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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第62話 断罪された女

 議会棟の廊下は、静まり返っていた。


 普段なら貴族の話し声が響く場所だが、今日は違う。


 皆、様子を見ている。


 制度の審査。

 過去断罪の再調査。


 王国の根が揺れている。


 マルクが扉を開けた。


「入れ」


 中は小さな会議室だった。


 窓際に、一人の女が立っている。


 黒い外套。


 背筋の伸びた姿。


 振り返ったその顔は、落ち着きすぎていた。


 怒りも、悲しみも見えない。


「久しぶりね」


 静かな声。


「リリアーナ・エルフェルト」


 私は一瞬、言葉を失う。


「……エリオナ・クラウス」


 十年前。


 王都最大の断罪事件。


 侯爵家令嬢。


 国家反逆罪で断罪。


 だが後に。


 証拠の一部が不自然だったと噂された。


 彼女は椅子に座る。


「思ったより若い」


 私は向かいに座る。


 マルクは壁際。


 セシルも来ている。


「あなたの制度」


 エリオナが言う。


「面白い」


 感情のない声。


「だが」


 視線が鋭くなる。


「甘い」


 私は黙る。


 彼女は続ける。


「断罪は秩序装置」


「そう聞きました」


「違う」


 短く言う。


「断罪は“恐怖装置”」


 沈黙。


「秩序は恐怖で保たれる」


 セシルが眉を動かす。


「それは極端です」


 エリオナは笑わない。


「十年前、私は反逆者だった」


「だが」


「証拠は作られた」


 空気が凍る。


 私は言う。


「それは確認されていません」


「当然」


 彼女は肩をすくめる。


「記録は消された」


 沈黙。


「あなたは制度を変えたい」


「はい」


「理由は?」


 私は答える。


「冤罪を防ぐため」


 エリオナは初めて笑った。


 冷たい笑み。


「違う」


 短い否定。


「あなたは」


 指が机を叩く。


「まだ信じている」


 沈黙。


「王国を」


 私は言葉を探す。


 エリオナは続ける。


「私はもう信じていない」


 その声には怒りがない。


 ただの事実。


「制度は人を守らない」


「だから変えます」


 私は答える。


 彼女は首を傾ける。


「あなたは守られている」


 その言葉が刺さる。


「騎士団長がいる」


 マルクを見る。


「若手貴族がいる」


 セシルを見る。


「支持者がいる」


 私を見る。


「私は一人だった」


 沈黙。


 十年前。


 断罪された令嬢。


 誰も立たなかった。


 エリオナは言う。


「だから聞きたい」


 視線が鋭くなる。


「あなたの制度は」


 机に指を置く。


「孤独な人間を守れる?」


 言葉が出ない。


 セシルも黙る。


 マルクも。


 エリオナは立ち上がる。


「答えが出たら呼びなさい」


 外套を翻す。


 扉の前で止まり、振り返る。


「もしできるなら」


 その声は静かだった。


「十年前の私を救ってみせて」


 扉が閉まる。


 部屋に沈黙が残る。


 私は机を見る。


 制度設計の紙。


 理想。


 記録。


 だが。


 エリオナの問いは重い。


 制度は。


 本当に。


 孤独な人間を守れるのか。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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