第45話 再びの告発
召喚状は、朝一番で届いた。
王都議会の正式印。
宛名は——
アデル・フォン・リース。
修道領内が静まり返る。
「罪状は?」
マルクが低く問う。
私は封を開き、目を通す。
『王家権威の毀損』
『思想扇動』
『若手貴族への不当影響』
アデルは、書状を奪うようにして読む。
「……予想通りですね」
声は震えていない。
だが、拳が白くなるほど握られている。
「公開討論での発言が問題視されています」
セシルが冷静に分析する。
「特に、“怒りを制度に変える”という部分」
私は、ゆっくりと息を吐く。
「目的は、見せしめです」
「私を潰して、ネットワークを萎縮させる」
アデルが言う。
正しい。
彼女は理解している。
「出頭します」
彼女は即座に言った。
「当然です」
その横顔は、強い。
だが。
「一人で行くつもりですか」
私は静かに問う。
アデルが顔を上げる。
「……私の問題です」
「違います」
即答した。
「制度の問題です」
沈黙。
マルクが口を開く。
「罠だ」
「ええ」
私は頷く。
「ですが、逃げれば“危険思想”が確定します」
セシルが言う。
「出頭は必要です。ただし、単独ではない」
「どういうことですか」
アデルが問う。
「公開審理を要求しましょう」
場が静まる。
「密室ではなく、議場で」
私は続ける。
「記録付きで」
アデルの目が揺れる。
「……それは」
「怖いですか」
私は穏やかに問う。
数秒の沈黙。
「怖いです」
正直な答え。
「でも」
彼女は顔を上げる。
「逃げません」
私は、ゆっくり頷く。
「ならば、今回は私が隣に立ちます」
アデルが息を呑む。
「それでは、あなたまで」
「既に標的です」
私は淡々と言う。
「違いはありません」
マルクがこちらを見る。
「危険だ」
「知っています」
「守れとは言わない」
彼は低く言う。
「だが、無理はするな」
私は小さく笑う。
「並びます」
それだけでいい。
夜。
アデルは一人で座っていた。
私は隣に腰を下ろす。
「後悔していますか」
「いいえ」
彼女は即答する。
「怒りを飲み込まなくてよかった」
私は静かに頷く。
「断罪は、怖いものです」
「知っています」
「それでも、今回は違います」
アデルは私を見る。
「なぜですか」
「あなたは、物語の中にいないから」
彼女の目が揺れる。
「断罪は、物語を作る制度です」
「悪役を決め、終わらせる」
私は続ける。
「でも今回は、記録がある」
透明が武器になる。
翌日。
王都に向かう馬車の中。
アデルは前を向いている。
私は隣にいる。
マルクは護衛として後ろ。
セシルは別経路で動く。
レヴァン侯爵は議場で待つ。
これは見せしめの断罪。
だが。
悪役令嬢は、もう一人ではない。
物語は、再び断罪席へ向かう。
しかし今回は——
終わらない。
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