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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第48話 代替装置

 修道領に戻ったその夜、灯りは消えなかった。


 机の上には紙が山積みになり、記録が広げられている。


「断罪は“即時収束装置”」


 セシルが言う。


「民衆の不安を一点に集める」


「ならば代替は」


 私は言う。


「不安を分散し、継続処理する仕組み」


 アデルが書き留める。


「再審機関設置」

「段階責任制度」

「公開議事録義務化」


 だが。


「それでは遅い」


 低い声が割り込む。


 マルクだ。


「暴動は“即時”に起きる」


 沈黙。


「記録は効く」

「だが時間がかかる」


 私は顔を上げる。


「では、あなたの案は」


「鎮圧力の保持」


 即答。


「秩序は理念だけでは守れない」


 空気が重くなる。


「断罪は残すべきだ」


 アデルが立ち上がる。


「それでは意味がありません!」


「感情論だ」


 マルクは冷静だ。


「民衆は怒る」

「怒りの出口がなければ暴発する」


 私は静かに問う。


「つまり、生贄は必要だと?」


「そうは言っていない」


 だが、近い。


 セシルが口を挟む。


「暴動統計を出します」


 彼は資料を広げる。


「断罪が行われた年と、未実施年の比較」


 数字が並ぶ。


「……確かに、短期収束効果はある」


 私は黙る。


 侯爵の論は正しかった。


 断罪は効率的だ。


「だが長期的信頼は下がっている」


 セシルが続ける。


「断罪回数が増えるほど、王家支持率は低下」


 マルクが腕を組む。


「だからどうする」


 私は、ゆっくりと言う。


「二段構えにします」


 全員が見る。


「第一段階:公開審査」

「第二段階:暫定責任分散」

「第三段階:最終裁定」


「即時断罪は廃止」

「だが“暫定処理”は設ける」


 マルクの目がわずかに動く。


「暴動対策は?」


「透明で代替する」


「理想だ」


「はい」


 私は真っ直ぐ見る。


「でも、生贄よりはましです」


 沈黙。


「失敗すれば」


 マルクの声は低い。


「お前が断罪される」


「知っています」


「それでもやるのか」


「はい」


 即答。


 空気が張る。


「……俺は」


 マルクが言葉を選ぶ。


「お前が潰れる制度は認めない」


 胸が強く鳴る。


「潰れません」


「保証はない」


「保証がある改革はありません」


 沈黙。


 彼は一歩近づく。


「俺は騎士だ」

「秩序側だ」


 私はうなずく。


「だからこそ、隣にいてください」


 視線がぶつかる。


「支えるだけでは足りない」


「ええ」


「止めることもある」


「止められたら、止まります」


 嘘はない。


 長い沈黙。


 やがて。


「……なら」


 彼は低く言う。


「最後まで一緒に落ちる」


 それは甘い言葉ではない。


 覚悟だった。


 私は小さく笑う。


「落ちません」


「落ちたら引き上げる」


 短い会話。


 だが深い。


 アデルが小さく言う。


「……恋愛している場合ですか」


 私は少し赤くなる。


「していません」


 セシルが静かに言う。


「制度設計が進みました」


 机の上には、骨子ができている。


 代替装置。


 断罪の代わり。


 それは未完成だ。


 だが。


 悪役令嬢は、処理される存在ではない。


 制度を作る存在になった。


 夜が更ける。


 王国の秩序が揺れる。


 そして。


 時間は、刻々と減っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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