○文芸祭にて 1○
○亜利side○
愛ちゃんが叫んだ。
まぁ、私が妙なことを聞いたからという理由だけは明確である。
その内容は、実に簡単だ。
「愛ちゃん、飛ぃの事好きだろ? 明らか今顔に出てるって……。」
黙って顔を赤める。そして、ぽんと頭から煙を出しそうなほど赤くなり、俯き、叫んだ今に至る。
なんで、こんなことをしてるか…日課だな。うん。愛ちゃんと飛ぃをイジるのは日課。
「ほぉれ、明日は文芸祭だろ?調子、狂わせてるとおかしくなるよ?」
「う、うっさいな!」
にしし、と悪戯めに笑う。
「うぅー…」
「? 亜利、また愛に変なこと言ったろ」
と口を挟むのは飛ぃ。別にーとにやけそうな顔を抑えながら反応をした。
「さ、帰るぞ。」
と后也がはよ来いと言わんばかりに手招きをする。
パタパタと走って后也を追う。
「それじゃーね。」とひらひら手を振り愛沙と舞夏と唯は道を外れ逆方向に走った。
翌日。何事もなく愛沙の書いた詩の朗読は終えた…………………が。
読み手は飛悟であり、彼は一部女子(世で言う「声フェチ女子」)にはおっとりとした声が良いとまた評判になっていた。
まぁ、そんな状況をアタシは役員で大稀と舞台袖から見ていたわけで。
「何かとあいつ、評判いいよね」
「そうだな…………まぁ、本人は結構な女子嫌いっぽいがな」
「まぁね…………」
と大稀と喋っているとふと気になることがあった。
飛悟は女子嫌い………本当にそうなのだろうか。少し疑問に思ってると大稀がまた話始めた。
「ま、奴には例外もいるらしいがな?」
と、にんまり笑い、愛沙の方を見た。
舞台の終わり、礼をしに出た姿が目に入る。
女子の割にはまぁ160cm代と身長は高めだが飛悟と並ぶと意外と小さく見える。そして、舞台の反対、客席に目を遣るといわゆる飛ぃ(アイツ)のファンらしき子等が目を鋭くしている。
(あっちゃ〜……)
と、思うのも束の間で、愛沙は察したか、緊張しただけなのか、持っていた台本で顔を隠し「有難う御座いました」と早口で言うとこちらへと逃げ込むようにやってきた。それを追って飛悟も会釈だけをして舞台袖にやってきた。
『えー…次は、美久先生お願いします』
そんな委員のアナウンスが入り、辺りは静かになり、小声で「どうした?」と訪ねた。
「朗読中も怖かった。後も怖いよ……。」
「女子はよくわからんなー…」
「おまえが言うなっての」
と、大稀には突っ込まれ、気分を変えようとして「な、な。飛悟」と声をかけるが暗い顔をして俯いたまま何も言わなかった。
「もういい。」
愛がいつもより低い声音で呟き背を向けて走り出した。
「あ、愛沙!」
「愛!…………ほら、飛ぃ、追わないの?」
「今俺が行ったってアイツは…聞く耳持たねぇよ」
「…………っ。じゃあ来なきゃいいよ。アンタがそんな奴だなんて思いもしなかったよ。大稀、後任したから。」
「ちょ、亜利!!………飛悟まで…」
そんな声なんて聞こえないフリをした。きっと今の愛は私でも飛ぃでも聞く耳を持たないかもしれない。少しの希望に掛けたっていいじゃないか、と少しばかり思い私は体育館を後にした。




