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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第54話 防げなかった罪

 報告が届いたのは、夜明け前だった。


 修道領の廊下を走る足音で、私は目を覚ました。


「緊急報告です!」


 扉が叩かれる。


 私はすぐに開けた。


 修道士が息を切らしている。


「アルメル地区の商会……」


 胸が、嫌な予感で冷える。


「公開審査で業務停止処分になった経理担当が——」


 言葉が詰まる。


「再犯しました」


 空気が止まる。


「横領です」

「しかも今度は、逃亡しています」


 数秒、私は言葉を失った。


 あの案件。


 第51話の審査。


 軽処分と改善命令で終わった件。


「被害額は」


「前回の三倍」


 胸が重くなる。


 セシルが静かに言う。


「……最悪のタイミングです」


 マルクが低く呟く。


「来たな」


 アデルが立ち上がる。


「そんな……」


 彼女の顔が青い。


 私は報告書を読む。


 逃亡経路。

 被害者。

 被害総額。


 そして。


 市場の反応。


『断罪なら防げた』


 その一文が、紙の上で重く沈んでいた。


 その日の昼。


 王都南区で群衆が集まり始める。


「見ろ!」

「これが改革の結果だ!」


 怒号。


「断罪ならあの男は牢だった!」


 その通りだ。


 制度は間違えた。


 私は議場で黙って立っている。


 ミレイアが震える声で言う。


「……私たちが、甘かったんでしょうか」


 誰もすぐには答えない。


 セシルが静かに言う。


「制度に失敗はある」


「でも」


 ミレイアは涙を堪える。


「被害者は制度の実験台じゃない」


 その言葉は正しい。


 だからこそ重い。


 私は静かに言う。


「私の責任です」


 空気が止まる。


 アデルが顔を上げる。


「違います!」


「いいえ」


 私は続ける。


「制度を作ったのは私です」


 マルクが言う。


「それを言うな」


「言います」


 私は真っ直ぐ答える。


「責任を分散する制度でも、責任は消えません」


 沈黙。


 そのとき、外から怒号が聞こえる。


「悪役令嬢を出せ!」


 石が建物に当たる音。


 窓が震える。


 ミレイアが小さく言う。


「……断罪なら」


 言葉が止まる。


 私は続きを言う。


「終わっていました」


 その通り。


 断罪は速い。


 制度は遅い。


 その差が、被害を生んだ。


 マルクが窓を見る。


「暴動になる」


 私は深く息を吸う。


 失敗した。


 制度は、最初の大きな傷を負った。


 だが。


 それでも。


「逃げません」


 私は言う。


 外の怒号は強くなる。


「責任を取れ!」


 石が再び飛ぶ。


 マルクが言う。


「ここからが本番だ」


「ええ」


 私は静かに頷く。


 制度は、初めて人を守れなかった。


 だからこそ。


 ここで逃げれば、本当に終わる。


 悪役令嬢は、生贄だった。


 だが今は違う。


 失敗も、記録する。


 群衆の怒りは強い。


 そして。


 その怒りは、すぐに王都全体へ広がる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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