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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第46話 断罪の本当の役目

 公開審理の日。


 議場は満員だった。


 断罪が「議論」として行われるのは異例だ。


 中央にアデル。


 その隣に私。


 向かいにレヴァン侯爵。


「アデル・フォン・リース」


 侯爵が読み上げる。


「王家権威の毀損および思想扇動の疑いにより、審理を行う」


 静まり返る議場。


 アデルは前を向いたまま、震えていない。


「あなたは公開討論において、“怒りを制度に変える”と発言した」


「はい」


 迷いなく答える。


「それは断罪制度の否定ではないのか」


「否定ではありません」


 アデルははっきり言う。


「再発防止の提案です」


 ざわめき。


 侯爵は視線を私に向ける。


「リリアーナ・エルフェルト」


「はい」


「あなたはこの思想の中心人物だ」


「否定しません」


「断罪を弱体化させる意図はあるか」


 私は、数秒だけ黙った。


 そして言う。


「断罪の“乱用”を防ぐ意図はあります」


 侯爵の目がわずかに細まる。


「乱用?」


「はい」


 私は議場を見渡す。


「断罪は責任を一人に集約する装置です」


 セシルが後方で小さく頷く。


「ですが、それが便利であるがゆえに」


 言葉を選ぶ。


「本来の責任所在を隠す機能も持つ」


 空気が変わる。


 侯爵は静かに言う。


「断罪がなければ、何が起きると思う」


「議論が必要になります」


「違う」


 侯爵の声が低くなる。


「王国は崩壊する」


 ざわめき。


「断罪は、秩序維持装置だ」

「責任を迅速に処理し、不安を収束させる」


 彼の声に、感情はない。


 ただの事実として語られる。


「かつて、断罪が行われなかった年があった」


 議場が静まる。


「王都は暴動寸前だった」


 私は初めて、その情報を聞く。


「民は“誰が悪いのか”を求める」

「貴族は“誰かが罰せられること”を望む」


 侯爵は私を真っ直ぐ見る。


「悪役令嬢は、その役目を担ってきた」


 空気が凍る。


 アデルの手が震える。


「……生贄、ということですか」


 彼女の声はかすれている。


「言い換えれば」


 侯爵は否定しない。


「王国の安定のための装置だ」


 議場が重く沈む。


 私は、ゆっくりと息を吐いた。


 これが——本当の目的。


 思想弾圧ではない。


 秩序維持。


「あなたはそれを壊そうとしている」


 侯爵の声は静かだ。


「代替装置を示せない限り、断罪は必要だ」


 論理だ。


 感情ではない。


 私は、一歩前に出る。


「ならば示します」


 議場がざわめく。


「断罪は“終わらせる制度”です」

「不安を収束させるために」


 私は続ける。


「ならば、終わらせなくても収束させる方法を」


 侯爵の目がわずかに揺れる。


「記録公開」

「責任の段階分散」

「再審制度の設置」


 セシルが息を呑む。


 これは彼の提案を含む。


「不安は“罰”ではなく“透明”で抑えられる」


 沈黙。


 侯爵はしばらく黙った。


「理想論だ」


「ええ」


 私は認める。


「ですが、悪役令嬢という生贄よりはましです」


 議場が凍る。


 王太子が、初めて口を開いた。


「続けよ」


 侯爵はゆっくりと言う。


「代替装置を提示できなければ」


 視線が鋭くなる。


「この審理は断罪で終わる」


 条件提示。


 私は頷く。


「受けて立ちます」


 アデルが小さく息を吸う。


 これは思想戦。


 悪役令嬢は、秩序装置だった。


 ならば。


 その役目を終わらせる方法を、示すしかない。


 議場の空気が、重く張り詰める。


 物語は、断罪の核心に触れた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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