第十四話 ダメおっさん、漆黒の魔獣と戦う
「ダメです! 速すぎて、魔法が当たりません!」
「バンズ! 狼狽えるな! 補助魔法と回復魔法を掛け続けろ!」
カティンがタンク役でサラとラーナが切り込み役。
俺は漆黒の魔獣の隙を伺っているが、全く大剣を振れる気がしない。
カティンは魔獣のフェイントに面食らいながらも、大槍で地道にダメージを与えている。
ラーナは転移を使ってもかわされると学習したのか、素早い足さばきで関節を狙って攻撃している。
サラは鉄のショートソードに魔力層を纏わせて、カティンが漆黒の魔獣の攻撃を受けたところで切りかかる。
「でやあ!」
シュン!
今のはいい一撃だ。漆黒の魔獣の脚に切り傷を負わせる。
だが、漆黒の魔獣は大きな咆哮を見せる。
カティンとサラとラーナは至近距離で咆哮を聞いて、少しふらつく。
「まずい!」
漆黒の魔獣はラーナを狙って、大きな爪撃を食らわせようとする。
俺は素早く、脚に魔力を集めて、ラーナの前に大剣を持って立ちはだかる。
「グオオオオ!」
「おおおおお!」
俺は大剣で爪撃をうまく受けたが、吹き飛ばされる。
ちぃっ。何て攻撃だ。
俺は全力で動ける二十秒の内、二秒を使ってしまう。
だがラーナは何とか守れた。
「申し訳ありません」
「大丈夫だ。またサポートを頼む」
地道な攻防が続く。
蒼火の剣はバンズが治療中で動けない。
漆黒の魔獣はまだまだ体力が有り余っている。
カティンは何とか漆黒の魔獣に食らいついている。
ズシャ!
ラーナが漆黒の魔獣の右目にナイフを突き立てた。
だが遠くに払い飛ばされる。
漆黒の魔獣の右目がつぶれた効果は大きかった。
あいつの死角をついてサラが連撃を叩きこむ。
右足から踏みこみ、下半身の力を上半身に伝えて、ショートソードを振るう。
漆黒の魔獣は血まみれになり、段々と動きが鈍ってきた。
ここが勝負どころだな!
「サラ! 後詰めを頼むぞ!」
「ガンク! 何をするの!」
「俺の本気を魔獣にぶち込む!」
俺は全身に魔力を纏い、全力の身体強化をする。
ズゥン!
右足の踏込で地面が沈み込む。
走り出して一秒で漆黒の魔獣との距離が縮まる。
「壱の回 壊閃!」
俺の全力の横薙ぎはギリギリで躱される。
残りは十七秒。
漆黒の魔獣が右手を上げて俺に振り下ろす。
大剣を盾にして、魔獣の攻撃ごとかちあげる。
驚いた表情を見せる魔獣。
そうだよ。てめえのその面、見たかったんだ。
「弐の回 周壊!」
俺は魔獣の攻撃を跳ね上げた勢いのまま横に回り、大剣を奴のどてっぱらに食い込ませる。
魔獣は吹き飛んでいく。残り十秒。
「貴様、何者だ……」
後ろでカティンが絶句している。
良しこれで決着を……。
「グオオオオ!」
な、なんだ。漆黒の魔獣から堕天使のような羽根が生える。
そして次の瞬間。
「ぐふっ!」
俺は後ろに吹き飛ばされる。
な、何だ。全く見えなかった。
さっきまで俺がいたところに漆黒の魔獣がいた。
転移では、ない。だけど目が追い付けなかった。
カティンが次に吹き飛ばされる。
まずい、この次はサラかバンズだ。
「サラ、バンズ! 逃げろ!」
「ガンクを置いていけないわ!」
「カティン様を置いて逃げるわけには……ぐおおお!」
バンズも一瞬で吹き飛ばされる。
まずい、サラもやられる。
俺が動かないと……。
森は暗くなり、空には大きな満月が出ていた。
次第に花畑から白い光が立ち上る。
何だ? サラの周りに白い光が……。
「……なにこれ。力があふれてくるわ」
その光はサラに集まり、背中に天使のような羽根が生える。
よくわからないが漆黒の魔獣とサラは血縁関係にある。
あの魔獣はまさか……。
「これならやれる!」
サラは鉄のショートソードに白い光を纏わせる。
あれは「英雄」が使う光属性の剣か。
はっはっは。俺はちゃんとサラを育てられたんだな。
さあ見せてくれ。レインブルク一族の力を。
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