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ようちゃんとの出会い

僕らは山に向かった。山奥には清らかな渓流がある。渓流でのヤマメ釣りというわけだ。

由美子がまた文句を言う。

「私さむいー。私は女なのにどうして歩かなきゃいけないの!?女だって人間なのに!」

僕は言った。

「歩くのが嫌なら身体でも売ればいいだろ!」

「ひっどーい!私もう帰る!」

「そうはイカスミだ!」

僕は由美子を引き止めた。仲間たちも笑っている。これが僕と由美子のいつものカラミ、つまりお約束って奴だから誰も本気で気にしたりしない。

「あのな由美子、寒いときに寒い、暑い時に暑いと言ってるようでは男は務まらないんだよ!」

「私女の子だもん!」

「ちょっとは我慢しろ!」

「ちぇーっだ!」

由美子はぶつくさ言いながらも僕の後ろをついてくる。

これが僕と由美子の不思議な関係なのだ。由美子がモジモジしている。

「お花を摘みに生きたいんだ」

「冬なのに花が咲いてるわけ無いだろ!ここは山奥だぞ」

「あのねえ~、女の子が花を摘みたいといったらトイレ!ってことなの!」

仲間たちは笑ってる。

「そ、そうかよ。さっさと行ってこい」

「ふんだ!」

由美子はぶつくさいいながら草をかき分けてその奥に消えていった。

「まさかあいつ大じゃないだろうな?」

仲間の1人がなんとなくつぶやいた。由美子がなかなか帰ってこないのだ。

「そりゃ女でも人間だから大くらいはするだろう」

「でも大ってことは下半身をむき出しだろ?悪い山賊にでもつかまっていたら」

僕らは心配になってきた。

「おーい由美子ー!トイレ終わったかー!」

僕らが草をかき分けていくと、向うから足音がする。

「由美子か?」

しかし姿は見えない。

「ちょっとー!」

後ろから声がする。由美子の声だ。

「なにやってんのよ?」

由美子はすでに戻っていた。僕らは行き違いになったようだ。

「いやいや、なかなか戻らないから心配でな」

由美子は頬を赤らめた。照れくさそうに言った。

「ふんだ!さ、行こっ」

僕らはまた山道を進んだ。渓流が見つかった。釣り糸を垂らしたが結局ヤマメはかからなかった。

「ヤマメったら初夏のサカナじゃなかったっけ?」

誰かがいった。

「あはは、そうかも。でもいいじゃん」

僕らはとどのつまり、みんなで山登りがしたかったのだ。

みんなで弁当を食べて歌を歌ったり小咄をしたりして楽しんだ。

そして僕らは山道を今度は下り始めた。

由美子が言った。

「あれ?何かいる」

草の向こうに生き物が走っていったのだという。

冬の山に哺乳類がウロウロしているとも思えない。僕は言った。

「トイレならさっさと行ってこい」

「ち、ちがうわよ!」

その時またカサカサッ、と音がする。それはみんなが聞いた。そして僕は見た。

草の中に小さな女の子がいるのだ。僕は追いかけた。女の子は草の中に逃げ込んだ。

僕は追うのをやめて話しかけた。

「待って!大丈夫だから。困っているなら話を聞くよ!」

声が大きかったようだ。僕は声を小さくしていった。

「おおーい!安心して。大丈夫だから。手助けがいるなら協力するよ~」

女の子は草の中を走っていくが疲れたようだ。そして僕達が敵ではないことがわかったようだ。

由美子がしゃがみこんでその手のひらに乗るような女の子に話しかけた。

「どこから来たの?」

女の子は口に手を当てて懸命にしゃべるのだが声が小さくて聞こえない。

僕らは草原に寝そべって一生懸命耳を向けるが声は小さなそよ風のささやきのようだ。

「困っているの?」

僕が聞くと女の子は手の上で大きな丸を作った。

「異世界から来たの?」

由美子が聞くと女の子は大きく頷いた。

「お父さんとお母さんは?」

女の子は首を振る。

「いるけど、この世界にはいないのね?」

うんうんと強く頷く。

「何歳?」

女の子はまず手をひろげ、次に右手を開き、左手で1本指を立てる。

「16歳か。お前と一緒じゃん」

僕は女の子に囁いた。

「大丈夫だからね。僕達が君の世界に帰してあげる」

女の子は両手を祈るように握りしめ何度も僕らに頭を下げた。

僕はサカナをいれるために一応持ってきておいたビクを地面において入り口を向けた。

女の子は自らビクに入った。僕らは小さな女の子を保護した。

「名前は何ていうの?」

女の子は懸命に大声で自分の名前を叫んでいるようだが僕らには聞こえなかった。

「それは後で聞くことにするよ。とりあえずしばらくは妖精のようちゃんってことで宜しくね」

ようちゃんはにっこりと微笑んで頷いた。

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