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絶対主権  作者: ユウライ
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6話《醜い人の中に》

ついに忠誠理由が書けます!!やっとだ!!メイド長のシェリスの過去編です

これは、ユウライが転生するよりも前のお話。


そして――この世界だけが知っている、確かに存在した記憶。



「やはり、人間は愚か・・・我の宝を盗むことしか脳のない、家畜以下の生物・・・呆れる・・・」



《シェリス》。


古龍。


数あるドラゴン種の中でも、最古にして最も威厳ある存在の一つ。


長い時を生き、圧倒的な力を持つ彼女にとって――人間とは、欲にまみれた愚かな生物でしかなかった。


この時までは。



古龍シェリス!!我が王国の為!!その財宝を貰いに来た!!」


「ふん・・・」



今日もまた、変わらない。


欲に目を濁らせた人間が、シェリスの住処へと足を踏み入れる。


王国のため。


民のため。


正義のため。


口にする理由だけは立派だった。


だが、やっていることは同じ。


自分のものではない財宝を奪いに来ただけ。



「戯言を」



次の瞬間。


ドンッ!!


シェリスが軽く腕を振るっただけで、侵入者たちはまとめて吹き飛ばされた。


悲鳴を上げる暇すらない。


圧倒的な力。


人間が何人集まろうと、古龍であるシェリスの敵ではなかった。



「弱い・・・」



静かになった洞窟の中で、シェリスはつまらなそうに呟く。


そして、何事もなかったかのように自らの財宝の元へ戻っていった。


こんなことは、今日に始まった話ではない。


昨日も。


その前も。


さらにその前も。


人間は何度追い払っても、またやって来る。


財宝を求めて。


力を求めて。


古龍を討ったという名誉を求めて。


そして、そのたびにシェリスがあっさりと倒す。


これを毎日だ。



「・・・飽きたな」



人間への嫌悪は、積もる一方だった。


たった、ある日のことだった。



「すいません。シェリスさんで宜しいでしょうか?」


「・・・何だ、貴様・・・」



突然現れた男へ、シェリスは鋭い視線を向ける。


見たところ、敵意も殺意も感じない。


だが、それだけで信用するほどシェリスは甘くない。


この世には、敵意も殺意も完全に消し去ったまま相手の命を奪える強者が存在する。


だからこそ、警戒するのは当然だった。


いつでも動けるように身構えながら、男の一挙手一投足を観察する。


しかし、男はそんな警戒など気にも留めず、少し困ったように頭を掻いた。



「道に迷ったんですよね・・・」


「・・・は?」



シェリスの表情が固まる。


今までここへ来た人間は、財宝を奪うため。


名誉を得るため。


あるいは、自分を討つため。


理由は違えど、全員が何かしらの目的を持っていた。


だというのに。


目の前の男は――。


ただ、道に迷っただけだという。



「・・・貴様、本気で言っているのか?」


「はい。気付いたらここに居まして・・・」


「・・・・・・」



長く生きてきたシェリスだったが。


こんな理由で自分の住処へ辿り着いた人間を見るのは、初めてだった。


探りを入れるように、シェリスは男をじっと観察する。



「何処に行きたい・・・?」


「えーと・・・隣町の《シーラ町》って所なんですよ。地図が風で吹っ飛びまして・・・」


「・・・・・・」



声の揺れ。


視線。


呼吸。


どれを見ても、嘘をついている様子はない。


本当に、ただ道に迷っただけらしい。



「はぁ・・・」



シェリスは呆れたように息を吐くと、財宝の中から一枚の地図を取り出した。



「それなら、これを持ってゆけ・・・《万象地図》だ」


《万象地図》。


世界のあらゆる場所を示してくれる、極めて希少な魔道具。


現在地はもちろん、目的地までの道筋や地形まで自動で示してくれる。


その価値は非常に高く、売れば家を一軒買えるほど。


普通なら、喉から手が出るほど欲しがる代物だった。


だが・・・。



「いえ、大丈夫です。そんな貴重な代物を貰うわけにはいきません」


「・・・正気か?」



シェリスは思わず聞き返した。


これまで自分の元へ来た人間は、財宝を欲しがる者ばかりだった。


むしろ奪おうとすらしてきた。


なのに目の前の男は。


こちらから差し出した財宝を、あっさり断った。



「はい。道だけ教えていただければ十分なので」


「・・・・・・」



シェリスは、初めて見るものを見るような目で男を見つめた。


欲しがらない人間。


奪おうとしない人間。


そして何より。


古龍である自分を前にしても、必要以上に恐れない人間。



「(・・・何だ、こいつは)」



ほんの僅かに。


シェリスの中で、人間という存在に対する認識が揺らぎ始めていた。



「貴様、名は」


唐突に問われ、男は少しだけ目を丸くした。



「え?ユウライ・クロスと申します?」


「・・・そうか」



シェリスはその名を静かに反芻する。


これまで幾人もの人間を見てきた。


欲に目が眩んだ者。


名誉を求める者。


古龍を討ち、自らの価値を証明しようとする者。


だが、目の前の男はどれにも当てはまらない。


だからこそ。


その名だけは、覚えておこうと思った。



「覚えておこう」


「え?」


「その町なら、ここから北へ進め。湖がある」



シェリスは洞窟の外へ視線を向ける。



「そして湖を右に行け。さすれば、辿り着ける」


「おぉ、なるほど。ありがとうございます」



ユウライは素直に頭を下げた。



「それじゃあ、行ってきます」


「・・・ああ」



そうしてユウライは、本当に何も持たず。


財宝にも手を伸ばさず。


ただ道だけを聞いて、去っていった。



「・・・・・・」



シェリスは、遠ざかっていく背中をしばらく眺めていた。



「ユウライ・クロス・・・か」



その名を、もう一度だけ口にする。


この時のシェリスは、まだ知らなかった。


たった今出会ったこの男が――。


後に、自分の運命を大きく変える存在になることを。

次回は忠誠誓うか、日常入るかもしんないです

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― 新着の感想 ―
シェリスさんはドラゴンだったとは!! 財宝を奪いに来る人間を、毎日のように相手にしていたのだとしたら、シェリスさんが人間を醜いと思うようになったのも無理はないのかもしれませんね。 そんな中に現れた…
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