第十話 ダメおっさん、Bランクパーティーに舐められる
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俺が森の異変に向かう冒険者たちのリーダーだとギルドから発表されると大きなどよめきが起きていた。
「おいおい、飲んだくれのダメおっさんがリーダーだって?」
「いつも仕事してないやつがなんでリーダーなんだよ」
酒場のウェイトレス、ミミ―ちゃんがそれに異を唱えようとしていたが止める。
まあ当然の反発だ。
サラはじっと黙ってこちらを見ている。どうするかを見ているようだ。
俺はいつもの調子で声を出す。
「おい、お前らが不安なのはよくわかった。ならマルクの街の森の異変を解決する予行演習をしようじゃないか」
「ああ? 金は出るのか?」
「ああ、俺が払う。一人につき、銀貨六枚出そう」
ヒュ~。
ギルドの酒場に居た冒険者たちが口笛を吹く。
クエストの相場としては大体銀貨一枚出れば、良いクエストに入る。
昔一緒にパーティーを組んでいた勇者は通貨の相場をこう言っていた。
鉄貨が異世界の通貨一円。
銅貨一枚が百円。
銀貨一枚が千円。
金貨一枚が一万円。
大金貨一枚が十万円。
白金貨一枚が百万円だ。
宿屋は銀貨二枚から三枚で二泊から三泊泊まれる。
この世界は物価が安いって異世界の勇者は言っていたがどういう事だろうな。
俺を訝しげに睨みつけてくる見慣れないパーティーがいる。
うん? 確かあいつらはマルクの街の隣街、ゴーガスのパーティーか?
「あんたがマルクの街のダメおっさん、ガンクね」
「ああ。あんたは?」
「蒼火の剣のリーダー。ナランよ」
「ゴーガスの街のBランクパーティーか。ギルドマスターの要請で来てくれたのか?」
「ええ。でもリーダーがこんな冴えないおっさんって聞いてがっかりしてるわ。今なら私がリーダーを代わってあげてもいいけど?」
ふむ。かなりの自信家だな。
冒険者のランクはFからEランクが駆け出し冒険者。
DランクからCランクが一人前から中堅冒険者。
BランクからAランクが貴族の指名依頼も入る二流から一流冒険者。
Sランクは偉業を成し遂げた超一流冒険者だ。
メンバーは女四人パーティー。
リーダーのナランは蒼い刃のロングソードを使っている。
結構魔力もありそうだ。
恐らく魔剣使いだな。
後ろのとんがり帽子をかぶった杖を持った魔法使いは俺の魔力波形を探ってきやがった。まあ、常に魔力層を纏っているから魔力波形は読ませなかった。
パッと見た感じ、ナランより魔力が高い。
後は全身鎧の大盾を持った二メートル近い巨人族の女と軽装の盗賊っぽい獣人族の女だ。ダンジョンを潜るのに良いパーティーだな。
「残念ながら領主クロイの命令でな。代わってやれない」
「ふん。貴族のコネがあるのね。不快だわ」
まあ信用を得るには戦闘して同じ釜の飯を食うのが一番だ。
俺はギルドの駆け出し冒険者たちと蒼火の剣とサラを連れて、マルクの街の森に行くことにした。
「ガンク、マルクの街の森ではどんな異変が確認されてるの?」
サラが聞いてくる。
他のパーティーも聞き耳を立てているようだ。
俺は冒険者ギルドから聞いた情報を共有する。
「マルクの街の森の駆け出し冒険者が戦う所でフォレストイーターのような魔物が確認されている。食われた冒険者もいるらしい」
「フォレストイーターって何よ」
「ナラン。フォレストイーターは森の瘴気や魔物の死骸を食って成長する魔物だ。通常はDランク程度の強さだが、今回のフォレストイーターはCランクくらいの強さになっているらしい」
フォレストイーターは駆け出し冒険者には厳しいが、今回は戦ってもらう。
いざとなれば助けに行ける。蒼火の剣もいるなら楽勝だ。
マルクの街の森の浅い層に入るとゴブリンやキラーラビットが出てくる。
ゴブリンは緑色の小人で棍棒を振り回す魔物だ。
女の人間を攫って子供を増やすため、人間に嫌われている。
だがEランクの冒険者なら簡単に倒せるレベル。
キラーラビットは角が生えたウサギだ。
突進は遅いものの、刺さると威力が高く、命を落とす冒険者もいる。
「ゴブリンは数が多い! 棍棒は地味に威力が高いから躱すか盾でしっかりと防御してから攻撃しろ!」
「そこの坊主! キラーラビットは突進をしっかりと躱して攻撃するんだ。安物の盾だと突き刺さるぞ!」
俺は駆け出し冒険者たちにしっかりと指示を出す。
サラも駆け出し冒険者に混じって、魔物を狩っていた。
蒼火の剣は俺がしっかり指示を出しているのを見て、目を細めている。
というかうずうずしてる。お前らも戦いたいのかよ。
「蒼火の剣は大物が出てからだ」
「ふん、ダメおっさんに言われなくてもわかってるわ!」
相変わらずダメおっさん呼ばわりかよ。
マルクの街の森を進みながら中腹部に入る所まで来た。
「ガンク!」
「ああ、あれは……」
フォレストイーターだ。
だがサイズが二メートル半はある。
おかしいんだよ。普通は一メートル半だ。
「森に魔物の死骸が多いのか……?」
俺は一人呟きながら蒼火の剣に目をやる。
駆け出し冒険者に経験を積ませつつ、蒼火の剣とサラに倒させる。
「お前ら! まずは魔法で一当てしろ! だが火魔法は禁止だ!」
駆け出し冒険者の魔法使いが詠唱を始める。
その間にフォレストイーターが突進を始める。
「タンク! 突進を止めろ!」
「あたいに任せな!」
蒼火の剣の巨人族の女が前に出て大盾を地面に置き、構える。
「ビッグシールド!」
タンク専用の防御力強化魔法だ。
確かビビアンって名前だったな。
「!」
フォレストイーターがビビアンに突進するが、大盾に弾かれる。
「今だ!」
「ウォーターアロー!」
「ウィンドスラッシュ!」
「⁉」
フォレストイーターにダメージが入る。
声にならない悲鳴を上げている。
サラとナランが素早い動きで斬り込む。
サラはまだまだ足さばきに難があるがナランは流石Bランクだ。
「ちょっと! あたしについてこないで!」
「あんたこそ!」
サラとナランは文句を言いあいながらもフォレストイーターに攻撃する。
「スラッシュ!」
「魔剣・蒼紅蓮!」
サラの魔力層を纏わせたショートソードの一撃。
ナランの魔剣に蒼い炎が舞い踊り、フォレストイーターに確実なダメージを与える。
ここが勝負所だな。
「弓を使える奴はフォレストイーターが逃げる前に攻撃!」
駆け出し冒険者の弓使いは俺の指示を聞いて、矢を放つ。
さっきまでゴブリンやキラーラビットと戦っていた時に指示を上手く出していたのが信用に繋がったらしい。
だが異変が起きる。
フォレストイーターが闇の靄に包まれると、フォレストイーターの周りが暗くなる。
「サラ! ナラン退避!」
「今が勝負所よ! 退かないわ!」
「私の魔剣で一発よ!」
ちぃっ! 馬鹿野郎!
あれはフォレストイーターの捕食攻撃のサインだ!
サラとナランが闇に包まれて動けなくなる。
駆け出し冒険者が弓や魔法を撃っているが効いていない。
あいつは耐久力があるからな。
俺は足に魔力を纏わせて、瞬間的に全力を出し、後衛から飛び出す。
「間に合え!」
俺はアダマンタイトの大剣を担いで、天高く跳び、大剣を振り下ろす。
「うおおおお! 参の回 天壊!」
次話に続く。
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