3話《自分の強さを確かめたい》
少しずつ書いていきます
「(そろそろ、自分の強さを知りたい。やはり男と言えば・・・戦闘!!だけど・・・ガチガチの初心者なんよな・・・)」
研究室を後にして廊下を歩きながら、俺は自分の手をじっと見つめる。
この世界に来てから、まだまともに戦ったことがない。
創作していた頃の設定だけを見るなら、俺は間違いなく強い。
だけど――。
実際に剣を振ったこともなければ、魔法を撃ったことだってない。
知識として知っているのと、身体を動かせるのはまったく別だ。
「(試してみたい気持ちはある・・・めちゃくちゃある・・・でも戦闘なんて、ど素人なんよなぁ・・・)」
しかも俺は、この世界では従者たちの主だ。
そんな俺が今さら、
『すみません!戦い方を一から教えてください!』
なんて言えるだろうか。
「(・・・言えねぇ。恥ずかしすぎる)」
変なところで威厳を気にしてしまう。
とはいえ、このまま自分がどれくらい動けるのか分からないのも怖い。
「・・・どうすっかなぁ」
廊下の真ん中で立ち止まり、腕を組む。
戦いたい。
でも初心者なのはバレたくない。
そんな、どうでもいいようで本人にはかなり重要な問題に、俺は頭を悩ませていた
――訓練室。
「とりあえず、訓練室に来たけど・・・ホントにどうするか・・・」
誰もいない広い訓練室の中央で、俺は腕を組んで考え込む。
目の前には、人型の訓練用人形や標的、魔法の威力を測るためらしい装置まで置かれている。
設備だけ見れば完璧だ。
問題は――使う側である俺だった。
「一、名前を叫んで能力を使う」
指を一本立てる。
「二、イメージして、攻撃する」
二本目。
「三、誰かにさりげなく聞く」
三本目を立てたところで、しばらく無言になる。
「自分で調べるとしたら・・・一と二だけど、さりげなく聞くのが手っ取り早いが、勘づかれてしまったら、やべぇ」
主なのに、自分の能力の使い方すら分からない。
そんなことがバレたら、どういう反応をされるのか想像もつかない。
「(いや、別に怒られたりはしないだろうけど・・・なんか恥ずかしいんだよなぁ・・・)」
俺は訓練用の人形へ視線を向ける。
「・・・よし」
まずは一番単純な方法から試してみることにした。
技名を叫ぶ。
創作物では、だいたいこれで何とかなる。
「(頼むぞ・・・俺の創作知識・・・!)」
人形の前に立ち、ゆっくりと呼吸を整える。
「(落ち着け・・・とりあえず、それっぽく力を込めれば何とかなる・・・はず!)」
足を踏み込み、拳を握る。
そして――。
「《暴風拳》!!」
ドンッ!!
鈍い衝撃音が訓練室に響き、人形が勢いよく吹き飛んだ。
そのまま壁際まで転がり、胴体部分が派手に砕け散る。
「・・・お?」
一瞬、成功したかと思った。
だが。
「(・・・いや待て。今の、なんか風とか出たか?)」
手を見る。
特に何も起きていない。
拳に特別な感覚もない。
ただ普通に殴った。
そして普通に、人形を破壊しただけだった。
「うわぁ・・・めっちゃ恥ずい・・・やだぁ・・・死にたい・・・」
誰も見ていないのに、顔が熱くなる。
技名まで叫んで、ただのパンチ。
これ以上ないくらい恥ずかしい。
その時――。
『6748点!!』
訓練室に、機械音声が響いた。
「ん?」
顔を上げると、壊れた人形の近くに設置された表示板へ、大きく数字が浮かんでいた。
【6748】
「あぁ・・・スコアかな?」
俺は数字を眺めながら首を傾げる。
「6748点って・・・凄いのか?」
基準が分からない。
比較対象もない。
ただ一つ分かるのは――。
「(能力使えてないのに、この点数なんだよな・・・?)」
俺はもう一度、自分の拳を見る。
・・・もしかして。
思っていたより、素の身体能力からしておかしいのかもしれない。
本人は、まだ気付いていなかった。
訓練室の端。
壁際に、ひっそりと一枚のランク表が掲示されていることに。
そこには、測定スコアに応じた評価基準が書かれていた。
【5000点以上――Aランク】
そして、そのさらに上。
【50000点以上――EXランク】
当然、今のユウライが叩き出した6748点は、すでにAランク相当。
しかも能力も技も使えていない。
ただ、普通に殴っただけで。
「うーん・・・6748点かぁ・・・」
そんな事実を知らない本人は、表示板を眺めながら呑気に首を傾げていた。
「(基準が分からんから、凄いのか普通なのかすら分からんなぁ・・・)」
そしてすぐ近くにあるランク表には、当然のように気付かない。
「まぁいいか。次は二番だな」
今度は、技名を叫ぶのではなく。
頭の中で能力をイメージして発動させる方法。
本人だけが、自分の最初の一撃がすでに十分おかしいことを知らないまま――次の実験へ進もうとしていた。
スキルはまだ出てませんが、スキルの導入は入れましたかね




