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没落令嬢は空飛ぶサメを駆る 〜異世界転生してきた最強生物と一緒に騎士として成り上がります〜  作者: 二階堂まりい


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空飛ぶサメVS火山のドラゴン

リタとフカは騎士団の夜勤をしていた。

 焚火をセーナ、ヴェイルと共に囲み他愛もない話をする。


「今まで一番怖かったモンスターは合成獣だなあ……フカと出会う直前に襲われたのが割とトラウマで」

 リタが苦手なモンスターの話をする。


「私は巨大魚が苦手というより腹立たしいわねえ」

 セーナも言う。

 


 その時、詰所に飛び込んで来た者があった。

「どうされました?」

 ジェネがすぐに対応する。

 駆け込んで来た女は、息を切らしながら説明した。

「温泉街に竜種が現れたんです! 

 毒の息を吐いています」


 竜種――あらゆるモンスターの中でも最強の存在。




 ダンテとジェネに率いられ、リタとフカ、セーナ、ヴェイルらは温泉街へ着いた。

 しかしその頃には、街に竜種は居なかった。


「あれ? 竜種は……」

「ほ、本当に暴れていたんです! 

 それを自警団でどうにか食い止めて……」

 報告してきた女が、疑われたくないといった様子で言った。


「大丈夫、疑ってなどおりませんよ。

 温泉街特有の硫黄に混じって分かりにくいですが、竜種の毒の匂いが一帯に残っています。

 竜種を数十回討伐してきた私が保証します」

 ダンテがそう言うと、女は安心したようであった。


 やがて騎士団の声を聞き付けたのか、屋内に避難していた人々が顔を出した。

「竜種なら、火山に向かって行きましたよ。

 自警団もそれを追って行きました」

「火山ですか……情報をありがとう」




 火山へ急行すると、火口付近に自警団が集まっていた。

 彼らは困ったように火口を眺めている。

「大丈夫ですか? 竜種は……まさか火口の中に?」

 ジェネが訊ねると、自警団の人々は頷いた。


「ええ、あいつはマグマの中を泳いでいるんです!」

「そしてたまに噴火口から顔を出しては毒の息を吐いてくる……倒しようがありませんよ」

「解毒には一角獣の角が効くが、それだって沢山持っている訳ではありませんし」

 そう言う自警団達の手には、竜種を捕らえるために持って来たであろう荒縄が握られていた。



 何か出来ないか、リタは懸命に考える。

 目の前で困っている温泉街の人達のため、没落した家族のため。



「……竜種がよろめいたら、その荒縄を巻き付けてください。フカが隙を作ります」

 そう言うリタを、周囲は心配した。

 しかしリタは凛としている。

「能力を使えるのは一分間だけ……でもフカなら大丈夫って信じてる」



 山肌とマグマが織り成す赤黒い世界に、より深い影が差した。

 竜種が姿を現したのだ。


 リタはフカから降りる。

 瞬間、フカが透明になった。人面鳥を食べて得たステルスだ。


 毒の息を吹こうと胸を膨らませた竜種の喉が破れ、血が噴き出る。

 フカが姿を消したまま、竜種の喉笛に噛み付いたのだ。


「今だ!」

 マグマ中へ逃げ込もうとする竜種に、天馬に乗り旋回した兵士達が荒縄を掛けた。

 そして縄を騎士団と自警団で引っ張り上げ、竜種をマグマから引きずり出す。


「とどめだ!」

 竜種の首元の一番近くに居たリタが、竜種の首を刎ねた。そして戻って来たフカを撫でる。


 いつも通りヴェイルがはしゃいでフカに寄って来て、セーナが呆れる。

 それをダンテとジェネが無言で見つめていた。




 詰所に戻ってからリタと、竜種の肉を食べるフカに、ダンテとジェネが近付いて来た。

「リタ、フカ。お疲れ」

「騎士団長、ジェネ様。お疲れ様です」

「……リタは貴族になれば騎士団を辞めるだろう。

 君の夢が叶う時、リタとフカを失った騎士団がまた弱くなってしまわないか心配なんだ……

 済まない、こんな話をして」

 ジェネが切り出すと、リタは静かに微笑んだ。


「大丈夫です。私は貴族になっても騎士団の誇りを忘れはしないと誓います。

 誰かが困っていたらすぐにフカと飛んでいきます」

「だが、君ばかりにそんな激務を強いる訳にはいかない」

 ダンテが言う。

 それに対して、リタは頭を振った。

「そもそも騎士団はもう弱くなんてありませんよ。

 強い絆で結ばれています」

「絆?」

「はい。以前はどんな血統の天馬に懐かれているかとかで格差意識があって、ギスギスしてましたけど……フカっていうイレギュラーが新しい風を吹き込んで、格差意識は吹き飛んじゃいました」

「……確かに、空飛ぶサメの前では天馬の血など些事だが……」

「でしょう? だから、未来は明るい筈です」

 ガオ、と隣でフカも吠えた。

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