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スパークス・メモリアル!!  作者: 蒼奇丹
第一部 A04シリーズ強奪事件

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序章 赤い警告灯

 目が割れそうなほど、真紅の灯りが激しく明滅している。

 警報音はどこか遠くに聞こえて、銃声や悲鳴までも他人事のようにぼやけている。


 アリア=ゼフィールは日常が一気に地獄に変わる様を、まざまざと見せつけられていた。

 


「どうして…こんなことに…。なんで――」



 襲撃が起きたのは限られた者しか存在を知らない超極秘計画、その拠点のひとつだった。

 部外者がその存在を、ましてや所在地まで知ることなどあり得るはずがない。関係者に裏切り者がいない限りは――



『こちらプローブ1。ゼフィール主任、無事か?』


「――っ!?アドラーさん!無事だったんですね…」



 思考がおかしな方へ飛躍しかける寸前、落ち着いていて鋭い声の通信が入った。

 彼はアドラー少佐。若き優秀なパイロットで、この計画ではテストパイロットを担当している。

 彼の冷静な判断がなかったら、アリアは今こうして無事でいられなかっただろう。

 

 アリアは安堵で思わず声がうわずる。

 しかしアドラーの返答は、安心を与えてくれるものではなかった。



『今のところは、というのが正解だ。いつまで持つかは分からん』


「そんな…」



 アードラーは強靭な精神力と卓越した技能を持った軍人である。そんな彼が言うならもう、状況は最悪を既に通り越しているのだろう。



『とにかく()()()だけは守らなければならん。博士だけでも離脱しろ』


「ですが――」


『行け、時間はない!』


「――っ、ご武運を!」



 アリアは手元のスイッチを何個か切り替える。

 周囲のモニターやコンソールに淡い光が走り、高周波音が鼓動のように高鳴ってその光を強めていく。


 そうして照らし出されたのは、()()()だった。

 アリアは何かのコクピットの中に身を隠していた。



「起動シーケンス3番から6番までを省略、セーフティ解除・エネルギー出力戦闘モード、武装へのエネルギー供給をカット――」



 アリアは何かをぶつぶつと唱えながらコンソールを操作する。指先は震えているが、操作パネルを叩く手つきに迷いはない。



「出力安定、Os.Ps(オプス)クロークフルアクティブ」



 最後に完了のキーを強く叩くと、鋼鉄の巨躯はまるで蜃気楼のように姿を消す。

 アリアはすぐに深くシートに腰掛けハーネスを締める。自動調節機能でシートが変形し、アリアの身体を包み込むように固定した。



「リンク率68%、操縦に支障なし」



 首筋に装着している信号伝達デバイスが、アリアの神経と機体の中枢回路をリンクさせる。

 神経がぐんぐんと拡張されて、まるで自分の身体が巨大化していくような感覚があった。


 やがて感覚の巨大化が止まりリンクは完了する。

 機体は手綱を完全に操縦者に預け、命令を今か今かと待ちわびている。



 「A04-X、発進します――」



 アリアが大きくペダルを踏み込んだ、その瞬間。

 アリアの視界は一瞬にして、満天の星に移り変わった。



「――高度230m…?今の体当たりで?」



 格納庫を突破するだけのつもりだった。

 それなのに機体はやすやすと、特殊合金製の壁をぶち抜いて夜空を高く舞った。

 研究所は遥か下方で豆粒のように小さくなっている。



「――っ、こんなの仕様にない。調整しないと……」



 アリアはまるで空中でもがくようにペダルとレバーを動かし、滞空中に見つけた平たい丘への着地を試みる。

 機体は重力に従ってどんどんと加速していき、ものすごい勢いで地面へと墜ちている。


 それはやがて流れ星と言っていいほどの勢いで着弾した。

 砂埃で視界がなくなるほどの激しい風圧。それなのに、不自然なほど衝撃音は小さい。


 砂埃が晴れた地面には、クレーターのような大きな凹みが出来ていた。



「分かっていても、やっぱり慣れないですね……」



 機体には最新の落下衝撃減衰システムが搭載されていて、コクピットや機体構造に衝撃は少しも伝わらない。それと落下の恐怖は別問題だが。



「エネルギー残量、49%。どこかで回復しないと……」



 クロークは動力の波長すら遮断できるほどの隠蔽力を持っているが、甚大な消費エネルギーがかかる。

 しかし襲撃者がどこかで監視している可能性を考えると、クロークを解除することはできない。

 

 不安と緊張、ストレスとパニックで、アリアの脳内はこれまでにないほどぐちゃぐちゃになっていた。

 アドレナリンはとっくに切れて、頭の血の気が引き始めている。


 現状を切り抜ける方法、身を隠せる場所、今後の身の振り方、考えなければならないことはたくさんあるはずなのに、何一つ思考が回らなかった。


 アリアはとある名前を唯一、無意識に口にした。



「悠司…」



 それは幼馴染の名前だった。今なおアリアが抱き続ける、大切な()()を交わした――


 口にしてからは自然に、アリアの進路はある場所に定まっていた。



 アリアからすれば五年ぶりだが、


 彼にとっては変わらないあの街へ――

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