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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第49話 煽られる不安

 王都の市場で、最初の石が投げられたのは夕刻だった。


「誰が責任を取るんだ!」


 叫び声が上がる。


 噂は、すでに流れていた。


 ——王家は断罪を弱めるらしい。

 ——悪役令嬢が制度を壊す。

 ——罰がなくなる。


 不安は、形を求める。


 数日後、修道領に報告が届く。


「王都南区で小規模衝突」

「若手貴族邸宅に抗議」


 アデルが机を握る。


「……始まりました」


 私は報告書を静かに読む。


 規模は小さい。


 だが、広がれば危険だ。


「扇動の痕跡は」


 セシルが問う。


「あります」


 私は紙を示す。


 同じ文言の貼り紙。

 同じ語尾。


 自然発生ではない。


「侯爵か」


 マルクが低く言う。


「直接ではないでしょう」


 私は答える。


「だが、止める気もない」


 沈黙。


「どうする」


 問いは重い。


 断罪を止めた結果、暴動。


 これこそ保守派の論拠。


 私はゆっくり言う。


「代替制度の一部を前倒し実行します」


 アデルが顔を上げる。


「まだ骨子段階です」


「ええ」


「失敗すれば」


「失敗します」


 全員が息を止める。


「ですが」


 私は続ける。


「今示さなければ、“断罪が必要だった”と証明される」


 マルクが険しい顔をする。


「暴動が拡大したら」


「鎮圧は騎士団の役目です」


「……俺を使う気か」


「ええ」


 視線がぶつかる。


「あなたは秩序側です」


「お前は?」


「変革側です」


 静かな衝突。


「だが」


 私は一歩近づく。


「同じ国の中にいます」


 沈黙。


 マルクが息を吐く。


「王都へ行く」


「はい」


「危険だ」


「知っています」


「巻き込まれるな」


「並びます」


 短い言葉。


 だが、重い。


 その夜、王都。


 若手貴族の屋敷が取り囲まれていた。


「責任を取れ!」


 怒号。


 セシルは門前で立つ。


 震えていない。


 だが、一人では持たない。


 そこへ。


 騎士団が到着する。


 先頭にマルク。


「解散しろ」


 低い声が響く。


「秩序を乱すな」


 群衆がざわめく。


「断罪を戻せ!」


「悪役令嬢を追放しろ!」


 そのとき。


 もう一台の馬車が止まる。


 私は降りる。


 群衆がどよめく。


「本人だ!」


 石が飛ぶ。


 マルクが前に出る。


「下がれ」


「いいえ」


 私は一歩出る。


 石が足元に落ちる。


「責任者を求めているのですね」


 声を張らない。


 だが通る。


「私がここにいます」


 群衆が一瞬、静まる。


「断罪を戻せ!」


 叫びが上がる。


「戻しません」


 私は言い切る。


 ざわめきが波のように広がる。


「ですが」


 私は続ける。


「責任の所在は公開します」


「嘘だ!」


「三日以内に暫定審査を開始します」

「公開で」


 セシルが息を呑む。


 前倒し。


 群衆が揺れる。


「見せしめはしません」

「ですが、記録と審査はします」


 沈黙。


 怒号は完全には消えない。


 だが。


 爆発は止まった。


 マルクが低く言う。


「無茶だ」


「ええ」


「失敗したら」


「断罪されます」


 私は静かに言う。


「それでも」


 群衆の奥で、誰かが言った。


「……公開なら、見る」


 小さな声。


 だが確かだ。


 不安は形を求める。


 断罪ではなく、透明で。


 それが通じるか。


 王国の秩序が、揺れている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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