11話《伝説の王を舐めるな》
だいぶお待たせしました・・・リアルが色々ありすぎてかかりました_:( _ ́ཫ`):_
かつて、偉大なる初代盟王がいた。
その名は――アーク・レイヴェル。
彼は王冠によって王となったのではない。
誰かを救い、誰かのために傷つき、それでもなお歩みを止めなかった。
その背中を見た者たちは、命じられることなく、自ら彼の隣へ立つことを選んだ。
誓いは絆となり、絆は盟となる。
そうして生まれた存在こそ―― 盟王。
盟王とは、支配する王ではない。
恐怖で従わせる王でもない。
その者の生き方を見て、その者のために力を貸したいと願う者たちが、自らの意志で集うことで初めて成立する王。
忠誠を強いるのではなく、信頼によって結ばれ。
命令によって従わせるのではなく、恩と意志によって隣に立たれる。
だからこそ、盟王は一人では完成しない。
その者を信じる者がいて。
共に戦う者がいて。
その背中を追う者がいて。
時には支え、時には止め、時には同じ道を歩む者たちがいて。
初めて《盟》は形となる。
そして、盟王にはもう一つ。
古くから語られる、特別な証があった。
―― 六道天眼。
六つの道を見通し、力を掌握し、戦いの中で真実を見極める瞳。
ただ強大なだけの力ではない。
盟王が盟王たる資質を示す、象徴。
初代盟王アーク・レイヴェルもまた、この《六道天眼》を持っていた。
彼はその力を極め、ついには六道神顕へと至った。
それは、後世において長く語り継がれることになる。
――《六道天眼を持つ者》。
それは、次なる盟王たり得る者。
だが、時は流れた。
アークは去り。
盟王の名も、六道天眼の伝承も、やがて歴史の彼方へと埋もれていった。
それでも。
その名を忘れなかった者がいる。
初代盟王アークと共に歩んだ、数千年を生きる王。
《蒼白の王》アルヴァイス。
彼は待ち続けた。
いつか再び。
誓いと絆によって人々が集い。
その瞳に《六道》を宿す者が現れる、その日を。
そして――
長い時を越えて。
再び、その瞳を持つ者が現れた。
名は、ユウライ。
初代盟王アーク・レイヴェルの再来ではない。
同じ道を歩む者でもない。
だが。
彼の周囲にもまた、人が集った。
救われた者。
信じた者。
共に歩むと決めた者。
その在り方を見て、自ら隣に立つことを選んだ者たちが。
そうして再び、《盟》は生まれた。
そしてその瞳には――
初代盟王と同じ、《六道天眼》が宿っていた。
数千年の時を越え。
再び、盟王の証を持つ者が現れたのである。
――次代盟王。
ユウライ・クロス。
この男が、二代目の《盟王》になったと世界から認められた。
初代盟王アーク・レイヴェルと同じく、《六道天眼》を生まれながらに宿す者。
それは、ただ強大な力を持つという意味ではない。
《六道天眼》は、古くから盟王の証とも呼ばれてきた。
人を支配するためではなく。
誰かを救い、誰かと繋がり、その結果として人々が自ら隣に立つ。
その在り方を世界そのものが認めた時――。
その者は、再び《盟王》となる。
初代から数千年。
長い時を越えて途絶えていた称号は、ユウライ・クロスによって再び現代へと戻った。
サロリアはそこで静かに言葉を締める。
「・・・これが、盟王の歴史ですわ」
商人はしばらく言葉を失っていた。
さっきまで目の前にいたのは、ただの若い王に見えていた。
しかし今聞かされたのは、この国の成り立ちそのものに関わる伝説。
そして、その伝説の続きを生きている人物が、今まさに目の前に座っているという事実だった。
「これが・・・この国の伝説・・・」
思わず漏れた声に、化乃がゆっくりと目を細める。
「その伝説が目の前にいるんどすえ?だから舐めてるんって言ったんどす」
柔らかな京言葉。
けれど、その声音には先ほどまで以上の圧があった。
商人はようやく理解し始める。
自分たちが値切ろうとしていた相手は、単なる一国の王ではない。
数千年前から語り継がれてきた《盟王》という称号を継ぎ、《六道天眼》を宿し、星界盟国の中心に立つ存在。
――二代目盟王、ユウライ・クロス。
その名を軽く扱うことが、どれほど危ういことだったのかを。
「・・・・・・」
「(スー・・・そんな設定にしたなぁ・・・盟王&六道天眼は伝説級にしたんよなぁ・・・道理で化乃とサロリアが誇らしく言うわけだわ・・・)」
大事な商談の最中。
目の前では、自分がかつて考えた《盟王》と《六道天眼》の伝説が、まるで本当に存在した歴史のように語られていた。
しかも、それを説明しているのはサロリアだ。
自分で作った設定のはずなのに、こうして改めて他人の口から聞かされると、妙に実感が湧いてくる。
化乃とサロリアが、あれほど誇らしげに《盟王》を語っていた理由も、今になってようやく少し分かった気がした。
もちろん、表情には出さない。
今回もポーカーフェイスを崩さず、何食わぬ顔で商談の席に座っている。
だが内心では、完全に別だった。
転生してまだ間もない。
《盟王》も《六道天眼》も、自分で「伝説級の設定にしよう」と決めた記憶はある。
けれど、実際にその伝説の当事者として扱われると――
感覚としては、まだ。
「あぁ・・・そうだったわ」
その程度なのである。
「くっ・・・いくら、伝説の歴史を並べようと!若いことには変わりは無い!!経験も浅い王が!!黙ってれば言いものの!」
「あー・・・」
「(若いとか浅い以前に転生したばっかだから、それ以下なんだよな・・・鉱石も知らんし・・・この状況からして、取るべき選択はただ一つ・・・)」
ユウライは小さく息を吐いた。
ここまで言っても理解しないのなら、もう言葉だけでは足りない。
化乃もサロリアも、ただ商談や外交を任されているだけの人間ではない。
星界盟国でその立場にいる者が、口先だけで選ばれているはずもなかった。
「化乃、サロリア。ご自由に」
「お任せを」
「了解です」
その瞬間、二人の空気が変わった。
化乃はいつも通り柔らかく笑っている。
サロリアも、上品な立ち姿を崩してはいない。
だが。
商人の背筋に、遅れて寒気が走る。
「な、なんだ・・・?」
「ほな」
化乃が一歩踏み出した。
「言葉で分からへんのやったら、身体で覚えてもらいまひょか」
「なっ――」
次の瞬間。
商人の視界から、化乃の姿が消えた。
気付いた時には、もう遅い。
背後へ回り込んだ化乃の腕が首元へ絡みつき、そのまま体勢ごと崩される。
「ぐっ・・・!?」
「商人やからって、戦えへんと思いました?」
耳元で囁く声は、驚くほど穏やかだった。
だが、その拘束はまるで外れない。
暴れようとしても、腕一本まともに動かせない。
「は、離せ・・・っ!」
「嫌どす」
さらに締め付けが強まる。
「ぐ・・・ぁ・・・!」
「化乃」
「はい?」
「殺すなよー」
ユウライが軽く声をかける。
「分かってますえ」
化乃は笑顔のまま答えた。
「ちょっと大人しくしてもらうだけどす」
その横で、サロリアが静かに歩み出る。
「どうやら、随分と勘違いなさっていたようですわね」
商人の前まで来ると、冷たい視線を向ける。
「外交を担当しているから弱い」
「商談を担当しているから、戦えない」
「そんな程度の認識で、この星界盟国へ足を踏み入れたのですか?」
「く・・・っ」
「私たちは、ユウライ様の傍に立つ者ですの」
サロリアの声は穏やかだった。
だからこそ、余計に怖い。
「口先だけで、その場所を与えられていると思わないことですわ」
商人の顔から、さっきまでの強気な表情が完全に消えていく。
化乃に押さえ込まれ。
サロリアに見下ろされ。
そして、その二人へたった一言で許可を出したユウライが、何事もなかったかのように座っている。
ようやく理解した。
ここにいる者たちは。
ただの王。
ただの外交官。
ただの商人。
そんな肩書だけで測れる存在ではないのだと。
そして――
自分は今まで。
その全員を、完全に見誤っていたのだと。
初号と伝説の瞳術の名前がついに出ましたー!六道天眼は後々、説明しますので!乞うご期待!




