第二十七話 ダメおっさん、ダンジョンに入る
俺たちは地下に続くダンジョンに進んでいく。地下に進んでいくと、石造りの石垣と光るコケに照らされた壁が見える。ダンジョンでは基本的に光るコケに照らされて視界は見やすい。光るコケはダンジョン内でしか生きられないようで、外に持ち出すと光を失ってしまう。それをサラとリリアに説明してやると不思議そうな顔をする。
ラーナは何でもない顔をしていたぞ。
天井は五メートルくらいで余裕はある。俺は皆に魔力操作をして魔力波形を辿るように言う。お、曲がり角にゴブリンがいるな。
「次の曲がり角にゴブリンがいるぞ」
「リリアが相手してみたら?」
「!」
リリアは少し手が震えていたが俺の目を少しだけ見て頷く。
「大丈夫だ。俺が盾になってやるからな」
「あたしもリリアを守る!」
「わたくしは手を出さないで見ていますね」
リリアはフッと笑うと、少しだけ遠い目をして、魔力操作をし始める。手から腕、腕から肩、肩からお腹、お腹から下半身、魔力操作をして集中していた。曲がり角に来て待ち伏せしている所に俺は魔力操作で透明の腕を作り、ゴブリンを弱めに吹き飛ばす。
「グギャア!」
「ギャアギャア!」
ゴブリンは俺達を待ち伏せるのをやめて、俺たちにショートソードを無茶苦茶な軌道で振ってくる。サラは慣れた顔でショートソードで受け流す。俺は魔力層を身に纏い、ゴブリンにデコピンをしていた。
「!」
リリアの魔力操作が十分練れたようだ。俺とサラがゴブリンを弾き飛ばし、ひとまとめにする。リリアの両手から赤色の光があふれだし、大きな火球となってゴブリン達に進む。二匹のゴブリンは逃げ出そうとする。
「!」
え? リリアが透明の腕を作ってゴブリン達を阻害している。すごいな、魔法の維持と魔力操作を同時にこなすのは誰でもできることじゃない。そして俺の真似をして、戦闘に生かしている所に俺はジーンときた。火球はゴブリンのショートソード毎、二体を飲み込み……。
「グギャ……」
二体のゴブリンは焼き尽くされる。
「リリア、よくやったな」
「あたしも負けてられない!」
「見事な火魔法でした。ファイアーボールなのに威力が凄いですね」
「そうだよな。二体まとめて焼き尽くすのはなかなかできない」
「……!」
リリアは先ほどまでの自信なさげな顔ではなく、明るい表情をしてこちらに頷く。ああ、こんな時にリリアと意思伝達ができたらなって思うな。
ゴブリン二匹の魔石が道に落ちている。そう言えば、この世界にはレベル? やステータスがないのね、と異世界の勇者が言っていた。まあスキルはあるのだが、それを客観的に見る方法がないらしい。ステータスオープン、と異世界の勇者が良く言っていたなあ。魔石は魔道具に使う燃料になるぞ。でかいと収集家が買っていくこともあるらしい
俺たちはずんずんと一階層を進んでいく。
「サラ、ゴブリン二体がいるぞ!」
「リリア、合間を縫って、風魔法を!」
俺とラーナは見ているだけだ。ゴブリン二体や、犬の顔をした二足歩行の魔物コボルトなんかも出てくる。コボルトは顔が醜悪だ。サラとリリアはゴブリンの時より強めに武器や魔法を振るっている気がする。
サラは下半身をしっかり踏みこみ、上半身に伝えながら、一撃でゴブリンを切り捨てる。漆黒の魔獣戦の後、サラは本当に剣の使い方が上手くなった。リリアは補助的に透明な腕を上手く使い、火魔法や風魔法をサラに当てない様にしながら、とどめを刺している。
「ガンク殿の弟子は本当にいい動きをしますね」
「ラーナも俺の弟子になるか?」
「フフフ、していただけるのでしたら」
そんなことを話していると戦闘が終わった。二人とも楽しげな眼をしている。まあそれは良いんだ。一階層は罠は特になさそうだ。出てくる魔物もゴブリン、コボルト、キラーラビットくらいだ。ただ一つおかしい事と言えば……。
「このダンジョンは魔物の数が多いな」
「そうですね」
「そうなの?」
「?」
サラとリリアに説明する。一階層では普通魔物は一体ずつしか出ない。これは冒険者に深くダンジョンを潜ってほしいからと言われているが定かではない。魔物を冒険者に倒させることで何かしらのポイントをダンジョン側が得ているのではないの? って異世界の勇者が言っていたな。異世界のおとぎ話ではダンジョンマスターなる存在も出てきていたらしい。
「それに魔素が濃いな」
俺は魔力操作をして、ダンジョン内の魔力波形を探っていたが、かなり魔素がダンジョンに含まれている。
サラとリリアは順調そうに魔物を倒していくが時たま、ラーナが混ざってアシストをしていた。
道は一本道だが、途中で左右に分かれる道が出てくる。
「左に行くか」
左の方が魔力波形で調べた結果、魔物が多い。
今のうちに経験を積ませて、戦闘になれさせたい。
ゴブリン達をリリアの魔法で一掃しつつ、歩いていくと大広間になっていた。
そしてそこには、ホブゴブリンと呼ばれる大きなゴブリンが一匹。
うん? こいつの魔力波形は何かおかしい。
「俺がやる」
俺は大剣を持ったホブゴブリンに対してアダマンタイト製の大剣を抜き、構える。ホブゴブリンは何処か濁った眼で俺に対して走りこんでくる。
「ッ!」
こいつ、速い! 通常のゴブリンより強化されている。
一撃、二撃。俺は何処かこの動きを知っている感じがした。
大剣を叩きつけ合いながら、隙を探る。
まだ本気は出していないが、普通の動きでは押し切られるかもしれない。こんな奴がダンジョンの一階層にいるのか? そりゃあ先遣隊が帰ってこないわけだ。
俺がホブゴブリンの大剣を切りあっている間に、俺の馴染みの魔力がホブゴブリンの後ろに回り込んだ。
「天誅!」
ラーナが転移で素早く、ホブゴブリンの後ろに回り込み、頸動脈を斬りつける。
ぶしゃあああ!
ホブゴブリンは力なく倒れて、魔石になって消える。
「ラーナ、ありがとうな」
「いえ、これがわたくしの勤めです」
「ガンク、苦戦したわね?」
「そうなんだよ、こいつの魔石見て見ろ」
ホブゴブリンの魔石は黒く大きな結晶となっていた。通常の魔石は白く丸い。俺はこの魔石を見たことがある。俺はぎりっと歯ぎしりしながら言った。
「これは魔族大戦で戦った魔物たちの魔石と一緒だ」
俺の脳裏に魔族大戦で戦った微笑みの魔族が蘇る。
俺は背筋がぞっと冷える。呪われた瞬間を思い出してしまった。
次話に続く。
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