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絶対主権  作者: ユウライ
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5/10

5話《壊した壁と、過去の記憶》

このペースでどんどん書き続けたいですねぇ

俺は訓練室の床に胡座をかきながら、目の前に浮かぶ《ステータス》をじっくり眺めていた。


さっきまではレベルや能力値ばかりに目が行っていたけど、ちゃんと見てみると、他にも色々と分かることがある。


まず、持っているスキルの数。


想像していた以上に多い。


戦闘系だけじゃなく、補助、感知、耐性、特殊能力まで細かく分類されている。


次に、スキルの使い方。


能力ごとに発動条件や扱い方まで記載されていて、わざわざ手探りで試す必要なんてなかった。


そして一番大きかったのが――。



「ONとOFF・・・切り替えられるんだ・・・」



常時発動する能力もあれば、自分の意思で有効と無効を切り替えられるものもあるらしい。


《武神無双》もその一つだった。


つまり。


最初からステータスを開いて、説明を読んで、必要なスキルをONにすればよかった。


俺はしばらく無言でステータス画面を見つめる。


それから、さっき壊した人形と壁の穴へゆっくり視線を向けた。



「何だったんだよ・・・最初の件・・・」



技名を叫んで。


普通に殴って。


一人で恥ずかしくなって。


能力の使い方を身体で探って。


壁まで壊して。


全部、必要なかった。



「・・・俺、一人で何やってたんだろ」



転生して早々、自分で作ったシステムに敗北した気分だった。



コンコン。



「ん?はーい」



返事をした直後。


俺は、ふと壁の方へ視線を向けた。



「(・・・いや待てよ?)」



そこには、さっき《暴風拳》でぶち抜いた見事な大穴。



「(これ・・・普通に見られるじゃん・・・)」



今さら隠すのも無理だ。


素直に言うか。


言い訳したところで、たぶん見苦しいだけだし。


そんなことを考えているうちに、扉が開いた。



「失礼します。訓練室にいるとの事で、お茶をお持ち・・・・・・」



そこで言葉が止まる。



「・・・・・・」


「・・・・・・」



静寂。


入ってきたシェリスの視線が、俺からゆっくりと壁へ移る。


そして――。


穴。


再び俺。


また穴。



「・・・・・・」



何も言わない。


ただ、じっと見られている。



「(うわぁ・・・この無言が一番怖い・・・)」



俺は胡座をかいたまま、なんとなく姿勢を正した。



「・・・えーっと」



シェリスはまだ何も言わない。



「・・・壊しました」



先に白状した。


「加減は・・・したんだけどね?」



その言葉に、シェリスの視線がもう一度、壁の大穴へ向いた。



「・・・・・・加減、ですか?」


「はい・・・」



声が小さくなった。


どうやら。


従者との再会より先に、俺はメイド長へ謝罪することになりそうだった。



「なるほど・・・訛ってると思い、スキルを使ってしまったと・・・ふむ・・・」


「そうなんです」



俺は若干、目を逸らしながら答える。



「(嘘はついてないハズ・・・だって本当だもん・・・スキルなんてあったら使いたいけど、使い方知らないし・・・)」



少なくとも、《暴風拳》を試したかったのは本当だ。


ただ、その結果として壁まで吹き飛ばすとは思っていなかっただけで。


シェリスはしばらく俺と壁を見比べていたが、やがて小さく息を吐く。


そして壊れた壁へ手を向けた。


淡い光が広がり、崩れていた石材がゆっくりと元の位置へ戻っていく。


欠けた部分も、ひび割れも。


まるで最初から壊れていなかったかのように、壁が綺麗に修復されていく。



「おっ?」



思わず声が漏れた。


「壁を修復しました。次は気を付けて、お使い下さい」



「はーい・・・」



怒られるかと思っていた分、少しだけ安心する。


それにしても。



「(補助系スキルで普通に壁直せるんだ・・・便利すぎない?)」



この世界では、壊す側だけじゃなく。


直す側まで、普通に規格外らしい。



「風系スキル・・・」



シェリスが、ほんの小さな声で何かを呟いた。



「ん?」



俺が聞き返すと、シェリスは一瞬だけこちらを見る。



「いえ、何でもありません」


「うん・・・?」



何でもないと言われても、なんとなく引っかかる。



「(今、風系スキルって言ったよな・・・?)」



俺は首を傾げるが、シェリスはそれ以上何も言わず、持ってきたお茶を静かにテーブルへ置いた。


まるで、さっきの一言なんて最初からなかったかのように。



「どうぞ。少し休憩なさってください」


「あ、ありがとう」



カップを受け取りながらも、俺の頭の片隅にはまださっきの言葉が残っていた。



「(・・・まぁ、気にしすぎか)」



そう思って、ひとまずお茶に口をつけることにした。



「(懐かしい・・・主が過去に“救って下さった”風系スキルを久しぶりに・・・)」



シェリスは、修復された壁を静かに見つめながら心の中で呟く。


先ほどユウライが放った《暴風拳》。


ただの攻撃スキルではない。


シェリスにとっては、それを見るだけで過去の記憶が蘇るものだった。



「(あの時も・・・同じように・・・)」



一方の俺は、そんなシェリスの胸中など知る由もない。



「うま・・・このお茶」



さっきまで壁を壊していた人間とは思えないほど、呑気にカップを傾けていた。


シェリスはそんな俺を見て、ほんの少しだけ目を細める。


今の主は、過去のことを覚えていない。


それでも。


あの頃と変わらないものは、確かに残っている。



「・・・ユウライ様」


「ん?」


「いえ・・・何でもありません」


「またそれ?」



俺が苦笑すると、シェリスも小さく笑った。


こうして。


俺の知らない“過去”を知る従者と、何も知らない俺との時間が、少しずつ動き始めていた。

次は多分、過去シーンになると思います

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― 新着の感想 ―
せっかく説明書きが付いてるのに、さてはユウライさん、取説を読まない人ですね? それにしても、壁に大穴を開けてるのに怒る気配もなく、さっと直してくれるシェリスさんは優しい人ですね。 でも、《暴風拳》…
Review Chainから来ました! シェリスがとても良いキャラしてるなと思いました。ユウライとシェリスの2人で戦ってるところなど、想像するだけでワクワクしますね! まだ物語がどう動くのか、ユウライ…
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