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名ばかり聖女の覚醒~聖女は生贄なんて聞いてません  作者: 南の月
第一章 闇の国

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第24話 露見

ミトさんたちと別れた後は、困っている人がいないかと考えながら、時計塔へ歩いていく。

バルケル様の歌を聞こうと思ったけれど、ミトさんのことを考えるとなんだか落ち着かず、時計塔を後にする。

それならジェーダの歌とも思ったが、それもなんだか気が乗らない。

結局私は、時計塔から延びる一つの大通りを歩くことにする。

時計塔からは四方向に大きな道が延びている。

一つめは神殿前広場に続く道、二つめはジェーダがいつも歌を歌っている海辺につながる道。三つめはひときわ大きな商店が立ち並び、そして最後の一つは王宮につながっている。

今日私が歩いているのは、王宮へと続く道。

先日王族と初めて会ったから、なんとなくだ。

実はこちら方面には歩いたことはない。初めての道に、チリーが首をかしげる。


「いつもの道、違う。お前、今日どこ行く?」

「チリー、今日は王宮の門を見に行こうよ」


光祭りの後の食事会でアーロン王子が言っていたのだ。

宮殿の前にはとても大きな門があると。

光苔ヒカリゴケで覆われたその門は、闇時前に作られた門らしいのだが、あまりに大きくて「初めて見た人はその存在に圧倒するよ」と王子は言っていた。

王子の言葉を思い出しながら、道を歩く。

すでに道の奥には大きな壁のようなものが見える。きっとあれが王子の言っていた門だろう。

まだまだ王宮は遠いはずだが、ここからでもとても大きいのが分かる。


「門、アレ! 俺様、あそこ行ったことある。門の手前、大きな公園ある。水鳥、俺様の仲間いる。俺様案内する!」


ミトさんの所では、静かにしていたチリーが嬉しそうに周りをパタパタ飛びながら話し始めた。

公園。そういえば、アーロン王子も話していたな。

チリーの言葉に食事会の時の話を思い出す。

水鳥の話はしていなかったが、公園にはバラという花が咲いているらしい。

バラは闇時前からあるとても美しい花らしく、アーロン王子はその花がとても好きなんだそうだ。


「公園、こっち、こっち!」


チリーの後に続いて、公園の入り口をまたぐ。

大きな公園らしく、今まで歩いてきた通りや広場と違い、ランタンの灯りや壁に張り付いて光る光苔ヒカリゴケのぼんやりとした光が見えない。

所々に生える蓮灯ハスアカリの灯りだけだ。

ランタンを少し掲げて、公園内を歩く。

右側からサラサラという水の流れる音が聞こえるので、ランタンを向ける。

どうやら水場のようだ。近寄って、水場の中を覗き込む。

公園に来られて上機嫌なのかチリーがチリリ、チリリと鳴いていると、チリーの鳴き声につられてかたくさんの水鳥が寄ってきた。


「俺様の仲間!」


チリーが胸を張る。

チリリ、チリリというチリーの鳴き声に合わせて水鳥たちが優雅に泳ぐ。

ふふふ、鳥たちの踊りを見ているよう。

このままずっと見ていられると思ったけれど時間は限られている。

たくさんの水鳥たちに別れを告げて、さらに歩く。


「あそこ! 倒れている人いる!」


突然チリーが叫んで、飛んでいく。

見失わないよう慌ててチリーを追いかける。

少し先に横たわる人が見えたので、躊躇わず「大丈夫ですかー」と声をかけた。

最初は「大丈夫ですか?」と声をかけることにも勇気が必要で、とても時間がかかっていたけれど、最近はもう躊躇いはない。

近づくと同時に顔を覗き込んだ。

眼鏡をかけた男の子だ。

そのままもう一度大丈夫かと声をかける。

覗き込んだ先で、横たわっていた眼鏡の男の子は目を見開いた。


「大丈夫。少し寝てただけだから」


男の子が小さな声でつぶやく。

そっか。大丈夫かと安心して別れようとすると、再び男の子が口を開いた。


「あなたは、なんでここに?」

「ん? 散歩かな。最近ここのバラが綺麗だって聞いて見に来たの」

「お仕事とか、いいの?」


仕事か……。私の仕事は祈ること。でもこの祈りに意味はない。

だから、私の仕事は十五歳になったらやるという儀式だけなんだろうな。


「仕事はまだないんだ」


嘘ではないその言葉に男の子は少し黙り込む。

けれど、私を十一歳以下だと思ってくれたのか、「バラはこっち」と公園案内をしてくれた。

蓮灯ハスアカリに照らされたバラはとても綺麗だった。

その後公園を後にして見た門も大きくて圧倒された。

それでも、私が帰りついたときに思い出すのはバラを案内してくれた男の子の言葉。


蓮灯ハスアカリの灯りでは、この美しいバラの本当の色はわからないんだ。早く聖女様が闇を晴らしてくれたらいいのにね」


その言葉に私は「そうね」と曖昧の言葉しか返すことができなかった。






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