第三話 ダメおっさん、サラを追う
結局、あの後サラはアルトたちを三分で叩きのめした。
俺はその試合を見ながら、別のことを考えていた。
「こいつ……剣の才能がある。問題は、才能がありすぎることだ」
だが基本がなってない。まるで狼に育てられた野生児だ。
身体能力は高いのだろう。俺は魔法戦士じゃないからわからないが魔力量も火球を斬れる時点で平均以上だ。
そう、才能の塊。
歩き方から見るに足さばきはいい。
ただ……。
「お前は剣の振り方や重心の移動のさせ方がダメだ」
「何よ、藪から棒に!」
口調は柔らかい。だが目線は冷たい。
こいつの問題点は、友達や信用、信頼できる仲間がいないのだ。
そして才能がありすぎるので一人で何とかなってしまう。
「サラ、一緒に依頼を受けるか?」
「はあ? あたしは一人で戦えるわ!」
「それはそうだろう。だが一人で戦う限界も感じているんじゃないか?」
「……」
サラは不満げにそっぽを向く。
体は細いしやせ細ってる。ぺったんこ過ぎるから多分男だな。
何でサラって名前なんだよ。
「サラって男だよな?」
「……はあ?」
「いや、ぺったんこ過ぎて何で女の名前にしてるんだろうって疑問に……アダぁ!」
俺は腹にボディブローを食らって悶絶する。
ヤバイ。アルトと戦ってる時よりよほどダメージを受けた。
「ふん!」
そのままサラは冒険者ギルドを去って行った。
結局男か女かどっちなんだよ。
「ガンクさん?」
ミミ―ちゃんが隣にやってきて……ふわちょぉ!
左のすねに蹴りを入れられて、涙が出てくる。
「反省してください」
俺はミミ―ちゃんにも何故か説教を食らっていた。
まあ助けてもらった相手にちょっとだけデリカシーがなかったかもしれない。
小一時間、アルトたちも巻き込まれて仲良く説教を食らった。
「ミミ―ちゃん……あの方は敵に回してはいけない」
「アルト、俺たち仲間だよな」
「ああ!」
何故かアルトと仲間意識が芽生えて抱き合う。
ミミ―ちゃんの目線は雪が降るくらい冷たかった。
その後便所に行くと便所の外からミミ―ちゃんが声をかけてくる。
「サラはどうでした?」
「あれは磨けばダイヤモンドになる原石だ。だが問題点も多い」
「ソロ志向だからですか?」
「他人を信用できない目をしてる。何があったかは知らんがな」
「できればサラに指導してもらいたいんですけどね」
「あいつはどこに住んでるんだ?」
「さあ。マルクの城門からいつも夜に出ていくそうです」
「はあ⁉」
おいおい。マルクの街はガルランド王国の辺境の地。
そして魔物が多く住む森に面している。
当然城門の外は夜になると魔物が徘徊する。
狼に育てられたのかって思ったけど本当に森で暮らしているのか?
「ちょっと行ってくる!」
「え? もうすぐ夜ですよ! ガンクさんが行っても戦えないでしょ!」
俺はミミ―ちゃんの制止を振り切って、冒険者ギルドを飛び出す。
呪いが発動しないギリギリの小走りでマルクの街の門に行く。
「なあ? 赤髪で短髪のガキが城門を出なかったか?」
茶髪で気だるげな表情を浮かべた門番がけげんな表情を浮かべた後、俺に答える。
「うーん。何のことかさっぱりわからんな」
はあ? こいつしらばっくれてやがる。
俺はイライラしてきたがアイテム袋から金を取り出し、握らせる。
「おい、急いでるんだ。これでいいか?」
「銀貨一枚か。まあいい。ああ、そのガキなら今日も出ていったぜ」
「なんで子供が夜に城門の外を出るのを止めないんだ!」
俺はついに感情を抑えきれずに門番の胸を掴む。
「おい、お前! 何をしている!」
もう一人の門番が槍を俺に突き付ける。
後ろにいた商人たちは狼狽えているだろうな。
「お前! これ以上動くと! ッ!」
もう一人の門番が息を呑む。俺は現役時代の本気の威圧を出していた。
「わ、わかった。話すからそれを辞めてくれ」
今にも泡を吹きそうな門番は必死に俺の手を叩く。
ちっ。
まあこれくらいにしておいてやる。
「話せ」
「あのガキは四年前から、夜になると外に出ていくんだ」
「はあ?」
「最初の頃は止めたさ。だが魔物はしっかりと狩ってくるし、ぴんぴんしてる」
「……」
「そ、それにお前だって領主様の事を知ってるだろ!」
マルクの街の領主クロイは老練な武闘派貴族。そして小さい頃からマルクの街の森で魔物狩りをしていたと吟遊詩人が良く歌にしていた。
「クロイ様は止めなくてもいいと言ったんだ!」
「……そうか」
俺は威圧を収め、無言で門番を離す。
「クロイ様が許可しているからって関係ない。俺はあのガキを追う」
俺は門番にギルドカードを見せると森に向かって街道を歩き始める。
サラの魔力は特徴的だからすぐに方角が分かった。
魔族大戦の時は敵と味方の魔力波形を覚えていたからな。
この方角は……。
ッ! サラの魔力波形が乱れてる。
戦闘中だ。これはスライムやゴブリン程度の敵じゃない。
何故こんなにサラを気にしているのかもわからない。
でも無性に腹が立ったんだ。サラにもマルクの街の領主にも。
*ガンクは魔法戦士ではありませんが。魔力操作に長けているので魔力波形も感じることができます。魔力波形とは一人一人違うので、指紋認証のように使われることも。
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