第二十八話 ダメおっさん、ダンジョンを進む
「それってどういうこと?」
「?」
俺の言葉にサラとリリアが首をかしげる。だがラーナは違った。目線はグッと力を増し、俺の持っているホブゴブリンの魔石をにらみつける。まるで親の仇を見るような目で。
「つまり、このダンジョンに魔族が関与しているという事です」
「そうだな。しかも飛び切りヤバい奴だ」
「……そんな」
「……」
俺は以前戦い、呪いをかけられた微笑みの魔族の話をする。背中から冷や汗が噴き出る。俺はどうしようもない怖さを感じた。だって、あいつがいたらこいつらを守れる自信がない。まさか、俺をこのダンジョンの攻略に呼んだのは師匠が微笑みの魔族の情報を知っていて、俺に任せたのか? あのどうしようもない戦場で異世界の勇者から守った呪いの相手をしろってか?
「クソが!」
『……』
俺の悪態にサラとリリアが怯えた表情を見せる。俺は目を泳がせる。そんな時背中に柔らかい感触を感じた。これはラーナか?
「ガンク殿、焦ってはいけません。まだ微笑みの魔族がいるという確たる証拠もありません。そしてガンク殿はサラとリリアの師匠なのですよ?」
「……悪かった」
「でもガンク殿がそこまで怯えるのはトラウマがあるからですよね。でもガンク殿は一人じゃありません。ここにはサラとリリア、わたくしもいますから」
「……」
サラとリリアが俺の手をそっと握ってさすってくれる。ラーナは背中からそっと抱きしめてくれた。ありがとな、こんなダメおっさんに寄り添ってくれて。
「こんなダメおっさんについて来てくれるのか?」
「当たり前でしょ! 一番弟子だよ!」
「!」
「わたくしも微力ながら付いてまいります」
「ありがとな」
ああ、何でかわかんねえが、目から汗が出やがる。少しだけ昔のパーティーを思い出した。あいつら本当にやかましかったけどいいパーティーだったんだよな。今は弟子のサラとリリアがいる。ラーナも来てくれる。それだけで力が湧いてくる気がした。まああいつに遭っちまったら本当に戦えるかわからない。でもあいつらからこいつらを絶対守る。それは絶対してやるからな。俺はそう決意して皆を見る。
「ったく、ガンク、泣かないで」
「泣いてねえ」
「!」
「リリアもハンカチ、出さなくていい」
「わたくしは大人の包容力でガンク殿を膝枕してあげます」
「良いから! そう言うのいいから!」
俺たちは笑いあう。ったくラーナには色々と助けられるな。
サラとリリアも笑顔だ。この笑顔を守るために俺が戦わないとな。
四人で手を乗せて、ダンジョンの天井に腕を高く上げた。
俺たちはチームだ。こういう時は笑ってなきゃな。
「さあ、行くぞ」
「あたしが皆を守ってあげる!」
「まだまだ俺の方が強いぞ!」
「それは嘘よ!」
サラと掛け合いながらダンジョンの二階層に潜っていく。
ここからは草原が広がる階層らしい。ダンジョンは空間がねじ曲がっていて、とても広い層がある。
歩いているとバトルカウが群れで草を食べているのが見つかった。
俺たちは目配せをして魔力操作をする。全員で魔法攻撃だ。
詠唱はなくていい。必要なのはイメージだ。
サラと俺は火魔法でバトルカウを攻撃する。
リリアは風魔法でトルネードを作る。
合わさればファイアートルネードだ。
タイミングは火魔法が先行で一秒早く到達するようにする。
三、二、一! 今だ!
「行け!」
「行くわよ!」
「!」
俺は空中に三個ほどファイアーボールを浮かべる。これは右腕、左腕、透明な腕を同時に操り、魔法を生み出しているからだ。サラは一点集中で等身大の大きなファイアーボールを生み出す。リリアを見た。リリアは頷いている。俺とサラはバトルカウの群れに四発のファイアーボールを撃ち込んでいく。火球は俺が全力で走るより速い速度でバトルカウの群れに着弾し、大きな炎を生み出す。
『ブモオオ!』
バトルカウが炎に苦しむ中、後ろのリリアの魔力波形がとても大きくなり、三メートルほどのトルネードがバトルカウの群れの中に生み出される。俺達の生み出した炎とリリアのトルネードが合わさり、ファイアートルネードが生まれる。俺達とファイアートルネードは五メートル程離れていたが、熱風を肌で感じる熱さだ。
バトルカウの群れはどうにか走り出そうとしていたが、リリアのトルネードからは抜け出せずに空へと飛んでいき、燃え尽きる。おお、魔力操作をしっかりしていたからか、魔力消費は少なく済んでいる。流石リリアだな。しっかりと俺が教えたことを吸収している。
バトルカウの群れは十頭ほどいたが、全部お肉と白い透明な魔石に変わっていた。これはいい稼ぎになるな。
「やったな、サラ、リリア」
「ガンク、今度、三個の魔法を同時に出す方法教えて!」
「!」
サラとリリアは俺の手を掴んで、跳ねていた。ったくそんなに喜んでたら他の魔物に見つかるぞ。まあ今はいないから許してやるか。ラーナは転移魔法は得意なのだが、他の魔法はちゃんと使えないらしい。今度は俺が教えてやろう。
そう言うと、ラーナは無表情でこう言った。
「ガンク殿、なんかおっさん臭いです」
「ああ! 俺はおっさんだ!」
「クスクス」
「あっはっは!」
リリアが声を出してクスクス笑っている。笑い声は出せるんだよな、リリア。サラは腹抱えて思いっきり笑っていた。ったく、ダンジョンに来てこんなに呑気そうにしてるのは俺達だけだっつうの。ラーナは無表情に見せかけて、ちょっとだけ笑いをこらえていた。
俺たちはアイテム袋にバトルカウのお肉と魔石を入れて、休憩することにした。幸い、ダンジョンはまだまだ始まったばかり。二階層は見晴らしがいいので、休憩もとりやすい。俺はアイテム袋から料理を取り出すことにした。
「ガンク殿! 今回の料理は⁉」
「今回は……」
次話に続く。
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