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絶対主権  作者: ユウライ
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7/10

7話《奇妙な人間から同居人になった》

日常回入りました。これで関係性が分かると思います。

約半月が経った。


相変わらず、シェリスの元には人間がやって来る。


国のため。


名誉のため。


力を得るため。


口にする理由こそ違えど、結局は自分の欲を満たすためにしか見えなかった。


あの日。


ユウライという一人の人間と出会ったことで、少しだけ人間に対する価値観を改めてみようと思った。


もしかしたら、自分が見てきた人間が偏っていただけなのかもしれない。


そんな考えすら、一瞬は浮かんだ。


だが――。



「・・・やはり、変わらんな」



何日経っても。


何人見ても。


あの日の男のような人間は、現れなかった。


そして・・・。



「シェリスさん、お久しぶりです」



聞き覚えのある声が、洞窟の入口から響いた。


シェリスはゆっくりと顔を上げる。


そこに立っていたのは――。



「・・・何故、また来た・・・?」



半月前。


何一つ奪わず、ただ道だけを聞いて去っていった男。


ユウライ・クロスだった。



「違う町行こうと思ったんですけど、オススメなとこあります?」


「・・・・・・」



シェリスは無言になる。



「貴様は・・・我を何だと思っている?」


「え?」


「案内人ではないぞ」


「いやぁ、前に教えてもらった道、めっちゃ分かりやすかったんで」


「・・・・・・」



またしても。


この男は、予想していたどの反応とも違っていた。


シェリスは、もう一度だけ探りを入れてみることにした。



「貴様、欲は無いのか?」


「めっちゃありますよ?」



あまりにもあっさり返され、シェリスは一瞬だけ黙る。



「じゃあ・・・何故、財宝や我の命を奪わん?」


「悪い事しちゃいけないって・・・ちゃんと習ってますので・・・それくらいは?」


「・・・・・・」



まただ。


また、この男はシェリスの想定から外れてくる。


欲が無いわけではない。


綺麗事だけを並べるわけでもない。


ただ、自分の欲のために他者を傷つけることを選ばない。


それだけのことを、まるで当たり前のように口にした。



「・・・それだけか?」


「それだけですね」


「財宝を見ても?」


「欲しいとは思いますよ?」


「では何故」


「シェリスさんの物じゃないですか」


「・・・・・・」



ユウライは本当に不思議そうな顔をしていた。


まるで、何故そんなことを聞かれるのか分からないとでも言うように。


シェリスはその顔をじっと見つめる。



「(・・・欲がありながら、奪わない・・・か)」



これまで見てきた人間とは違う。


だが、まだ信じるには早い。



「貴様、しばらくここに居ろ」


「え?」


「聞こえぬのか?ここに――」


「いや・・・聞こえてますけど・・・何故・・・?」


「興味本位だ。悪いか?」



あまりにも真っ直ぐ言われて、ユウライは少しだけ考え込む。


目の前にいるのは古龍。


しかも、つい半月前まで人間を片っ端から追い払っていた存在だ。


普通なら警戒する。


普通なら断る。


だが――。



「いいですよ」


「・・・何?」



シェリスの方が逆に面食らった。



「危機感は無いのか?」


「聞いといて?」


「・・・・・・」



確かにその通りだった。


自分から「ここに居ろ」と言っておいて、了承されたら危機感を問う。



「・・・妙な男だな、貴様は」


「シェリスさんも大概ですよ?」


「我に口答えするか?」


「え、ダメなんです?」


「・・・・・・」



また、調子が狂う。


威圧しても怯えず。


媚びるわけでもなく。


かといって無礼というほどでもない。


ただ普通に、自分と会話をしてくる。


シェリスはしばらくユウライを見つめたあと、ふいと顔を逸らした。



「好きにせよ。ただし、我の財宝には触れるな」


「分かりました」


「勝手に奥へも行くな」


「はいはい」


「返事は一度でよい」


「はい」


「・・・・・・」



ほんの少しだけ。


シェリスの眉間に皺が寄った。


けれど――。


その表情は、これまで人間に向けていた嫌悪とは、少し違っていた。


1日目。



「シェリスさん、食料取ってきました」


「・・・は?」



ユウライが抱えていたのは、仕留めたばかりの獲物だった。



「あ、嫌いでした?鶏肉?」


「そうでは無い。何故、我の分も取ってくる?」


「住まわせて貰ってるので?」


「・・・・・・」



あまりにも当然のように返されて、シェリスは言葉を失う。


自分の分だけ確保すればいい。


ここに住むことを許したのも、ただの興味本位だ。


それなのにユウライは、まるでそれが普通であるかのように、自分の分まで用意してきた。



「・・・好きにせよ」


「じゃ、焼きますね」


「待て。貴様、料理できるのか?」


「多分?」


「多分・・・?」



その日の食事は、思ったより普通に美味かった。


3日目。



「シェリス!!貴様の首を・・・・・・誰だ?」



洞窟へ踏み込んできた男が、シェリスの隣にいるユウライを見て動きを止める。



「ユウライです」


「・・・何故、人間がここに」


「この人間に手を出すな」



低い声。


たったそれだけで、侵入者の身体が固まった。


ユウライはその様子を見ながら、シェリスへ顔を向ける。



「シェリスさん、いつもこうなんですか?」


「あぁ。羽虫の様にウザイ」


「じゃあ、代わりにやります」


「何故・・・?」


「いや、ずっとシェリスさんばっかりやるの大変でしょ」


「・・・・・・」



シェリスはまた黙る。


ユウライにとっては、それだけだった。


恩を売りたいわけでもない。


強さを見せつけたいわけでもない。


ただ、面倒そうだから代わる。


それだけ。



「・・・勝手にせよ」


「はーい」



その後、侵入者はユウライによってあっさり追い返された。


それからも。


5日目。



「シェリスさん、そこホコリ溜まってますよ」


「我の住処だぞ」


「だから掃除します」


「何故だ」


「気になるからです」



7日目。



「これ、どこ置けばいいです?」


「貴様は何故、我の財宝を整理している」


「倒れそうだったんで」


「触れるなと言ったはずだが」


「じゃあ倒れてもいいんです?」


「・・・・・・」



10日目。



「シェリスさん、今日雨すごいですよ」


「見れば分かる」


「外出しなくてよかったですねぇ」


「我は飛べる」


「あ、そっか」


「・・・・・・」



そんな何でもない日々が続いた。


戦いでもない。


契約でもない。


主従でもない。


ただ同じ場所で飯を食べ、言葉を交わし、たまにユウライが余計なことをして、シェリスが呆れる。


そして――。


2週間後。


気付けばシェリスは。


洞窟の入口から聞こえてくるユウライの足音を、自然と待つようになっていた。

次回はどうしましょうね〜・・・色んなパターンあるから、迷う。

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― 新着の感想 ―
ユウライさんとシェリスさんの掛け合いが漫才のようで、思わず笑っちゃいました! シェリスさんの気持ちがだんだん変わっていく様子が、今の献身的な姿にどうつながっていくのか気になります!
これが主人公とシェリスさんとの出会いだったんですね。 誰相手でも変わらない主人公はなかなかの大物ですね(笑)
1~7話を読ませていただきました。主人公のどこか抜けているキャラクターにほのぼのとしました。この主人公の性格で最強な力を活かせるのか別の意味で心配になる。そんな愛嬌がある主人公だと感じました。自身が設…
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