第76話 最終裁定
国家審査の議場。
かつて制度を決めた場所。
そして今。
制度の是非が裁かれる場所。
すべての貴族。
すべての官吏。
そして。
王太子アルベルト。
全員が揃っていた。
「開始する」
静かな声。
だが議場を支配する。
私は中央に立つ。
向かいには。
宰相ローデリック。
黒い外套。
揺るがない表情。
だが。
今日は違う。
私は言う。
「制度に対する妨害」
沈黙。
「そして」
言葉を区切る。
「国家反逆の疑いについて」
議場がざわめく。
宰相は微動だにしない。
「証拠を提示します」
私は手を上げる。
ルーカスが前に出る。
大量の記録。
「各地方での暴動」
「発生時刻」
「関与人物」
紙が並ぶ。
「すべて同時期」
「すべて暫定裁定に合わせて発生」
ざわめき。
私は続ける。
「そして」
一枚の紙を掲げる。
「共通点があります」
沈黙。
「関与した人物は」
紙を示す。
「すべて中央任命の役人」
空気が凍る。
貴族たちがざわめく。
宰相の側近たち。
私は言う。
「命令系統を追いました」
ルーカスが別の書類を出す。
「最終命令者」
沈黙。
私は宰相を見る。
「ローデリック宰相」
議場が揺れた。
「証拠は」
宰相が初めて口を開く。
冷静。
だがわずかに鋭い。
私は頷く。
「あります」
ルーカスが最後の書類を出す。
「暗号文書」
「解読済み」
紙が開かれる。
そこには。
明確に書かれていた。
『制度失敗を誘導せよ』
沈黙。
完全な沈黙。
宰相は黙っている。
逃げない。
だが。
否定もしない。
私は言う。
「さらに」
声を落とす。
「エリオナ事件」
空気が変わる。
「断罪制度による冤罪」
「その裏にも」
紙を示す。
「あなたが関与していました」
議場が凍る。
エリオナが静かに立つ。
「証言します」
彼女は言う。
「あの断罪は」
短く。
「政治粛清でした」
ざわめき。
王太子が静かに言う。
「宰相」
沈黙。
ローデリックはゆっくりと顔を上げた。
「事実だ」
議場が揺れる。
あまりにもあっさりと。
「なぜ」
王太子の声。
ローデリックは言う。
「秩序のためです」
沈黙。
「国家は」
静かな声。
「理想では回らない」
かつての言葉と同じ。
「冤罪は必要悪」
私は言う。
「違います」
沈黙。
「それは」
一歩前に出る。
「制度の失敗です」
ローデリックは笑う。
「理想論だ」
「違います」
私は言う。
「記録があります」
議場が静まる。
「証拠が残る」
「再検証できる」
「誤りを正せる」
一つずつ。
言葉を置く。
「それが制度です」
沈黙。
私は最後に言う。
「人を犠牲にする秩序は」
短い間。
「秩序ではありません」
完全な静寂。
王太子が立つ。
「最終裁定を下す」
誰も動かない。
「ローデリック宰相」
沈黙。
「国家反逆罪」
短い言葉。
「有罪」
議場が揺れる。
「拘束」
マルクが動く。
剣ではなく。
手で。
宰相を押さえる。
ローデリックは抵抗しない。
ただ。
私を見る。
「面白い制度だ」
静かな声。
「だが」
少し笑う。
「守れるか」
私は答える。
「守ります」
彼は何も言わない。
連行される。
議場に静寂が戻る。
王太子が言う。
「制度は」
短く。
「有効であると認める」
そして。
「王国裁定院の設立を宣言する」
ざわめき。
新しい制度。
完成。
私は静かに立っていた。
終わった。
すべてが。
そして。
新しい時代が始まる。
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