第41話 公開の場
王都の議会場は、思ったよりも明るかった。
断罪が行われた広間とは違う。
ここは処刑場ではなく、討論の場だ。
私は修道領代表として立つ。
隣にはアデル。
数歩後ろにマルク。
そして正面には、保守派侯爵レヴァン。
「悪役令嬢研修とは何か」
彼は開口一番、そう問う。
「断罪された令嬢を集め、制度設計を教えるなど、前例がない」
視線が集まる。
好奇と、警戒と、嘲笑。
私は一歩前に出る。
「前例がないのは事実です」
静かに言う。
「ですが、断罪が繰り返されてきた前例はあります」
場がわずかにざわつく。
「我々は復讐を教えていません」
「反逆も教えていません」
資料を掲げる。
「教えているのは、記録と責任の所在です」
レヴァンが眉をひそめる。
「責任は断罪された者が負うものだ」
「なぜですか」
私は即座に返す。
議場が静まる。
「断罪が正しいなら、記録は公開できます」
「判断が適切なら、検証を恐れる必要はありません」
数名の若手貴族が顔を上げる。
レヴァンは声を強める。
「王家の権威を疑うのか」
「疑っていません」
私は首を振る。
「強くする方法を提案しています」
沈黙。
「断罪は物語を終わらせる制度です」
「でも、国は物語ではありません」
言葉が、静かに落ちる。
「制度が個人を処理するのではなく」
「制度が個人を活かす形に変える」
アデルが隣で息を呑む。
私は続ける。
「悪役令嬢は、失敗例ではありません」
「検証例です」
議場が揺れる。
レヴァンは机を叩いた。
「危険だ!」
「断罪が弱まれば秩序が崩れる!」
その瞬間。
「崩れません」
低い声が響く。
マルクだ。
議場の視線が集まる。
「私は騎士団長として断言する」
「秩序は恐怖で保つものではない」
ざわめき。
王太子が、静かに口を開く。
「続けよ」
私は、深く息を吸う。
「断罪をやめろとは言いません」
「ただ、記録を残し、再発防止策を持てと言っているだけです」
アデルが、前に出る。
震えながらも声を出す。
「私は、断罪されました」
「ですが、今は学んでいます」
視線が彼女に集まる。
「怒りはあります」
「でも、それを制度に変えたい」
議場の空気が変わる。
レヴァンは沈黙する。
勝ち負けではない。
議論が成立した。
それだけで、十分だった。
会議が終わり、外へ出る。
張り詰めていた空気が緩む。
「……よく言ったな」
マルクが低く言う。
「震えていました」
「見てた」
私は少し笑う。
「倒れたら、支えてくれましたか」
「当然だ」
即答。
その一言で、肩の力が抜ける。
「怖かったです」
正直に言う。
「でも、逃げませんでした」
「知ってる」
短い返事。
その距離が、心地いい。
王都の空は広い。
悪役令嬢は、公開の場で語った。
断罪は、もう物語の終わりではない。
始まりにできる。
その一歩を、踏み出した。
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