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『呪われた元英雄は育成力もSランク~落ちこぼれの教え子を育てて「英雄」にしたら俺から巣立ってくれない』  作者: マロン64
第一章 サラ編

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第十六話 ★サラと漆黒の魔獣

 これは……何? あたしに白い光が集まってきて自然と力が湧いてくる。

 さっきまでは漆黒の魔獣に食らいついていたけど、それでもダメだった。

 あたしは思ったの。ガンクが魔獣に吹き飛ばされたときに、力が欲しいって。

 ガンクはあたしの凍った心を溶かしてくれた大事な師匠。

 だから……一人で戦うんじゃなくて、皆を守る力が欲しいって思った。


「……なにこれ、力があふれてくるわ」

 後ろの白い羽根があたしに勇気を与えてくれる。

 みんなを、そしてガンクを守る力をあたしにくれている。


「これならやれる!」

 あたしはいつも一緒に戦ってきた相棒のショートソードに光を纏わせる。

 ん? 漆黒の魔獣が少しだけ目を丸くしている。

 何でかしら。でもやることは決まっている。


「あんたを倒す!」

 右足に力を入れて、全力で踏み出す。それはガンクが見せてくれた全力の出し方。

 全部覚えてる。ガンクは行動でいつも見せてくれる。

 あっという間に漆黒の魔獣の目の前まで行く。


 漆黒の魔獣が素早く噛みついてくる。

 でもそんなの効かないわ。


「壱の回 壊閃!」

 いつも透明な魔力層は白い光を帯びていた。

 それは、きっと暗闇を切り裂く光。


 あたしは重心を自然とコントロールしながら、最適な体さばきでショートソードを横薙ぎに振る。

 ズバァン!

 漆黒の魔獣は一瞬で噛みつきを諦め、回避しようとするが右目を深くえぐる。


「ウォオオオン!」

 あたしたちの攻撃は無駄じゃなかった。

 右目を抑えて悶絶する漆黒の魔獣。

「てやぁ!」

 ――突き、払い、振るう。

 連撃を意識して、漆黒の魔獣の体力を削っていく。


 あたしの脳裏にはあの夜の両親の戦いが蘇っていた。

「サラ殿! いけえええ!」

「サラ殿!」

「これがレインブルク一族の力、か」


 バンズ、ラーナ、カティンがあたしを応援してくれている。

 でも……あたしが聞きたい声は、ガンクだけ。

 胸の鼓動が高鳴る中、あたしはショートソードを振るう。


「サラ、危ない!」

 しまった。漆黒の魔獣から意識を逸らしていたせいで、背後に回られた!

 あたしは急いで回避しようとするが、避けられない。


 あたしは目をつぶって、漆黒の魔獣に食らいつかれるのを待つ。

 一秒、二秒、三秒……。

 あれ、攻撃が来ない。


 あたしは後ろを振り返ると、そこには左腕を噛みつかせて、耐えるガンクがいた。

「ガンク……」

「言っただろう。戦闘中によそ見をしちゃいけない」

 ガンクの左腕は相当な筋肉だわ。どうやら、筋肉を膨らませて魔獣を離さないようにしているみたい。


 でもガンクの顔色は真っ青だった。

 そういえばガンクには呪いがあるって言ってた。

「ガンクを離せえ!」


 あたしは漆黒の魔獣に蹴りを入れて、ガンクから引きはがす。

「サラ、俺にかまうな」

「でも! でも!」

「俺はお前の師匠だ。俺はいつだってお前を守る。師匠の仇を取るのは弟子の務めだろ?」


 あたしはガンクの言葉に泣きそうになる。

 この人は……いつも不器用なのにあたしを見てくれている。

 あたしは……一人じゃない!


 あたしの背中の羽根がこれまで以上に輝く。

 漆黒の魔獣が後ろをちらっと見て、何かを警戒している。

 何だか知らないけど……勝つ!


「弐の回 周壊!」

 ジグザグにステップを踏み、何かに気を取られている漆黒の魔獣の顎を切り上げる!

「グオオオオ!」

 うるさい! ガンクや蒼火の剣の皆をやった罪は重いわ!

 漆黒の魔獣が天高く打ち上げられる。


「参の回 天壊!」


 宙を天使のように舞い、空中からショートソードを振り下ろす。

 一瞬、森の奥にパパとママがいた気がした。


 四年前のあたしは、何もできなかった。

 パパに斬られて、ただ逃げることしかできなかった。

 でも今は違う。

 あたしには剣がある。

 師匠がいる。

 仲間がいる。


「天・壊!」

 これはガンクと蒼火の剣とみんなの分!

 ショートソードに纏わせた白い光が漆黒の魔獣を貫く。

 そして、戦いが終わる。


「見事……」

 え? 漆黒の魔獣が最後にあたしにだけ聞こえる声で呟いた。

 魔獣は黒い靄を闇に溶かして消えていった。


「サラ、よくやったな」

「……ガンク」

 あたしはガンクの胸に抱き着いて、涙をこぼす。

 勝ったよ、パパ、ママ。


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