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第84話:卑劣な作戦

 


 椅子にくくりつけられ、身動きの取れない場所に幼い凪はいた。

 仮面を被った男達に見張られ、逃げる事が出来ない。

 動くとロープが食い込み、痛くて凪は泣いていた。



「助けを呼べ」



 受話器を耳に当てられ、凪は怯えながら助けを呼んだ。



「たすけて、たすけて!お兄ちゃん!!こわいよ……!!」


(ダメ!助けを呼んじゃダメ!!呼んだらお兄ちゃんが……っ。あれ?どうなったんだっけ?)



 そこで、凪は現実に戻った。

 我に返ってみると、いつの間にか柔道部が自分の上に跨がり、醜悪な笑みを浮かべている姿がそこにあった。



(……そうだ。ここは体育倉庫。あたしは彼等に拐われたんだった)



 それを思い出して再び柔道部を睨み付けた。



「チッ。脅しぐらいじゃダメか」



 忌々しげに舌打ちをし、ナイフの柄で凪の左の額を殴った。



「…っ!!」



 額が切れてそこから血が流れるのを感じながら凪は顔を歪めた。



「何故怯えない!?何故叫ばない!?」



 柔道部の焦るような声が雷のように室内に響き渡る。

 だが、凪は声を出さなかった。



(叫んだ所で彼等を喜ばせるだけだから)



 連絡もなしに自分が消えれば、紫藤がGPSで捜してくれるはずだ。

 だが、あれから時間がかなり経過しているのに助けが来ないという事は、凪の携帯電話に電源が入ってないか圏外になっているかだ。

 前者は有り得ない。常に電源は入れておくように帯刀に言われていたからだ。

 となると、可能性は後者。

 敷地の広いこの学園で電波が弱いのは裏門付近か森の中。

 体育倉庫と化しているが、ここの物品はどれも古い。

 先程のハードルも錆び付いていた。

 ということは、恐らくここはチャペルの裏にある寄付する物品を集めた修繕物倉庫だと凪は判断していた。

 ならば叫んでも誰も来ない。

 凪に出来る事は、仲間が見付けてくれる事を祈るだけだ。

 そして、可能なら逃げ出す事。



「クソッ!!生意気な奴だな!

 おい、どうするよ?動画でばらまいても泣き叫ばなきゃ意味ねえぞ」


(それが目的……じゃあ余計屈するわけにはいかない)



 狼狽えるバスケ部に柔道部はマウントポジションをとったまま考え、やがて名案とばかりに笑い、ナイフで凪の胸のリボンと共にブラウスを引き裂いた。

 前ボタンが吹き飛び、それが無機質な音を立て床に散らばって凪の白い肌とピンクのレースをあしらったブラジャーが露になった。



「流石に恥ずかしい画像が公開されたら2度と学校に行こうと思えなくなるだろ?」


「なるほど!賢いな、お前」



 バスケ部は嬉々とした声を上げ、ビデオ撮影を始めた。

 流石に凪は身体を動かし、抵抗を始めた。

 だが、マウントポジションをとられていては勝てるわけがない。

 そうこうしてる間にブラジャーを捲り上げられ、誰にも見られた事のない胸まで彼等に晒され、凪は悲鳴を上げそうになった。



「スゲエ!!巨乳じゃん!!」



 バスケ部が興奮ぎみに叫んでビデオカメラを置くと、柔道部を押し退けて凪の胸を掴むように揉み始めた。



「ヒッ!ヤッ!!」



 嫌悪感に堪えきれず、ついに凪は声を上げた。

 バスケ部によって柔道部に押さえ付けられていた腕が解放された凪は、縛られたままの手でバスケ部を退かそうと背中を殴ったり頭を殴ったりしたが、バスケ部は動じずに凪の肌に舌を這わせた。

 ヌメッとした感触を胸に感じ、全身が泡立つ。



「何やってんだよ!?ビデオ係いなきゃ意味ねぇだろが!!」



 怒りだす柔道部に対して、バスケ部は逆ギレぎみに答えた。



「うっせぇんだよ!!そんなに撮りたきゃお前がやれよ!!こんなチャンス滅多にないだろうが!!」



 それを聞いて、柔道部が舌打ちした。



「チッ。巨乳好きが。しょうがねぇ。俺がやりゃあいいんだろ?」



 そう答えて、カメラに手を伸ばそうとした瞬間、それが壁の方へ吹き飛んで派手な音を立てて壊れた。



「なっ!?」



 柔道部がそう声を発した瞬間、背後から踵落としを襟足に喰らい、柔道部はそのまま崩れ落ちた。



「……帯刀先輩!」



 そこには踵落としを喰らわした男、帯刀がいた。



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