第三十二話 ダメおっさん、オークキングと戦う
次はオークナイトだ。青銀色に光る大盾を持って、オークキングの前に構えている。あいつらは俺の動きを見て、ゆるりと立ち位置を変えている。厄介だな。五階層の強さじゃない。俺はアダマンタイト製の大剣を引き抜く。
「リリアは後方支援! サラとラーナはオークジェネラルを抑えるんだ」
「分かったわ!」
「承知しました」
「!」
オークジェネラルが俺に走り寄ってくる。サラとラーナはそれぞれ一体ずつに構えて立つ。まああいつらなら大丈夫だろう。
俺の本気の動きは二十秒しかできない。オークナイトにかまけているとオークキング戦で戦えない。ならばやり方は一つしかない。そう、魔法戦だ。俺は久しぶりに火魔法以外の魔法を使うことにした。オークナイトは俺が仕掛けてこないと見るや、大盾を構えながら囲おうとしてくる。魔力を即座に操作して、地面に土魔法を使う。土がうねり、俺の足元に土が集まり、やがて体に覆われる。それはフルメタルアーマーのように鎧になり、岩肌の鎧となる。
「グオオオ!」
オークナイトは、大盾を構えて突進してくる。俺はそれを避けずに思いっきり腕を振り上げて、ぶちかます! オークナイトの大盾と俺のいつもの動きで動いた腕がぶつかり合う。
「グオ⁉」
ロックアーマーでコーティングされた鎧が大盾ごとオークナイトを吹き飛ばす。もう一体のオークナイトが後ろに回り込んでシールドバッシュをする。避ける必要はない。地面に魔力を通せば、戦場に立つ砦のような防壁となる。オークナイトは衝撃を跳ね返されてつんのめる。後ろを振り返り、オークナイトの腕をつかんで、グルんと回転して、放り投げる! 先程吹き飛ばした。オークナイトに放り投げる。ふん、一瞬泣き顔になっていたな。二体のオークナイトはひしゃげて消えていった。
サラの方を見る。サラはオークジェネラルの斧とショートソードを鍔迫り合いしていた。オークジェネラルがむきになって、力を込めた瞬間、サラはフッと笑って後ろに下がる。前に進もうとしていた慣性がオークジェネラルにかかり、驚いた顔でつんのめる。素早い動きで足首を斬りつける。いいタイミングだ。足首をくじかれて、オークジェネラルは転倒する。そこをサラは光属性の魔力を纏わせたショートソードで首を斬りさい――いや、斬れなかった。
ラーナと戦っていたはずのオークジェネラルがすさまじい速さで、サラに突進していった。サラは飛びのこうとするが、タイミングが悪かった。魔力層を咄嗟に纏わせるのが見える。まずい!
俺も動けない一瞬の攻防の中、シュンと黒髪メイドのラーナが現れて、サラに触り、転移する。クソっ。こいつらやっぱり普通じゃない。ちょっとまずくなってきたな。
「リリア! サラとラーナを援護!」
瞬間、リリアの膨大な魔力波形が膨れ上がり、水魔法が発動する。それに反応してオークキングが動いた。俺はサラとラーナたちの援護を諦めて、オークキングにロックアーマーのタックルを食らわせる。サラ、リリア、ラーナ。死ぬなよ。
** サラ視点
リリアのウォーターカッターはオークジェネラルの体に当たるも貫けない。でも押し流されて時間は稼げた。
ちっ、やられたわ。あたしが戦っていたオークジェネラルがいやらしく笑っていた。あいつは自分がやられ役を引き受けることで、もう一人のオークジェネラルにあたしを殺させようとしていた。現に先ほどまでの隙が一ミリもない。
「サラ殿、ガンク殿がオークキングを抑えてくれている間に、やるしかありません」
「そうね」
「!」
ジェネラルと名の付いた魔物は伊達じゃない。やるしかない。漆黒の魔獣と戦っていた状態にならなければいけない。あの時、どう考えていたかしら。確か……ガンクを守りたい一心で無我夢中で戦っていた。あの時と一緒。ガンクもリリアも……ラーナはついでだけど守る。
「リリア、ウォーターカッターをもっと威力を強めて。あたしたちを守りたいでしょ?」
「……!」
リリアはあたしの言葉に強く頷く。やっぱりさっきの魔法は威力を弱めていたみたい。リリアは優しいからね。でも敵に情けはかけちゃダメ。
オークジェネラルは咆哮を上げると今度はさっきよりも早く、距離を詰める。あたしは慌てない。リリアがウォーターカッターを再度使う。頭を狙ったけど、大斧で弾いてあたしを狙ってくる。返す刀でショートソードで……重いわね。絶妙な力加減であたしを押しつぶそうとしてくる。あたしは力を抜いて再度受け流し、左回転で横薙ぎを放つ。
「弐の回。周壊」
咄嗟に大斧で防御されたものの、横薙ぎからの逆袈裟斬りに切り替える。大斧は弾かれる。オークジェネラルは大斧を取ろうと巨体でジャンプする。ちぃっ。あれを取られたらまたやり直しだ。だけど……。
「!」
リリアが本気のウォーターカッターをオークジェネラルの腹に打ち込む。うん、オークジェネラルの腹に大きな穴が開いた。
水に押し流されて、大斧を取れなかった。なら行ける! あたしは白い光の翼をはためかせて、宙を飛ぶ! そう、跳んでいるのではなく飛ぶ。次は尊敬しているお母さんの技で!
「——ムーンチャージ!」
あいつの体に突進する。肉を貫き、骨を断つ。オークジェネラルごとボス部屋の壁に突き刺す。オークジェネラルは顔をゆがめて、こちらを見て、消えた。結晶型のまがまがしい魔石。ガンクの言う通りね。魔族に何かされたオークたち。
「……哀れね」
あたしはそう呟き、ラーナの方を見る。ラーナと戦っていたオークジェネラルは傷だらけで血を流し消耗している。なるほど持久戦でヒットアンドアウェイで戦っているのね。オークジェネラルは、グオオ、と呻きながらラーナを忌々しそうに見つめている。あ、リリアの魔力波形がまた膨らんで!
「!」
え、火魔法の放射系じゃない! 赤い炎が一筋の光線となり、オークジェネラルの頭を貫いた。
驚いたわ。火魔法の放射系はまだ練習中って文字で書いてたのに。
リリアは天才肌だ。負けられない。あたしだってレインブルク一族だから。
ガンクの隣に居続けたいの。
ガンクの様子を見ると、えっ? あの重そうなロックアーマーを付けたまま、ガンクの本気の速度で戦っている。オークキングは禍々しいオーラを纏った斧でガンクの大剣と打ち合っていた。お互い、得物の重さを感じているようね。オークキングは配下が全員やられていることにイラついているようね。
「四の回」
え? 四の回‼ ガンクの新技じゃない! あたしは瞬きしないように目を見開いて、ガンクを見つめる。
オークキングは一度退こうと後ろに下がろうとして……ええ? 後ろに岩壁が! 技を発動させながら、魔力操作も怠らない。すごい……。
狼狽えるオークキング。ガンクはそれを見てニヤリと笑う。ガンクの大剣に透明な魔力の渦巻きが発生して、大剣を覆う。なにあれ? 振動しているわ。
「——震壊」
オークキングの体に大剣が突き刺さり、オークキングの全身から血が噴き出す。
すごい、体に一瞬で亀裂が走った。そしてオークキングは消える。
オークキングが倒れた場所に宝箱が生まれる。
「やった! 倒した!」
「‼」
「ガンク殿、流石です」
「まあやるときはやるんだよ」
あたしたちは喜びあって、手を何回も合わせた。
早く宝箱を開けたい、そう思っていたのに。
次の瞬間、ボス部屋から白い光が生まれる。
「まずい! これは転移の光だ!」
次話に続く。
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