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絶対主権  作者: ユウライ
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8/10

8話《本当は孤独だった。でも・・・その風があったからこそ》

今日いっぱい書きすぎて、疲れてるから駄作かもしんない・・・

「・・・ユウライ・・・じゃないな・・・また敵か・・・」



洞窟の外から聞こえてきた気配に、シェリスは僅かに期待した。


だが、すぐに違うと分かる。


近づいてきたのは、いつも通り財宝や名誉を求めてやって来た人間だった。


シェリスはその事実に、少しだけガッカリしてしまった。


そして、その感情に自分自身が驚く。



「我が・・・一人の人間に・・・期待するとは・・・」



これまで人間など、愚かで欲深い存在としか思っていなかった。


それなのに今は、ユウライが戻ってくることを自然と待っていた。


たった二週間。


それだけの時間で、自分の中にこんな変化が生まれていることを、シェリスはまだ上手く理解できずにいた。



「何言ってるんですか?シェリスさん?」


「は・・・?」



聞き覚えのある声に、シェリスは顔を上げた。


目の前には、ユウライが立っている。


だが、おかしい。


先ほど確かに感じ取った気配は、いつもの敵と同じものだった。


ユウライではない。


そう判断したはずだった。


なのに、今そこにいるのは紛れもなくユウライだった。


シェリスは違和感を拭えず、確かめるように問いかける。



「住めって言った。後日、お主は何をした?」


「え?鶏肉を持ってきたと?」


「・・・・・・」



合っている。


あの日の出来事を知っている。


だが、それでも違和感は消えなかった。


何かがおかしい。


そう感じるには、十分だった。



「敵が来た時、追い払う時に風系のスキル使っていたな、それは使えるのか?」



シェリスは、目の前にいるユウライを確かめるように問いかけた。


これで使えたら本物。


そう考えたかったが、それでも違和感の正体は未だ分からない。



「《暴風拳》ですね?やりますので、気を付けて下さい」


「・・・・・・」



迷うことなく答えた。


そして、《暴風拳》を使おうとしている。


少なくとも、記憶だけではなくスキルまで同じらしい。



「(スキル使えたからって本当だとしても・・・直感が・・・我の直感が違うと言っている・・・)」



シェリスは悩んでいた。


同じ記憶を持ち、同じスキルまで使える。


ここまで揃っていれば、本物だと判断する材料としては十分なはずだ。


だが、同じスキルが使えるからと言って、それだけで本物だと決めてしまっていいのか。


どうしても、胸の奥に残る違和感だけが消えなかった。



「この時を待ってましたよ」



そう言った直後。


洞窟の外へ向けて放つはずだった《暴風拳》が、突然シェリスへと向けられた。


まるで、この瞬間をずっと待っていたかのように。



「!!」



ドンッ!!


凄まじい衝撃が洞窟内に響き渡る。


シェリスの身体は大きく吹き飛ばされ、地面を滑るように転がった。



「ハァ・・・ハァ・・・貴様・・・やはり、偽物だったか・・・ゴフッ」



口元から血が零れる。


それでもシェリスの視線は、目の前の“ユウライ”から離れなかった。


違和感は、間違っていなかった。


記憶も。


スキルも。


姿も。


全て同じだったとしても――。


目の前にいる存在は、ユウライではない。



「貴様・・・《移し鬼》か・・・」



《移し鬼》。


相手の姿・声・記憶・スキルを模倣する妖怪。


しかし、本人の感情や価値観までは完全に再現することができない。


だからこそ、シェリスは最初から僅かな違和感を覚えていた。



「いやぁ、珍しい人間居たから利用させてもらったよぉ?あの古龍様がこんなにズタボロなんてねぇ?」


「貴様ァ・・・!!」



シェリスは怒りを露わにする。


自分を騙したことだけではない。


ユウライの姿を利用し、その記憶やスキルまで奪ったことが許せなかった。



「これで国からの大金がガッポガッポ手に入る!!名誉もなぁ!!」



移し鬼は、完全に勝利したと思い込んでいた。


弱りきったシェリスを見下ろしながら、大声で笑う。


そして――。


倒れているシェリスへ近づくと、その身体を容赦なく思い切り蹴り飛ばした。


すでに大きな傷を負っている身体へ、さらに衝撃が加わる。


それでもシェリスは、憎悪を込めた目で移し鬼を睨み続けていた。



「最後に言い残す言葉はそれだけか、クソ野郎」


「は?グハッ!?」


「!!」



突如として現れたもう一人のユウライが、移し鬼の腹へ拳を叩き込んだ。


あまりに突然の一撃に、移し鬼の身体が大きく浮き上がる。


シェリスは、その姿を見た瞬間――何故か安心していた。


理由など、もう分かりきっていた。


目の前に現れたその男こそ、本物。


自分が待っていた、本当のユウライだったからだ。



「本物の暴風拳を見せてやるよ・・・」


「は?」


「こうやるんだよッ!!」



次の瞬間、ユウライの拳から解き放たれた暴風が、移し鬼を真正面から飲み込んだ。


バガァァンッ!!


轟音と共に、暴風は洞窟内を突き抜ける。


それは先ほど移し鬼が放った《暴風拳》とは、似て非なるものだった。


ただ真似ただけの風ではない。


守るために振るわれ、敵だけを穿つ――本物だけが持つ一撃だった。



「大丈夫ですか!シェリスさん!今から治癒魔法かけますね!!」



ユウライは傷ついたシェリスの元へ駆け寄り、すぐさま治癒魔法を使おうとする。


だが――。



「もう大丈夫です」


「え?」



シェリスは傷ついた身体のまま、ゆっくりと立ち上がった。


先ほどまで移し鬼に騙され、重傷を負わされていたというのに、その瞳にはもう迷いがなかった。



「私は貴方の従者を選びます」


「従者ってーー」



パァァァァァ!!


突然、シェリスの身体を眩い光が包み込む。


洞窟の中を照らすほどの光に、ユウライは思わず目を細めた。



「急に何をーー」



やがて光が収まっていく。



「これからは貴方様に仕えさせて頂きます。ユウライ様」



そこに立っていたシェリスの姿は、それまでとは大きく変わっていた。


シェリスの姿は、人の姿を取っていても、どこか人ならざるものを感じさせた。


艶のある黒髪は肩口で揺れ、その頭には大きく湾曲した黒い角が二本。


耳は長く尖り、赤い瞳は静かに相手を見据えている。


身に纏っているのは、黒と白を基調としたメイド服。


上品に整えられた衣装とは裏腹に、その立ち姿からは古龍らしい威厳が滲んでいた。


腰には金色の懐中時計が下げられ、背後には黒い鱗に覆われた太い尾が覗いている。


一見すれば、美しいメイド。


しかし、その正体は紛れもなく――古龍シェリス


かつて人間を嫌い、誰一人として信用しなかった古龍が。


この瞬間、自らの意思で一人の人間を主として選んだ。



「これから、よろしくお願い致します」


「ハァァァァァ!?」



あまりにも急な展開に、ユウライは状況を飲み込めずにいた。


そりゃそうだ。


つい先ほどまで人間を信用せず、誰にも従おうとしなかった古龍が。


たった一人の人間に仕えると、自ら決めたのだから。


シェリスはそんなユウライの反応を見つめながらも、理由を口にすることはなかった。


何故、彼を主として選んだのか。


何故、そこまで信じることができたのか。


それは、本人には言わない。


従者になると決めた、その瞬間から。


シェリスはそう決めていた。


そして、現在。



「風系って難しいんだなぁー」



ユウライは、自分の手を見ながら何気なく呟いた。


その隣で、シェリスは静かに微笑む。



「ふふっ・・・」



かつて、人間を嫌っていた古龍。


誰にも期待せず、誰も信じようとしなかった存在。


そんな彼女が、今はこうして一人の人間の傍にいる。



「(見返りを求めずに助けたからですよ、そして真面目で心優しいからこそ、ずっと傍に居たいと思ってしまったんです。孤独だったんです・・・本当は貴方のような人を探してたんです。ユウライ様・・・)」



その想いを、本人に伝えるつもりはない。


少なくとも、今はまだ。


ただ傍にいられるだけで十分だった。


シェリスはそう思いながら、変わらずユウライの隣に立っていた。

次回は新しい従者かなと思ってます

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― 新着の感想 ―
シェリスさんのユウライさんへの好意につけ込むなんて、移し鬼は悪いヤツですね! それを圧倒的な強さではねのけるユウライさんは、本物のヒーロー! シェリスさんが今もユウライさんに忠誠を誓っている理由が…
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