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13.叙述トリック用いよう

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 叙述トリックとはジャンルにも寄りますが、小説の「面白み」の八割以上を占めると言っても過言ではない技術です。僕の好きな伊坂幸太郎先生もよく用いる技法で、僕自身も見習おうとしているのですが、伏線の張り方が難しいのでどちらかと言うと上級者(慣れてきた方)向けかもしれません。


 さて、まず小説の面白みというのは色々あります。

 単純なファンタジー系で物語を楽しむタイプ、推理小説のように犯人探しを楽しむタイプ、ホラー展開を楽しむタイプなどが例に挙げられます。

 しかし、叙述トリックというものは上記に比べると非常にトリッキーなもので、いわゆる「読者のミスリード」を誘う書き方をする、というものです。

 例えば、最初からAという主人公は男性だと思ってたが、最後で女性だと判明した、というものは叙述トリックの基礎と言えるでしょう。このトリックは、一人称に気をつければ簡単だったりします。


 実際に叙述トリックが使われている小説を例に挙げると、あまり物語的にはオススメしたくはありませんが(決して面白くないわけではなく、全く別の理由です)、我孫子武丸先生の『殺戮にいたる病』や、本多孝好先生の『チェーン・ポイズン』などがあります。二つとも、二回以上読まないと仕掛けがよく分からないようになっていて、よく三百頁ほどの小説でこんな鮮やかなトリックを仕込めたな、と感動すら覚えた作品でした。多分、叙述トリックの基礎、応用はこのあたりにあるんじゃないかと勝手に思っています。また、アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』は叙述トリックの原点とも言われる作品です。今となってはありきたりですが、当時は驚くべきトリックだったとのこと。


 叙述トリック、と言いますが、言い換えればこれは張り巡らせた伏線を一点で全て同時に回収する、というようにも言えます。つまり、これは書き手側の技量が直に問われるようになってきます。

 そして、これは漫画やアニメでは決してできない、小説という文字だけの物語だからこそできるトリックでもあります。ある意味では、小説特有の技法でもあります。

 唯一の問題点と言えば、三人称視点で書くとかなり書きづらくなってしまうことでしょうか。叙述トリックは、一人称で書くことをオススメします。


 そして、叙述トリックを書くには、最初のうちは大変頭を使います。普通に小説を書くより難しいはずです。が、次第に楽しくなります。脳汁が分泌されるのか、おかしな話、作者自身が小説の続きが読みたい、という欲求が沸いてきます。そうなれば、嫌でも筆は進み始めます。

 ある意味では、エタりにくいジャンルと言えますが、しかし読者側に気づいてもらえなければそれはただの小説として終わります。

 そこで、読者に「これはトリックだ」と気づいてもらえるようにするには、最後にどれだけ違和感を残すか、が肝になってきます。読者側としては、最後に違和感があれば、それを解こうとまた読み返すでしょう。そうしてトリックに気づいた時、彼らはきっと身震いするはずです。

「鮮やかに騙されてしまった」という気持ちが、このジャンルの醍醐味になります。

 最後の違和感を際立たせることが、叙述トリックの要であり、前提なのです。


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