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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第三章 花の都

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第65話 約束

瘴気測定器にシュルシュルと光が入っていく。私が力を込めるとまたぐんと光がたまっていった。


「手だけが放出器官というわけではなさそうですね」

「しかし、放出量は手に密着させた方が多いですね」


実験班の面々が、測定器を持ってうろうろする。

今使う物だからと一番に作ってもらった私の浄化量を測る魔導具だ。

データがあればあるだけ、後に作る闇討伐用の魔導具を作りやすくなるため、最初は実験班で使う機械を優先的に作ってくれている。

今、実験班は私の浄化の力がどこから放出されているか実験しているというわけだ。


「多分ですけど、私から離れて測定するとその機械に放出された一部の力しか入っていかないからだと思います」


測定器に入っていく光は一部。だから、正しく測定できていないのだろうと思ってそう言うと、実験班の一人がすぐさま浄化が視認できるような魔導具を作ってくれと設計班に頼みに行った。


そんな風に一日、また一日と魔石を浄化してみたり、様々な方法で浄化を測定したりするうちにわかってきたことがあった。

一つ、浄化量は使えば使うほど増える。

数日前は魔石二つを浄化すると、疲れ果ててしまったけれど、今は同じ大きさの魔石三つくらいは普通に浄化することができる。

だから、いま実験班は毎日浄化を使って浄化量をアップさせようとするのはもちろんのこと、より効果的な訓練方法はないかとあれこれ仮説を立てては実験をしている。

そしてわかったことはもう一つ。浄化した魔石は繰り返し使え、エネルギーを再充填した魔石は、以前の黒い魔石の時よりわずかながらエネルギー値が高かった。

これには、オルビーはじめ制作班とレストルが歓喜した。

今までの高性能な魔導具に付随するエネルギー問題が解決……とまでは行かなくとも、前進したからだ。

すごい魔導具はすごいエネルギーが必要。そして、魔石の数はそれほど多くない。

だから、すごい魔導具を使っても、魔石の方が枯渇して何度か使ったらすぐに使えなくなってしまう。

実はサイリャがペイダル要請の魔導武器を作れない口実として言っていたのもこれらしい。

魔導武器は多大なエネルギーを必要とするので、それに必要な量の魔石がありませんと、そういう言い訳で魔導武器作成を断っていたらしい。


「ルシアちゃーん! 休憩だよー」


今日もルエリアがお昼を持ってきてくれる。以前は忙しそうなときは食事を置いていくだけだったけれど、私がチリーを助けた時に倒れ、さらにそのまま実験班に入ったことで、ルエリアはこうして昼時に声をかけてくれるようになった。

「また倒れちゃわないように、私が見張っとくね。どうも工房にいる影のメンバーは、食べる、寝るを軽視しがちだからー」とのことだ。

私も、ずっと一緒に仕事をしていたルエリアと話をする機会が減って寂しく思っていたので、ルエリアと一緒にお昼を食べられるのはとても嬉しかった。


「そうそう、さっき制作班にもお昼だよーって声かけてきたんだけど、なんかすんごいの出来たらしいよー」

「すんごいの?」

「うんー。設計者のオルビー君が出来上がったのを見て『すごいっす!』ってはしゃいでた」


ルエリアがオルビーの真似をして、「すごいっす!」と連発する。

簡単にその様子が思い浮かんでしまって、ふふっと口を緩ませた。


「ペイダルの様子はどう? まだ、レネはペイダルにいる?」

「うん。レネ君、また王都近郊の魔獣倒したってさ。だから、大丈夫。まだ出発してないよ!」

「よかった」


私たち影は、猛スピードで準備を進めている。

その理由の一つは、二国間協力の名のもとにサイリャがペイダルに連れていかれたことを知ったから。

サイリャの父であるルードにメレント王が話したそうだ。

サイリャ一人かペイダルのメレント侵攻か。メレントの王としてメレントを戦場にするわけにはいかなかったそうだ。

なので、サイリャ奪還の為にも闇は一刻も早く無くさなければならない。


そしてもう一つの理由は、もっと笑えない。

無理やりサイリャに魔導武器を作らせたとしたら、もうメレントもペイダルにいる英雄も誰もペイダル王には歯向かえないからだ。

実際に作っていないから予想でしかないが、レストルとサイリャは途中まで作ろうとして、そのあまりの危険性に作るのを設計図も何もかも燃やして作るのをやめたという。

魔導武器はそれほど強力な武器になるらしい。

だから魔導武器誕生前に闇を叩きたい。

逆にサイリャが頑として魔導武器を作らなかったとしたら、サイリャの命は危ないし、ペイダルの期待する協力ができなかったメレントも……危ない。

そうならないようにするためには、やはり早く闇を叩く。それしかないと思う。

そんなことを考えていたら、ルエリアがおもむろに話し始めた。


「ルシアちゃん、あのさー。ごめんねぇ。前、英雄に早く闇討伐行ってほしいなんて言っちゃって」

「え?」

「早く闇を倒したいって、それは今もそうなんだけどさー。見ず知らずのレネ君が行くと思ってた時は、早く討伐してくれないかなーって思ってたんだけど、ルシアちゃんが行くってなったら、すっごい嫌だった。行かないでって思っちゃったんだ」


「あの時のルシアちゃんの気持ちがやっとわかった」とルエリアが言う。

私もずっとレネに行くなって思ってた。一人で行かないでって。

だから、ルエリアの気持ちはわかる。

知り合いだったら、友達だったら……心配だよね。


「リアちゃん、ありがとう。全部、全部終わったらお祝いパーティしようね」

「うん」

「美味しいものいっぱい食べてさ」

「うん」

「歌も歌って、踊ろう」

「ははっ。ルシアちゃん踊れるの? 運動苦手でしょー?」

「いいの、こういう時の踊りは肩を組んで笑ってたら何でもオーケーだから、いいの」


ルエリアと私は笑いあって、ご飯を食べ終えた。

それからまた実験をしたり、浄化量を増やすための訓練をしてみたり、魔石の浄化をしたり。そして夜になったら、再びやってきたルエリアとちょっと話して、ルードの家に帰る。

そしてまた朝が来て、工房に行って、実験やトレーニングをする。昼はルエリアとなんてことないことを話して大笑いしたり、美味しいお菓子を持ち込んで、二人で至福の時を過ごしたりした。

そうして一日が経ち、二日が経ち、一週間経ち、二週間、三週間、一か月、二か月とどんどん月日は過ぎて行って、チリーを助けてから四か月が経った。

私の浄化量もずいぶん増えた。今や対象に触れなくても、少しの距離なら浄化の光を飛ばせるようになっていた。

魔導具を作ってくれた影のメンバーは、今や全員が私の浄化の光が見えるゴーグルをかけて仕事をしているし、オルビーは私の浄化の力を貯めて、圧縮して放てるバズーカという魔導具を作り上げた。放出部分の形がバズーカという楽器に似ているから、この名前だそうだ。

私個人的には、浄化の力をためるタンクから放出部分の筒状の部分がつながっているこの魔導具は、サイリャさんが作った掃除機の方が似ているじゃないかと思ったけれど、オルビーに「かっこよくないっす」と却下されてしまった。

何度か改良して、性能が良くなったバズーカは、視認できる範囲であれば闇を浄化できる優れものだ。

性能アップは時間の許す限りしていきたいが、一応は闇に対抗できる装備が出来上がった。

残る問題は、私の移動手段。

弱っちい私が魔物渦巻く海を越え、闇に近づくこと。これが一番の難関だった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

ルシアの物語も完結まで残り僅かになりました。

明日からはお昼ごろに1話投稿に変わります。

5/31日曜日が完結日です!

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