第十五話 ★アルトたちの死闘
「アルトの坊ちゃん! 右から抜けたぞ!」
「坊ちゃんって言うな!」
ここはマルクの街の森の中腹部の拠点。
日差しが暮れていく中、森から様々な魔物が飛び出し、俺たち冒険者や騎士たちを食おうとする。
正直ここまでの戦闘は初めてだ。
俺は正直怖い。オークやゴブリン、ジャイアントスパイダーたちが束になって襲い掛かってくる。
でも……あの飲んだくれのガンクさんに教えられたことがある。
「三人で協力してまずオークを倒すぞ! ゲイルはタンク役。アニーは隙を伺って水魔法を頼む!」
「アルト様、どこまでもお供します!」
「私もアルト様のためなら!」
冒険者は一人で戦うものじゃない。パーティーの皆と役割分担して戦う。
そして仲間を信用、いや信頼して戦う事。
それを口酸っぱく、ガンクさんに教えられた。
俺のお付きの従者のゲイルとアニーが指示通りに動く。
ゲイルはオークの攻撃を片手盾で受け流し、隙を作る。
今だ。今なら奴の首を攻撃できる。
ロングソードの重みを使いながら、助走をつけて宙を跳ぶ。
「でやああ!」
オークの首の動脈にロングソードを振り下ろし、血管を切り裂く。
まだだ。あいつはまだ死んじゃいない。
だけど俺には仲間がいる!
「ウォーターアロー! これで決めます!」
オークは俺を目で追っていて、水魔法に気づかなかった。
ウォーターアローはオークの右目に当たる。
オークは苦悶の表情を浮かべる。
そうだろう。俺のパーティーは最強だからな。
ゲイルがオークの足の腱を切り裂く。
ナイスだ! 倒れたオークに素早くロングソードを突き刺し、息の根を止める。
だけどまだまだ他のオークやジャイアントスパイダーと周りの冒険者と騎士が戦っている。クソっ。数が多すぎる。
最初に声をかけてきた冒険者たちは四人でジャイアントスパイダーを相手していた。
ここにいる冒険者たちはまだまだ駆け出し冒険者だけど、皆しっかり連携している。
あっちもジャイアントスパイダ―を倒したぞ。
『良いか。駆け出し冒険者はまず仲間を信用し、信頼して連携を確立させることが重要だ』
これはガンクさんが言っていたことだ。
今なら意味が分かる。誰かが欠けても魔物は倒せない。
「クソっ。アビススパイダ―が出てきやがった!」
「誰か援護を頼む!」
マジか。アビススパイダーはジャイアントスパイダーの希少種だ。
攻撃に闇魔法が加わり、子分の蜘蛛を召喚してくる。
俺は貴族だから魔物図鑑を読んで勉強していた。
俺たち駆け出し冒険者と騎士たちの総勢十人がアビススパイダーに当たる。
アビススパイダーはまず、子分の蜘蛛を召喚してくる。
だがガンクさんにジャイアントスパイダーとの戦い方なら学んでいる。
「アビススパイダーはジャイアントスパイダーが闇魔法を使ってくるようなイメージだ! まず子分の蜘蛛を倒してから攻撃するぞ!」
俺はいつの間にか、総勢十人を指揮するように声を出していた。
これはまずいか? 流石に騎士たちは俺には従ってくれないか。
だけど、周りの騎士たちは俺に向かって頷いて、声を出してくれた。
「森の案内や魔物への対処が見事だった! しかもアルトは貴族の坊ちゃんだ。指示に従おう」
おお、言う事を聞いてくれた。冒険者と騎士たちを一緒に組ませたのはガンクさんの指示だ。こういう事態を見越して、あの人は仲を深めるように仕向けたのか? 侮れない人だな。
「行くぞ!」
『おう!』
まず子分の蜘蛛を魔法や剣で倒していく。
だが意外に動きが素早い。これは魔物図鑑からはわからなかったことだ。
そして子分が倒されている間にアビススパイダーは攻撃を仕掛けてくる。
あれは……ダークバインドだ!
「全員、子分の蜘蛛から離れろ! ダークバインドが飛んでくる」
「いや、今からは避けられない!」
子分の蜘蛛たちはその身から闇の糸を吐き出し、四人の冒険者と騎士を捕まえてしまった。
まずい。糸はアビススパイダーが引っ張って丸のみにしようとしている。
こんな時はどうしたらいい。ガンクさんならどうする!
「魔法を使える者は糸を魔法で攻撃だ!」
「ウォーターアロー!」
「ライトアロー!」
「アーススラッシュ!」
水魔法の矢や光魔法の矢、更には土魔法が使える騎士の斬撃が飛んでいく。
よし、闇魔法の糸は切れたぞ。
「ここで畳みかける! 散開して斬りこめ!」
「よっしゃ! アルトの坊ちゃん、待ってました!」
「うおおお! 俺たちはこんなところで死んじゃいられねえ!」
重心を少し落として、一歩一歩助走しながら、アビススパイダーに近づいていく。
周りの冒険者たちはアビススパイダーの脚に斬りこんで傷をつけている。
「アルト様! 私を踏み台に使ってください!」
「アルト様、補助魔法です!」
ゲイルが足場を作り、アニーは無属性の補助魔法を使ってくれる。
俺にはもったいない従者だ。
「行くぞ! うおおお!」
俺はゲイルの足場に乗り、軽くなった体でアビススパイダーに跳んでいく。
俺の憧れの冒険者、蒼火の剣のナランさんの技。
「蒼紅蓮!」
俺はアビススパイダーの頭に飛び乗り、蒼い炎を纏わせたロングソードを力の限り突き刺す!
「ギギャアアアア!」
アビススパイダーの急所に入ったのか、アビススパイダーは悲鳴を上げて崩れ落ちる。
「うおおお! アルトの坊ちゃんがやったぞ!」
『アルト様!』
皆の歓声が心地いい。
俺は森の奥を振り返って、皆の無事を祈る。
ガンクさん、まだまだ教えてもらいたいことがあるんだ。
サラはつんつんしてるけど……あれで可愛いところがある。
「あっ……」
すっかり満月が出ている夜に白い光が天に立ち上っていた。
何故だか知らないけど、あの光を見て安心感を覚えた。
勝って戻ってきてよ。
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