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断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


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第40話 危険思想

 王都で最初にその言葉を口にしたのは、侯爵レヴァンだった。


「危険思想です」


 重厚な会議室の中央で、彼は断言する。


「断罪された令嬢を集め、制度設計を学ばせている」


 報告書が机に置かれる。


「これは教育ではない。組織化です」


 数名の貴族が頷く。


「悪役令嬢を“再利用”するなど前例がない」

「秩序を乱す恐れがある」


 王太子は黙って報告を読んでいた。


「何が問題だ」


 静かな問い。


 レヴァン侯爵は一瞬詰まり、すぐに言葉を整える。


「断罪は、王家の権威の象徴です」

「それを“制度の誤作動”のように扱うのは危険です」


 つまり。


 間違いがあったと認めることになる。


「彼女は、断罪文化を否定している」


 会議室に、静かな緊張が走る。


 王太子は顔を上げる。


「否定しているか?」


「少なくとも、弱体化させています」


 沈黙。


 やがて王太子は低く言う。


「断罪がなくなれば困るのか」


 誰も即答しない。


 それが答えだった。


 ――断罪は便利だ。


 責任を一人に集め、秩序を保つ。


「彼女は、秩序を壊す存在です」


 レヴァンは言い切る。


「今のうちに制限すべきです」


 同じ頃、修道領。


 アデルは机を叩いた。


「王都で問題視されているそうです!」


 怒りが隠せない。


「やはり恐れているのです!」


 私は、静かに書類を閉じる。


「予想通りです」


「あなたは悔しくないのですか!」


 アデルは立ち上がる。


「再び“危険”と呼ばれているのですよ!」


 私は、ゆっくりと彼女を見る。


「怖がられているのは、私ではありません」


「では何が」


「変化です」


 アデルが言葉を失う。


「断罪は、単純です」

「悪役を決め、物語を終わらせる」


 私は立ち上がる。


「でも、私たちは終わらない」


 沈黙。


「だから、怖いのです」


 マルクが腕を組んで言う。


「どうする」


 私は、少し考えた。


 隠れるか。

 挑発するか。


 どちらでもない。


「公開します」


 アデルが目を見開く。


「何を」


「研修内容を」


 制度設計の記録。

 議論の内容。

 失敗例も含めて。


「透明にすれば、陰謀ではなくなります」


 マルクが低く笑う。


「正面から行くか」


「ええ」


 アデルはまだ怒っている。


「それで止まりますか?」


「止まりません」


 私は言う。


「でも、支持者は増えます」


 その瞬間。


 修道士が駆け込んできた。


「王都から正式文書です!」


 封蝋には王家の紋章。


 私は開封する。


『悪役令嬢研修の実態について説明を求める』


 来た。


 逃げ道はない。


 アデルが息を呑む。


「……潰されますか」


 私は、ゆっくりと笑った。


「いいえ」


 視線を上げる。


「議会で話します」


 悪役令嬢が。


 公開の場で。


 制度を語る。


 それは、断罪よりもずっと危険だ。


 春の風が強く吹く。


 物語は、個人の恋を越えた。


 今度は、思想の戦いだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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