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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第65話 消された証拠

 議場の空気は重かった。


 王国史上初の国家審理。


 そして今、全員の視線が一人に集まっている。


 エリオナ・クラウス。


 十年前、反逆罪で断罪された女。


 王太子が静かに言う。


「証言を許可する」


 エリオナはゆっくりと立ち上がった。


 黒い外套が揺れる。


 彼女の顔は驚くほど静かだった。


「十年前」


 その声は落ち着いている。


「私は反逆罪で断罪された」


 議場は静まり返る。


「罪状は国家転覆計画」


「証拠は三つ」


 彼女は指を一本立てる。


「密書」


 もう一本。


「資金記録」


 そして三本目。


「共犯者の証言」


 貴族たちが小さく頷く。


 断罪の典型的構造。


 エリオナは言う。


「だが」


 沈黙。


「その三つはすべて作られた」


 議場がざわめく。


 侯爵が言う。


「証拠を出せ」


 エリオナは笑わない。


「出せない」


 沈黙。


「証拠は消された」


 当然のように言う。


 侯爵が冷たく言う。


「ならば証明できない」


「そう」


 彼女は頷く。


「それが断罪」


 議場が静まる。


「断罪は速い」


 エリオナは続ける。


「だから」


 机に指を置く。


「検証がない」


 沈黙。


「裁きは終わる」


「記録は閉じる」


「証拠は消える」


 誰も反論しない。


 彼女は言う。


「私は三日で裁かれた」


 短い言葉。


「三日で人生が終わった」


 議場が静まり返る。


 王太子が問う。


「共犯者証言とは」


 エリオナは少し考える。


「使用人」


 沈黙。


「彼女は」


 短く言う。


「妹を人質に取られていた」


 ざわめき。


 侯爵が言う。


「証明は」


「ない」


 エリオナは言う。


「彼女は消えた」


 沈黙。


 十年前。


 断罪の後。


 関係者は消える。


 それは珍しくない。


 エリオナは私を見る。


「あなたは制度を変えたい」


「はい」


 私は答える。


「だが」


 彼女は続ける。


「覚えておきなさい」


 沈黙。


「制度は人を守らない」


 その声は静かだった。


「守るのは」


 指を机に置く。


「記録」


 議場が静まる。


「記録があれば」


「後から戦える」


 彼女は続ける。


「私にはなかった」


 沈黙。


「だから」


 彼女は私を見る。


「あなたの制度は正しい」


 ざわめき。


 だが。


 彼女は続ける。


「ただし」


 その声は冷たい。


「遅すぎる」


 沈黙。


「十年前の私は救えない」


 その言葉は重かった。


 私は答える。


「それでも」


 沈黙。


「次の十年を変えます」


 エリオナはしばらく私を見ていた。


 やがて小さく笑う。


「理想家ね」


 そして席に座る。


 議場は静まり返っている。


 侯爵が言う。


「証明はない」


「だが」


 王太子が静かに言う。


「疑念はある」


 沈黙。


 国家審理は続く。


 だが。


 今この瞬間。


 王国の断罪制度に、初めて影が落ちた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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