表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢ですが、追放先の辺境で静かに有能さがバレていきます ~誰にも褒められない仕事をしていたら、気づけば居場所ができていました~  作者: すずり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/79

第36話 選ぶということ

 隣国への返書を送り終えた翌日。


 修道領は、驚くほど静かだった。


 何も起きていない。

 誰も騒がない。

 世界は、私の選択に拍手もしない。


 それでいい。


 私は、倉庫の裏で薪を運んでいた。


「重いぞ」


 横から、声がかかる。


「平気です」


 マルクは、何も言わず、私の持っていた薪を半分奪う。


「分担だ」


 いつも通りのやり取り。


 その当たり前が、胸に沁みる。


 しばらく無言で歩き、薪を置く。


 私は、ふと立ち止まった。


「昨日のことですが」


「隣国か」


「はい」


「後悔してないか」


 私は、首を振る。


「していません」


 それは、本心だった。


「……でも」


 言葉が、喉で止まる。


 ここまで来て、逃げるのは卑怯だ。


 私は、息を吸う。


「残った理由は、一つではありません」


 マルクは、黙って聞いている。


「責任もあります」

「覚悟もあります」

「居場所もあります」


 そして。


「あなたも、います」


 空気が、止まる。


 マルクの手が、わずかに止まった。


 私は、逃げない。


「隣国に行けば、私は評価され続けたでしょう」

「王国に戻れば、役割を与えられたでしょう」


 でも。


「ここでは、私は“私”でいられる」


 一歩、近づく。


「その隣に、あなたがいることが」


 胸が鳴る。


「私の選択に、影響しなかったとは言えません」


 沈黙。


 風の音だけが、流れる。


 マルクは、しばらく何も言わなかった。


 やがて、低く息を吐く。


「……それは」


 声が、少し掠れる。


「俺が、お前を縛ったという意味か」


「違います」


 即答だった。


「私が、あなたを選んだという意味です」


 はっきりと言う。


 逃げない。

 濁さない。


「守られたいわけではありません」

「支えられたいだけでもありません」


 私は、真っ直ぐ見る。


「並びたいんです」


 その言葉は、震えていなかった。


 マルクの目が、揺れる。


「……後悔するなよ」


「しません」


「俺は、優しくない」


「知っています」


「甘やかさない」


「望んでいません」


「それでもいいのか」


 私は、少し笑う。


「それがいいんです」


 沈黙。


 次の瞬間。


 マルクの手が、私の腕を掴む。


 強くはない。

 でも、確かだ。


「……逃げるなよ」


「逃げません」


「俺も、逃げない」


 それは、告白ではない。


 誓約だった。


 言葉は少ない。


 甘くもない。


 けれど。


 この距離は、もう曖昧ではない。


 私は、自分で選んだ。


 役割ではなく。

 責任でもなく。


 ただ。


 隣に立つ人を。


 夕陽が、二人の影を並べる。


 悪役令嬢は、救われたのではない。


 選んだのだ。


 そのことが、何よりも誇らしかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ