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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第一章 闇の国

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第29話 儀式前夜

儀式をすると決まったのは神殿前広場で私の髪が露わになった翌日のことだった。

それからさらに二日経った今日、私は儀式を前にジジ様と王と共に食事をとっていた。

闇晴らしの儀式は明日だ。


三人だけの豪勢な食事会。

今回はカチリともカトラリーの音が鳴ることはなく、終始和やかに食事が進んだ。

食事会終盤、デザートと飲み物を配膳させると給仕の人さえも部屋の外に出し、室内は三人きりになった。

全ての人が部屋から遠ざかり、静まり返った部屋の中で、王が頭を下げる。

儀式の件は王と前神殿の長ゲイル様、現神殿の長であるジジ様しか知らなかったそうだ。


「どこから漏れたかわからない。だが、こうなった以上儀式をしないわけにはいかない」


そう言っておられた。

ジジ様は明日の儀式の打ち合わせ以外には何も言わなかった。

明日は神殿前広場に集まる民たちに私の姿を見せ、その後私は騎士に付き添われ、祈りの丘のてっぺんにある祭壇に向かう。

その後の話はない。

それはもちろん、その後の話なんて必要ないから。


食事会が終わり、部屋に戻る。

アスラや他の神官たちに囲まれながら、湯船につかり、いつも以上に念入りに肌を磨き上げられた。

「明日は頑張ってください!」と何も知らない彼女たちが、弾んだ声で激励の言葉をかけてくれる。

そのすべてに曖昧に微笑みながら、流されるまま時が過ぎる。

そして夜。

アスラも出て行ったそのあとで、そっと窓を開けた。


「チリー」

「明日、大事な日。早く寝る!」


チリーには、わざわざ私が聖女だとは話していない。

ずっと一緒にいたのでおそらくわかっていただろうけれど、闇晴らしの儀式が何なのかは知らないはずだ。

それでもいつもと違う神官たちの様子、神殿前広場で「聖女様!」と人々が熱狂していた様子を見て、チリーは明日の儀式がとても重要なものだとわかっているらしい。


「チリー、来て」


早く寝ろ! と苦言を呈するチリーを無視して、チリーを窓辺に呼ぶ。

結局チリーはぶつぶつ言いながら窓辺にやってきてくれた。


「チリー。明日は儀式があるの」

「俺様、みんなの話聞いてた。だから、知ってる」

「儀式はきっと長引くわ」

「夕飯まで、終わる?」

「いいえ、きっと無理ね」


その言葉にチリーが「お、俺様、ごはんは?」と小さくつぶやきながら、ショックを受けた。


「俺様も儀式……」

「チリーは行けない。大事な儀式だって言ったでしょ?」

「でも俺様、どこ行く」

「どこへでも。チリーが気に入ったレネの所でも、公園の仲間の所でも、私と出会う前にいた所でも」


チリーが黙り込む。

私も言うことがなくて黙り込む。


「お前、儀式終わって帰ってきたら、俺様も帰ってきていい?」


一瞬声が出なかったけれど、「もちろん」と答えた。


「わかった、ちょっと外にいる。俺様、お前気に入ってる。だから、儀式終わったらまた来る」


開けた窓からチリーが飛んで行った。

真っ白な体に真っ赤な帽子をかぶったチリーは暗闇の中で目立ったけれど、少し先まで行けば闇に飲まれてあっという間に見えなくなった。


「チリー、元気でね」


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