第三十一話 ダメおっさん、五階層のボスと戦う
「リリアは小回りの利く魔法を使って牽制しないとダメだ。体術は大事だが、もともと魔法使いのリリアが使って勝てない時も多い」
「……」
「サラはもっとダメだ。後衛のリリアを守りながら戦わないといけないのに、初めから突っ込んでどうする。実戦だったらそんな動きをするのか? それにラーナを舐めていただろ。自分なら勝てるって、過信している」
「……ごめんなさい」
二人はシュンとして落ち込んでいる。ったく、ちょっと言いすぎたか? だが大事なことだからちゃんと伝えないと駄目だと思った。サラとリリアが死んでからでは遅すぎる。俺は心を鬼にしななければいけない。駆け出し冒険者が死んでいく要因は実力を過信して、上のランクのクエストを受けて死ぬことだ。俺は何人もそういうやつを見てきたんだ。
そう話をしてやると、サラは目を大きく見開いて、涙をためていく。リリアは顔を沈ませていた。
「ごめんなさい。あたし、強くなって、調子に乗ってた」
「……」
俺は二人の頭をポンポンと叩いて撫でてやる。すると二人は俺の腰に抱き着いて泣き出す。うう、女の子を泣かせるのは忍びないが、まあ今回は仕方ないだろ? だからラーナはその生暖かい目を辞めてくれるか?
「ガンク……」
「……」
二人が泣き止むまで頭を撫でてあげた。これは師匠としての勤めだからな!
「ガンクを守れるくらいに強くなって、お嫁さんになってあげようと思ったの……」
「!」
サラとリリアはとんでもないことを言い出した。いやいや、俺はもう三十五のおっさんだぞ? お前たちはとんでもない美少女だし、末来がある。俺は呪いで……と言おうとするとラーナが後ろから抱き着いてくる。
「ガンク殿、呪いは解けばいいのです」
「そんな簡単に言うなよ」
「呪いを解かないとガンク殿は弱いままでわたくしのお婿に来てもらいますが?」
「え?」
なんで? ああ、ラーナは俺の料理が好きだから、美味い飯を毎日作ってほしいってことか? え? 違うの? じゃあ何でだよ! ラーナがとんでもないことを言い出したからサラとリリアが怒り始めた。もう何で皆怒ってるんだ? わ、わからんがこういう時は触れないに限る。おれがたじたじになっていると三人は同時にこっちを見てきて……。
『はあ……』
なんかため息を三人につかれたんですけど⁉ リリアもため息の時は声が出るんだな。
「師匠は鈍感すぎる。あたしと一緒の英雄なんだよ?」
「!」
「サラ殿とガンク殿はマルクの街の希望なのです」
「いや、サラはいいが、俺は何もしてない」
「マルクの街の冒険者たちや領軍のカティンも感謝していますよ」
なんか恥ずかしくなってきた。俺は三人から目をそらして、寝る準備をすることにした。サラは意気地なしとか言ってるし、ラーナは冷たい目で俺を見てくる。良いんだよ、俺は。英雄とかガラじゃないし。
俺たちは疲れていたので、すぐに眠くなる。テントは男女別の二つだ。俺の方が広いが仕方ない。リリア以外の三人で二時間ごとに交代する。リリアは申し訳なさそうにしていたが良いんだよ。まあセーフエリアだが一応の見張りだ。
俺は最初の見張りだった。焚火の火をじっと眺める。ぱちぱちと音を立てて、燃える火は温かった。三人といる時は心も温かい。俺は恵まれている。ふと微笑みの魔族の事を思い出す。あいつは頭脳もキレるが攻め方はゴリゴリの肉体派だからな。魔物を使役している魔族は別にいるだろう。マルクの街や三人は絶対守る。
二時間経ってからラーナを起こす。明日は五階層のボス戦だ。気張っていこう。
俺はテントに入り、目を閉じた。
朝だ。洞窟の中だから太陽はないが、何となく体内時計で分かる。
今日の朝はサンドイッチだ。
「いよいよボス戦だね」
「五階層のボスはオークキングだぞ。通常のオークやオークジェネラル、オークアーチャー、オークナイトもいるらしい」
「それはこの人数では危険では?」
「まず雑魚を片付ける。それには魔法を最初に使って沢山倒すんだ」
「またファイアートルネードする?」
「?」
「ああ、ファイアートルネードは必須だ。あれよりもでかいのを頼むぞ」
「任せて!」
「!」
サラとリリアは楽しそうだ。パーティーとして戦う事は昨日言ったからな。まあ俺とラーナがフォローすれば大丈夫だ。
四人でボス部屋の扉を開ける。見えた。醜悪な顔を見せるオークたちが八頭。オークナイトが二頭。オークアーチャーが二頭、オークジェネラルが二頭、オークキングが一頭だ。オークキングは三メートルくらい。オークジェネラルが二メートル。他は一メートル八十センチくらいだ。
こちらが女三人連れだと見て、下卑た笑みを見せるオークたち。クソったれが。絶対倒す。
今回、サラとラーナがまずオークたちを牽制、俺とリリアがファイアートルネードを撃つ。オークたちが走ってきた。さあ、サラとラーナはどう守る? お、サラは三階層でラーナがやったようにオークの足の腱を斬って、足止めをしている。ラーナもそれに続いているな。
「ファイアーボール!」
「!」
俺が三つの熱く滾る太陽を生み出すとリリアは目を閉じてよどみない魔力操作をする。
「行くぞ!」
「!」
俺の声でサラとラーナはこちらに引く。オークたちは俺を止めようと走ってくる。が、遅いな。両手を突き出し、魔力で作り出した透明の腕から三つの太陽を撃ちだす。リリアを見た。リリアは火球は通常のオークたちがいるところに当たる瞬間、魔力を操作して、天井まで昇る竜巻を生み出す。その結果。
「グオオオオオオ!」
オークたちは三つの太陽に体を焦がされる。そうだ、リリアのトルネードがあるから逃げられない。太陽とトルネードが合わさり、大きなファイアートルネードになって、オークたちを巻き上げる。オークアーチャー、オークナイトはあからさまにおびえていた。オークジェネラルはオークキングを守りながら苦々しい顔をしている。
「グオ、グオ!」
オークジェネラルがオークアーチャーに指示を出す。オークアーチャーはこちらを狙って、弓を引き絞る。そうだよな。遠くから狙うしかないよな? ラーナはこちらを向いて一瞬笑うと姿を消して……。オークアーチャーの頸動脈を掻き切る。流石ラーナだ。もう一体のオークアーチャーはサラを狙ってきたが、それをサラは切り捨て、一瞬で魔力層を身に纏う。素早い動きでオークアーチャーの狙いを翻弄する。オークアーチャーは悔しそうに顔を歪ませて、矢を放つ。一瞬半身になって、矢を躱すと、ショートソードにも魔力層を纏わせて……。
「一の回、壊閃!」
鋼のショートソードが大剣のような白い刃を纏い、強く光った。オークアーチャーはその光に気を取られる。隙だらけだぞ。かましてやれ。
——一閃。
オークアーチャーの上半身と下半身はずるりと分かれて消えた。
オークたちはファイアートルネードで燃え尽きた。後はオークナイトとジェネラルとキングだ。
俺も動くぞ。
次話に続く。
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