音がする。ダダダダ、ダンと誰かが跳躍する音がする。

みんな必死に戦ってくれている。私を闇まで連れていくために。


「ルシちゃんの相手は闇だろう? ここは俺らに任せて隠れてな」


それがルードの言い分。

確かに、私は弱い。走っても走っても、体力はそれほどついたように思えないし、剣だとか槍だとかそういう武器を持っての訓練はしたことがない。魔物と戦ったことだってない。

けれど今はこれがある。

手元にあるオルビー特製バズーカを手に取る。

全ての魔力を使い果たすわけにはいかないが、多少なら私が補充することもできる。

私も外へ出て戦った方がいいんじゃないだろうか。

魔物の数も増えてきて、ルードたちも苦戦し始めた。

行くのか、行かないのか……ドッドッドッドッと心臓の音が聞こえる。

ルシア、勇気を出して。これは私の戦いなのよ。

ドアノブに手をかける。

そこまでしたのに、最後の一歩が出ない。

怖い、でも行かなきゃ。怖い、ドアを開けるだけよ。

行かなきゃ、助けなきゃ、でも、怖い、怖い、怖い!

ドアの前で逡巡していると、突然ドアに何かが体当たりしてきた。


「きゃぁ!」


ドアが開くと同時に、私も後ろに倒れる。

イタタタと身をおこすと、自分の足元に血だらけの男が倒れていた。

声も出ないほど驚いて、凝視することしかできない。

ズズッ、ズズッ。血だらけの男が外へ外へと引きずられていく。

よく見れば、男の足ににゅるりと魔物の足が絡みついていた。


「ゲホッゴボッ!」


死んでいると思った男が血を吐き出す。

生きてる! そう思った時にはバズーカと男が手に持っていた剣を持って走り出ていた。

男よりも先に外へ出て、男の足を掴む長いうにょうにょとした魔物の足に剣を差す。

男と魔物を切り離そうとしてのことだったけれど、私の力で切り離すのは無理だったようで、突き刺した剣は魔物の足に刺さったまま。


「あっ!」


魔物が暴れ、私の手から剣が離れる。脚を掴まれた男もぐんと引きずられ、怒った魔物が私の方にも足をのばす。


「ルシちゃん!? 早く、中へ、早く!」


ルードの声が聞こえる。中へ逃げなきゃ、逃げなきゃと思うのに体はちっともいうことを聞いてくれない。

怖い、怖い、怖い。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」


半ばパニックになりながら、魔物に向かってバズーカを撃った。


「わ、わわわぁぁぁぁ」


この時私は本当にパニックだったんだと思う。

まっすぐ足を伸ばしてきた魔物のみならず、あっちこっちへとバズーカを撃ちまくった。


「ルシちゃん!」


ルードの声がどこか遠くで聞こえる。

早く、倒さなきゃ。早く。

そんなことばかりが頭を占めていたら、今度はがしっと頭を引き寄せられた。

硬い鎧の感触、何も見えない。

はっはという自分の荒い息が聞こえる。


「ルシちゃん、もう大丈夫だ。もう魔物は浄化したよ。これ以上はルシちゃんの力の無駄遣いだ」


遅れてルードの声が落ちてきた。

浄化した? じゃああの人は……。

ゆっくり頭をルードから引きはがして、周りを見る。

静まり返った船の上。

右舷に一匹、左舷に一匹、甲板にもいた魔物は皆大人しく海へと戻っている。

そして後ろを振り向けば、相変わらず血まみれで男が一人倒れている。

周囲の戦いは終わっていた。

それに気がつかないほど、取り乱していた。


「ルシちゃん、ごめんな。俺が間違ってた。ルシちゃんの戦いは闇だからそれまで温存してほしかったけど、違うな。これから今よりもっと強い魔物が出てくる。慣れよう。闇に近づくならいやおうなしに戦いになる。ちょっときつい、それに怖い思いもするだろう。けど、頑張れるか?」

「は、い……」


叫びすぎたのか、まだ心臓がバクバクと音を立てているからなのか、声が上手くでない。

これからもっと強い魔物がでる。そう聞いて正直怖かった。

足が震えた。

でも、それでもやる。やるしかない。

だって、魔物を越えて行かねばレネは助けられないのだから。


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