第六十八話 この世でのファーストキス
わたしのことを、そこまで想っていてくれたんだ……。
ありがたいことだと思う。
「それともう少しわたしが、あなたのことを強く思っていれば、こんなに離れたところで生まれることはなかったかもしれないし、あなたがこんなに苦労することもなかったと思う。わたしのそばで生まれていれば、幼少期で仲良くなって、今頃は婚約者どうしとして、お互い素敵な生活をおくることができたと思う」
「わたしの方こそ、殿下のことをもっと強く思っていれば、殿下と離れたところに生まれることはなかったと思いますし、違う人に婚約を申し込まれることもなかったと思います。そして、殿下のことを転生した後も思い出していれば、婚約を受けることもなかったと思います。わたしは、殿下のことを思い出すことができず、継母と一緒にいうことが耐えられなかったので、婚約の申し込みを受けてしまいました。しかも、その人に婚約破棄をされてしまったのですから、恥ずかしい限りです。殿下には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「そんなことはない。わたしの想いがまだまだ弱かったのだ。あなたのせいではない。それに、わたしがあなたと同じ境遇だったらとしても、婚約は受けただろう。仕方のないことだと思う。わたしもそうだったが、前世の記憶というのは、それだけ思い出すのが大変だということだと思う。もうあなたは苦悩することはない」
「殿下……」
殿下のやさしさに、わたしは涙を流し始める。
「それにしても、前世のセリフィーヌさんは病弱で、さぞ苦しかったことだろう。前世で苦しんだ分、わたしはあなたを幸せにしてあげたい。わたしのすべてをあなたに捧げていきたい」
「ありがとうございます」
涙声になってくるわたし。
「今のわたしは健康体ですから、病気でご心配をかけることはないと思います。わたしも前世で殿下のお役に立てなかった分、この世では殿下にこの身を捧げて、お役に立っていきたいと思います」
殿下は涙を拭くと、
「セリフィーヌさん、今までは恥ずかしさがあって、言えなかった。でも前世の記憶が戻ってきた今、わたしは、あなたにはっきりと言わなければならないことがある」
と言った。
「言わなければならないことですか?」
「そうだ。とても大切なことだ」
殿下は一旦言葉を切る。
わたしの胸のドキドキは大きくなってきていた。
「わたしは、あなたのことが好きだ。大好きだ。恋人として付き合ってほしい。そして、婚約し、結婚してほしい」
殿下は力強くそう言った。
その瞬間、前世での記憶と今の言葉がわたしの中に奔流となって流れ込んでくる。
こうしてこの世でも出会い、また婚約、結婚という言葉をわたしに言ってくれた。
これほどうれしいことはないだろう。
「殿下、ありがとうございます。もちろんお受けいたします」
「ありがとう」
殿下はそう言うと、わたしを抱きしめる。
わたしの心は、一気に沸騰した。
「セリフィーヌさん、わたしはもうあなたのことを離さない。好きだ」
「わたしは殿下にすべてを捧げます。もう殿下と離れたくありません。ずっと一緒にいたいです。好きです」
「セリフィーヌさん、わたしはあなたのもの」
「殿下、わたしはあなたのものです」
お互いの唇と唇が近づいてくる。
そして、重なっていく唇と唇。
わたしたちにとって、この世でのファーストキス。
幸せで、素敵な時。
わたしは、殿下とずっとこうしていたいと思った。
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