第52話 模倣の連鎖
アルメル地区の公開審査から一週間。
王都東区でも、同様の審査が行われた。
今度は若手子爵が主導。
断罪は行われなかった。
結果は軽処分と改善命令。
暴動は起きない。
不満はあるが、爆発しない。
報告が次々と修道領に届く。
「西部でも模倣例が出ました」
「地方都市アレンツで試験導入」
アデルが地図を広げる。
「広がっています」
その声には、確かな高揚があった。
セシルが冷静に言う。
「支持声明も増えています」
若手貴族連盟が、公式に一文を出した。
『公開審査制度の試験導入を支持する』
王都で噂が変わり始める。
——断罪しなくても回るらしい。
——説明がある方が安心だ。
完全な信頼ではない。
だが、“別の選択肢”が見え始めた。
王城。
王太子は報告書を読んでいた。
「北西、東区、地方一例」
側近が言う。
「暴動は沈静化傾向」
「支持率は」
「微増です」
王太子は静かに頷く。
「侯爵は動いているか」
「沈黙しています」
それが不気味だった。
同じ頃、修道領。
ミレイアが再び訪れていた。
「次の案件を任せてください」
目が輝いている。
「どんな内容ですか」
「領地税の不正疑惑」
重い。
商会よりも影響が大きい。
「準備は」
「整っています」
即答。
若さが、勢いを持つ。
私は少し考える。
止めるべきか。
任せるべきか。
「一部、こちらで補佐します」
ミレイアは頷く。
「必ず成功させます」
その言葉に、わずかな不安がよぎる。
“必ず”。
制度に絶対はない。
夜。
私は一人で記録を整理していた。
マルクが入ってくる。
「順調だな」
「表面上は」
「何が気になる」
私は紙を指でなぞる。
「成功が続きすぎています」
マルクが眉を動かす。
「悪いことか」
「嵐の前は静かです」
沈黙。
「侯爵は?」
「動いていない」
「それが怖い」
マルクは腕を組む。
「重い案件が来るな」
「ええ」
そのとき、扉が叩かれる。
急報。
「東区で税領主の件、民衆が集まり始めています!」
空気が変わる。
「審査はまだ始まっていないのに?」
「告発内容が先に広まりました!」
私は目を閉じる。
重い案件。
税。
生活に直結。
感情が爆発しやすい。
ミレイアはまだ若い。
準備は十分か。
嵐は、静かに来る。
成功が続いた。
だからこそ。
次は、失敗が来る。
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