4話《最初から使えばよかったじゃん!》
だんだん、小説を書く気が増してきたような・・・
「よし・・・次はイメージだな」
壊れた人形から少し離れ、今度は別の標的の前に立つ。
技名を叫ぶだけでは、ただのパンチになった。
なら次は、頭の中でしっかりと攻撃を思い描いてみる。
「(暴風・・・風を拳に集めて、そのまま撃ち出す感じ・・・か?)」
イメージで考えるなら、こうだ。
けど・・・それだけで本当に発動するのか?
「イメージなら、どうとでもなる・・・体で意識するもんじゃないか?」
俺は自分の拳を見つめる。
頭の中だけで風を思い描くんじゃなくて、もっとこう・・・身体の中にある何かを、拳へ集めるような感覚。
「(魔力・・・なのか?それとも別の力・・・?)」
目を閉じて、呼吸を整える。
意識を身体の内側へ向けてみる。
すると――。
「・・・ん?」
ほんの僅かに。
胸の奥から、何かが流れているような感覚がした。
血液とも違う。
熱とも違う。
けれど確かに、自分の中に“何か”がある。
「(これ・・・か?)」
試しに、その感覚を右腕へ。
さらに拳へ。
ゆっくりと集めるように意識してみる。
すると拳の周囲で――。
ヒュウ・・・。
微かに、空気が揺れた。
「・・・お?」
さっきまでとは、明らかに違う。
「これ・・・もしかして当たりじゃね?」
そう感じた俺は、人形に向かって拳を構える。
このまま本気で放つ。
・・・いや、それはまずい。
「(待て待て・・・これ、本気でやったら訓練室ごと壊れないか?)」
さっきはただ殴っただけで、人形を粉々にした。
今度はそこに、明らかに何かしらの力が乗っている。
さすがに嫌な予感がする。
「(よし・・・加減しよう。かなり加減しよう)」
拳に集めた力を抑えながら、標的へ向ける。
そして――。
「《暴風拳》!!」
ドンッ!!
凄まじい衝撃と共に、人形が一瞬で吹き飛んだ。
そのまま背後の壁へ激突し――。
ガラガラッ・・・。
「・・・」
人形が消し飛んだ先。
壁には、見事な穴が空いていた。
「あっ・・・壁に穴が空いた・・・加減したのに・・・」
思わず固まる。
かなり抑えた。
本当に、抑えたつもりだった。
その時。
『12203点!!』
「・・・ん?」
表示板へ視線を向ける。
【12203】
「おぉ・・・さっきよりかなり上がったな」
さっきが6748点。
今回は12203点。
単純に考えても、ほぼ倍近い。
「(ってことは・・・今のはちゃんと能力として成功したってことか?)」
壁に空いた穴と、自分の拳を交互に見る。
「・・・なるほどねぇ」
どうやら。
俺の予想は、当たっていたらしい。
その瞬間――。
『《武神無双》を使用せずに《暴風拳》を放ちました。《武神無双》を使用しますか?』
「・・・ん?」
突然、目の前に半透明の画面が浮かび上がった。
「なんか出た・・・ステータス?ゲームでよくあるやつ?」
触れてみると、画面は俺の動きに反応して表示を切り替える。
どう見ても、ゲームでよく見るステータス画面だった。
「マジであるんだ、こういうの・・・」
気になって自分の情報を開いてみる。
そして、真っ先に目へ飛び込んできた数字に思わず声が漏れた。
「レベル《9999》・・・やっぱり、設定通りだ・・・」
創作していた頃に自分で決めた数字。
それが今、現実のものとして目の前に表示されている。
さらに下へ視線を移していく。
――ステータス――
STR(筋力):9,200
本気を出す必要がほぼ無い。必要な瞬間だけ“通る力”が出る。
AGI(敏捷):9,300
速さではなく「先にそこにいる」タイプ。
DEX(器用):9,500
武器・機構・環境を問わず最適解を引き当てる。
INT(知力):9,800
戦術・設計・因果理解。考える前に正解を踏む。
PER(感知):9,900
世界の歪み・意図・伏線を察知する。
LUK(運):9,999
運ではなく「結果が都合よく確定する」。
「・・・」
俺は無言で画面を見つめる。
「高いのは分かる・・・分かるんだけど・・・」
比較対象がない。
レベル9999なのだから弱いわけがないのは理解できる。
けれど、この世界でこの数字がどれほど異常なのかまでは分からない。
「(てか・・・さっきの《暴風拳》って《武神無双》無しだったんだよな?)」
ちらりと壁を見る。
そこには、加減して放った一撃によって空いた大穴。
そしてスコアは12203点。
「・・・これ、《武神無双》使ったらどうなんの?」
興味が湧く。
めちゃくちゃ湧く。
しかし同時に、壁の穴が嫌でも視界に入る。
「・・・いや、待て」
俺はもう一度、訓練室を見回した。
「これ以上やったら・・・普通に訓練室なくならない?」
能力の使い方を覚え始めたばかりだというのに。
今度は別の問題が浮上していた。
「えーと・・・確か《武神無双》の能力は・・・」
俺は記憶を辿りながら、ステータス画面に表示された《武神無双》の項目を開く。
そこには、かつて自分で考えた能力の詳細が並んでいた。
――《武神無双》。
あらゆる武術・体術・武器術を、極限まで修得した状態で扱う能力。
剣術、槍術、弓術、格闘術、暗器術。
武器の種類を問わず使用でき、たとえ初めて手にした武器であっても、まるで何十年も使い続けてきたかのように扱える。
さらに、一度見た武術は即座に理解・習得。
相手の癖、重心、呼吸、筋肉の動きから次の行動を読み取り、その瞬間に最適な対応を選択する。
戦闘中も技術は継続的に最適化され、戦えば戦うほど動きは洗練されていく。
達人が数十年かけて辿り着く境地へ、一瞬で到達することすら可能。
そして――。
純粋な技量勝負において、自分より格上の相手は存在しない。
ユウライの近接戦闘能力を支える、中核能力の一つ。
「・・・」
読み終えた俺は、しばらく無言になる。
「いや・・・待て待て」
もう一度、最初から読み返す。
「これ使えばいいだけだったじゃん」
さっきまで必死に、
技名を叫ぶのか。
イメージなのか。
身体で感覚を掴むのか。
そんなことを一人で試行錯誤していた。
だが《武神無双》を使えば、少なくとも戦闘技術に関しては――全部解決する。
「俺さっきまで何してたん・・・?」
静かな訓練室に、俺の虚しい声だけが響いた。
そして視界の端には、先ほど《暴風拳》で開けた壁の大穴。
「・・・先にステータス確認すればよかったぁ・・・」
転生して早々。
自分自身の設定に振り回されている気がしてならなかった。
ついにスキル解禁(?)が出来ましたー色んなスキルあるから、早く書きたい!!




