第六十九話 前世の約束 (殿下サイド)
わたしは、フローナドリーム王国の王太子マクシヴィヴィアン。
一人息子として生まれ、生まれながらにして、この国を背負っていく立場になっていた。
幼い頃から、国の為に尽くすという大目標をかかげ、その為に、学問・武術を通じて自分を磨いていった。
また、国の為に尽くす為には、人々にやさしい気持ちになり、愛情を持つことが必要。
両親に教育され、その点についても心がけるようにしていた。
その結果、今では、文武両道で愛情豊かな殿下と評判になり、将来を期待されるようになっていた。
しかし、自分ではまだまだだと思っている。もっともっと自分を磨いていこうと思っていた。
周囲のものたちには、自分を低く評価しずぎだと言われていて、今でも十分素敵ですよ、と言われている。
父王も母王妃も、大いに褒めてくれていた。
それはとてもうれしいことだった。
女性たちにも人気が出てきたようだ。
しかし、わたしは、女性に興味を持つことができなかった。
自分でもなぜ興味が持てないのか、それがよくわからなかった。
年齢的には、婚約の話が出始める頃だが、自分には遠い世界の話だと思っていた。
父王は、最近体が弱ってきた。
その為、これからわたしに、少しずつ権限を移譲したいと言ってきた。
わたしはまだ若い。
まだまだ自分を磨いていかなくてはならない年頃だ。
それでもそういう話をしてくれるというのは、わたしのことを高く評価してくれているということだと思う。
わたしは、期待に応えなければ、と思った。
こうしてわたしは政務に関わり始めた。
周囲の評判も良く、この調子で国に尽くしていこうと思っていた。
しかし、自分磨きは続けていかなければならない。
わたしは、しだいに多忙になっていた。
疲れもたまってくるようになっていた。
それでも国の為に尽くすという大目標に向かって、希望を持って進んでいた。
しかし……。
その一方で、心の中では次第に、何か大切なことを忘れているのでは、ということを思うようになった。
その大切なこととは何か?
幼少期の約束だろうか。
しかし、わたしが思い出す限り、そうした約束はした覚えはない。
最近でもそういうことはない。
そうすると、前世で誰かと約束をしたということだろうか?
一生懸命思い出そうとする。
しかし、思い出すことができない。
心の調子を悪化させていくほどのものではなかったが、この状況は決して気持ちのいいものではない。
わたしは、しだいに悩み始めていた。
わたしは、この思いを一旦心の底にしまって、悩まないようにしようと思い、より一層自分磨きを行い、政務にも精力的に取り組んだ。
一生懸命この思い以外のことに集中していけば、自然とこの思いに意識が行くことはなくなっていくだろう。
そう思っていたのだが……。
昼間、一生懸命動いている時はよかった。
ところが、夜、寝る時になると、この思いが襲ってくる。
約束を果たさなくてはいけない。
わたしの中から、こういう気持ちが湧き出てくる。
約束とはいったい何なのか? 誰と約束したのだろうか?
思い出せない。つらい。苦しい。
悩まないようにと思っても、なかなかうまくいかなった。
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