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スパークス・メモリアル!!  作者: 蒼奇丹
第一部 A04シリーズ強奪事件

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第一章 再会 01

『俺、大きくなったらパイロットになる!そんでアリアは俺が乗るロボを造ってくれよ』


『わかりました、約束です』


『約束!俺諦めないから、アリアも諦めんなよ!』


『はい!破ったら許さないですからね、悠司!』



幼い頃の、大切な約束。

だけど今は素直に向き合うことが出来ない



 依吹悠司いぶきゆうじは罪悪感で目を覚ました。

 ソファーで寝ていたせいか身体はどっと疲れていて、冷や汗で身体が冷え切っていた。


 

「はぁ……どうしたもんかな」



 悠司は居眠りする前と全く同じように頭を悩ませた。

 原因は目の前のタブレットに表示されている一枚の画像である。



「成績足りなくて進級危ういなんて、なんて説明すりゃいいんだ?」



 その題名とは通知表。内容は、体育と家庭科以外壊滅というものだ。

 春休みいっぱいは補習を行い、再試験で合格点を取らないと進級は出来ない、と強面の学年主任に脅かされたのはまだ数時間前の出来事だった。



『体育の成績の高さでなんとかならないですか?ほら、助っ人で大会優勝してるし…』


『それで甘くなるのは体育の成績だけだ。それに他の教科の成績をカバーするつもりならあと四回入賞せねばならんぞ』


『今年はセーブしてたのが仇になったか…』


『まったく…体育の授業以外、寝てばかりでさえなければ…普段の態度は良いんだから…』


『そうでしょ?だからここはひとつ、ねぇ…?』


『やめろ、コーヒーを袖の下に突っ込むな!俺は賄賂など受け取らん!普通に再試験に合格しろ』


『そんなぁ…』



 家に帰ったあと着替えもせず途方に暮れ、そして今に至る。

 パイロットになれないどころか、同い年の後輩になる可能性があるなんて、どんな顔をして説明すればいいかわからない。 



「ま、そんな機会いつ来んのか…」



 悠司は背もたれに身体を預けて、気の抜けたようなため息をついた。

 アリア=ゼフィールは悠司の幼馴染だが、もう二年も連絡を取れていない。


『すごく重要な研究をするので連絡は取れません。いつになるかは分からないのですが、終わったら必ずこちらから連絡します』


 そんなメッセージを最後に、アリアのアカウントは反応がなくなった。

 そしてそのうち返答のないメッセージを送ることが寂しくなって、悠司の方も送るのをやめてしまった。


 どのみちアリアが今の悠司の状態を知るのは、とうぶん先のことである。



「とりあえず走ってこようかな――」


 

 悠司は頭を切り替えるためにランニングに向かおうとして、突然鳴ったインターホンで立ち止まった。


来客なんて珍しい、宅配便か?


 確認もせずに悠司はドアを開けた。



「どちらさま――」



 言い終わるより先に息が止まった。


 彼女だけが、雲の切れ間から差し込む光に照らされていた。


 まるでスポットライトが当てられているようで、金色の髪は透き通るように輝く。

 それは身動ぎする度にふわりと揺れて、もし天使がいるとすればこんな髪なのだろうと、ふと悠司は思った。



「お久しぶりです、悠司。私のこと、覚えてますか?」



 喋ったことに悠司は驚いた。精巧な西洋人形だと思っていたからだ。

 肌は陶器のように白く滑らかで、瑠璃のような瞳が悠司を見上げるように覗き込んでいる。


 妖精の知り合いなんて居たっけ?寝ぼけた頭ではあるが、悠司は一瞬本気でそう思った。


 上目遣いに険が帯びはじめるのを見て、悠司は我に返った。

 金髪、青い瞳、そして白衣。これらの特徴を持つ知り合いは一人だけ。


 寝起きでも、どんなに勘が鈍くても流石に分かる。



「ちゃんとわかってるよ。…実は今とっても気まずい状況なんだが、何よりまた会えて嬉しいよアリア」



 起きてほしくないと考えたことは、往々にして現実になってしまうのだろう。

 ()()は唐突に来てしまった。


 悠司の頭には当然何のプランもない。



「覚えていてくれて嬉しいです悠司。……気まずい状況ってどういうことですか?」



 当然アリアからの追及が入る。

 嘘をつきたくないが、バカ正直には話しにくいのが本音だった。

 どうにか間を持たせたい。



「ま、玄関先じゃなんだし、パンケーキでも食いに行こうぜ。バイク出すからさ」



 悠司は駅前に新しいカフェができたのを思い出した。

 アリアが好きそうなふわふわのパンケーキが売りだったはず。

 ルートを計算しながら、悠司は黙々とガレージからバイクを出した。

 


「それ、悠司が乗りたいだけじゃないですか?」



 悠司の誤魔化したい魂胆や、その裏の魂胆まで見抜いているのか、アリアは呆れたように笑ってヘルメットを被る。



「そ、ずっとアリアを後ろに乗せたかった」



 躊躇わない。言うべきことは言う。

 それがモットーの悠司は悪びれもせずにこやかに答えた。

  


「――い、行きましょう」



 フルフェイスのヘルメットに隠れて表情はわからないが、アリアのくぐもった声は震えていた。



「じゃ、しっかり掴まってろよ」


「はい」



 駅まで道のりにして十分程度。

 市街地なので道路は平坦だし速度帯も控えめだ。

 それなのにアリアは、やけにきつく悠司にしがみついていた。


 アリアにバイクの後ろは怖かったかと、悠司はさらに丁寧な運転でゆっくりと向かうのだった。

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