第十一話 ダメおっさん、冒険者に認められる
「参の回 天壊!」
俺は天高く跳びあがり、フォレストイーターにアダマンタイトの大剣を振り下ろす。
——ズドォン!
フォレストイーターは真っ二つに叩き割れて、左右に分かれる。
「危なかった」
俺はふうとため息をつき、後ろを見る。
あれ? サラ以外の冒険者が唖然としてる。
「あんた! いやガンク! 何よあの技!」
「え? 飲んだくれのダメおっさん、あんなに強いの?」
「すげえ、さえないダメおっさんなのにめっちゃカッコいい」
ナランと駆け出し冒険者が大声で騒いでいる。
だが俺はサラとナランに説教だ。
「おめえら! 大声で騒ぐな! 魔物を引き寄せるだろ!」
「は、はいぃ!」
「おお、すげえ。勝っても周りの警戒をしてる」
「まさか俺たちに経験を積ませるために、後衛をしてたのか?」
駆け出し冒険者たちが小声でなんか言ってるがどうでもいい。
俺は全力の威圧でサラとナランを見る。
「おい」
『……はい』
「なんで、指示に従わなかった」
「……ごめんなさい」
「だ、だってあのまま攻撃すれば……」
サラは素直に謝ったな。だがナランは減点だ。
「お前が自分のパーティーで功を焦ったらどうする?」
「そ、それは怒って……あ」
「そう言う事だ」
「……はい」
日差しが傾いていた。
どうやらそろそろ夜だ。一応森の魔物は間引いたし大丈夫だろう。
それに、レインブルク一族と何らかの関わりがある魔獣が出てくる可能性がある。
「もう日が暮れる! ここらで帰るぞ!」
『は、はい!』
俺の全力の威圧にビビった駆け出し冒険者やサラ、蒼火の剣。
最初からちゃんと指示に従えっての。
俺はアイテム袋にフォレストイーターを入れると、冒険者ギルドに戻った。
**
俺たちは冒険者ギルドに戻ると今日の予行演習をギルドに報告する。
勿論、サラとナランの無茶や、森の中腹部でサイズのデカいフォレストイーターに出会ったことも報告する。
顔なじみの受付嬢は「ギルド長マスターの部屋に来てください」というのでついていく。
今日連れて行った駆け出し冒険者やサラと蒼火の剣は待たせてあるぞ。
マルクの街の冒険者ギルドマスターはこの街では珍しいエルフの女だ。
水色の髪を肩まで垂らした元Aランク冒険者。
氷姫という二つ名を持っていた異世界の勇者曰くパイオツカイデーな美人。
「今何か変なことを考えたかしら?」
「い、いや」
妙に勘が鋭い。
「よう、マーシャ」
「よく来たわね。ガンク」
俺とマーシャは昔からの腐れ縁ってやつだ。
というか昔のパーティーの仲間でもある。
「飲んだくれのダメおっさんがとうとうやる気を出したね」
「うるせえ、クソば……いや、何でもない」
あぶねえ。こいつ魔法陣を瞬時に展開してバレットを撃とうとしていた。
氷の弾丸なんてぶち込まれたら一瞬でミンチだ。
俺は冷や汗をぬぐい、サラの過去に出てきた魔獣の話やフォレストイーターがでかすぎたという話をする。
「本当はサラとナランの一撃で終わっていたはずだ。だがいつもよりサイズがでかくて体力が多いから死ななかった」
「……そうね。でもこれ以上冒険者パーティーは呼べないのよ」
「……そうか。そう言えばクソ師匠が領主クロイって知ってたか?」
「当たり前でしょ? これでもギルドマスターよ。でも流石に驚いたわよ」
そんなことを話しながら、蒼火の剣だけでは危ういという話になる。
「あのクソ爺が直接出てこれないのか?」
「それは無理よ。でも黒髪メイドくらいは貸してくれるかもしれないわ」
「ラーナか? 確かにそれなら行けるかもな」
「後、しっかりサラの事面倒見なさいよ」
「分かってるよ」
ったく。どいつもこいつもサラの事を俺に押し付ける。
だがサラは俺の弟子だからな。
この街にいるまでは面倒を見てやるよ。
「アルトは知ってるわよね?」
「ああ。貴族の坊ちゃんか」
「あの子たちも森の異変で活躍するっていって志願してるの。少しでいいから稽古してあげてね」
「まあいいだろう。知らねえ仲じゃないしな」
一緒にミミ―ちゃんに説教された仲だからな。
俺はギルドマスターのマーシャとの話を切り上げて、駆け出し冒険者と蒼火の剣のメンバー一人一人に銀貨六枚を渡した。
それからアルトたちや他の駆け出し冒険者にギルドの稽古場で指導をしていた。
勿論サラも一緒にだ。
稽古は競い合ってやった方がうまくいく。
何故か俺の家に押し掛けた蒼火の剣たちが弟子にしてくれと言い出したがお断りした。
だが……。
「ガンク~。今日の飯はなんだ?」
「あたいの胃袋を掴んだからには責任取ってもらうしかないさね!」
「……ガンクのご飯、美味」
「ったく、ガンクに三人とも心を許しすぎじゃない? あ、わっちは今までだしたことのない料理がいいな」
何故か蒼火の剣の四人が俺の家に居候してるんだが?
宿代を払えと言ったら本当に払うし。
「ガンク……あたしに早く剣を教えて!」
サラは寝泊まりこそ、森の温もりでしているがほぼ俺の家で飯を食う。
まあ肉付きはよくなってきた。
さらしを巻くのに苦労していたのをちらっと見てしまったのは内緒だぞ。
はあ、サラしか弟子に取るつもりはないんだがな。
そして予行演習をしてから三日後にとうとう領軍との合同依頼が始まる。
待ってろよ。漆黒の魔獣。
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