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没落令嬢は空飛ぶサメを駆る 〜異世界転生してきた最強生物と一緒に騎士として成り上がります〜  作者: 二階堂まりい


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17/23

空飛ぶサメと仮装パーティー

「うーん、どうしよう……」

 悩むリタとフカを、アデルとナルカ、テレサが見守っている。

 

 ぴんときたのかリタは急に立ち上がると、組んだ腕の上に本を乗せた。

「ねえ、これはどうかな」

 訊ねたリタに、テレサが訊き返す。

「何してるの、それ」

「本棚の仮装」

「馬鹿なの? そんなんで子爵家のパーティー行ったら門前払いだわ」

 テレサが叱り、両親が頭を抱える一方、フカだけは『本棚の仮装』に拍手していた。


 一週間後、リタはヴェイルの自宅で開かれるパーティーに招待されていた。

 ヴェイルが上級兵士になった記念だ。



 テレサは一つ溜め息を吐いてから言う。

「仕方ない、今からあんたとフカの仮装を買いに行くわよ」

「お金足りるかなあ」

「私も出してあげるわよ。

 ファルト家の家名にこれ以上泥を塗られるのは御免だもの」

「わーい、姉さん優しいー!」

 リタとフカはテレサにくっ付いた。

 離れなさいと叫ぶテレサを、アデルとナルカは見守っていた。



 町へ買い出しに行った結果、リタは蜂の、フカは鼠の仮装をすることになった。

 黒と黄色の縞々ドレスに翅と触角を付けたリタと、大型動物用の鼠耳付きフードを被ったフカは、本棚の仮装よりは百倍良い仕上がりだった。



 あっという間に一週間が経ち、二人はドレイク子爵領に赴き、邸宅のパーティーホールに通される。

 ホールの一段高い所に猫の仮装をしたヴェイルと、人間の仮装なのか長髪のかつらを被ったシアが居た。


 ヴェイルはリタとフカを見付けると、嬉しそうに寄って来る。

「フカ様、リタ。来てくれてありがとう」

「いえ。ヴェイル、上級兵士に昇格おめでとう」

 最低限の挨拶を交わすと、凛々しかったヴェイルの表情が一気に溶けて、彼はフカに頬擦りし始める。

「鼠になったフカ様も可愛いっ……食べちゃいたいにゃー!」

 フカが若干引いているのを、リタだけは感じていた。


 その時リタは視線に気付いた。

 元を辿れば、兎の仮装のセーナ、鳥の仮装のダンテ、熊の仮装のジェネが遠巻きにこちらを見ていた。

「お三方とも、居たなら声掛けてくださいよお」

 リタが言うと、三人ともばつが悪そうな顔をしてごにょごにょと呻く。

「いや、今すぐ行くのはなんか悪いかなって……」

「なあ……」


「し、しかし凄く広いホールだな。

 騎士団も貴族のお客人もこんなに収容出来て」

 ジェネが話題を逸らした。


 確かに騎士団の団長は予定が合う者は全員来ているし、それとは別に貴族も招かれている。


 ヴェイルはフカ吸いを堪能すると、貴族への挨拶回りに向かってしまった。


 リタはフカと、気心の知れたセーナと二人一匹で立食して回る。

「セーナの仮装可愛い。どこで買ったの?」

「は、母が張り切って手作りしちゃって……私はこんな可愛らしいのより、格好いいのが良かったんだけど」

「手作りなんて凄い! 

 うちはお裁縫出来る人が居ないから買ってきたよ」

「え、お裁縫苦手なの? 

 でもお母様とお姉様は造花を作ってるって」

「うん。だから内職も結構時間かかってる」

「あら……」



 突如、歌手を見に集まっていた人混みから男の悲鳴があがった。

「ブローチが盗まれた!」

 わっと人波が引き、人混みは掻き混ぜられてしまう。


 中央に取り残された被害者のジャケットは布地が破れており、血も付いていた。

「その血は怪我ですか!?」

 ヴェイルが訊ねると、体を検めた被害者は頭を振る。

「いえ、これは犯人の血です。ブローチを千切り取った時に犯人は指を刺したんだ」

「なるほど。では失礼ですが、皆様の手を見せていただくしか……」

 言いかけて、ヴェイルは固まった。

 この場には騎士団員が大勢居る。

 ヴェイルも含め、彼らの手はボロボロだ。

 手の傷だけで犯人を見分けるのは困難。

 時間をかけている間に証拠隠滅されてしまうかもしれない。


「兵士がコソ泥でも働いたんじゃないのか」

 そう言う貴族達に、騎士団員は誰も言い返せない。

 万が一それが真実であれば、言い返すこと自体立場をまずくするからだ。



 するとリタが声をあげた。

「フカなら犯人を捜せるんじゃない!?」

 セーナもハッとする。

「そうよ! サメの嗅覚は鋭いわ」

「フカ様、是非捜査をお願いします!」

 ヴェイルが頼む。

 フカは被害者のジャケットの血を嗅ぐと、人混みの中へ突入して一人の貴族の男を鼻先で押した。


 男の手には刺し傷がある。

 そしてフカは彼のズボンのポケットから、服の切れ端が付いたブローチを取り出した。



「フカ様~! 僕と一曲踊ってください!」

 警備に犯人を連行させてから、ヴェイルはフカにダンスを申し込む。

 フカは戸惑っていたが、ヴェイルにエスコートされると誰よりも華麗に舞い始めた。

 子爵とサメは手と胸ビレを取り合って踊り出した。逮捕劇、そして珍妙な組み合わせのダンスで、来場者達の視線はフカに釘付けになる。


 フカと一曲を踊り終えたヴェイルは、今度はリタに手を伸べてきた。

「リタも、僕と踊ろう」

「あ、はい」

 リタとヴェイルは手を取り合い、パーティーホールの中央へ躍り出る。


「ヴェイル、さっきはフカを頼ってくれてありがとう。

 お陰で、フカが怖くないって皆に分かってもらえた気がします」

 リタが言うと、ヴェイルは微笑んだ。

「違うよ、フカ様の能力とリタの機転の賜物だ。

 戦いでも日常でも、リタは僕達を導いてくれる気がするよ」

「そ、そう……?」

 リタははにかむ。

 どうしてこんなに照れるのだろう――きっと兵士としての成長を褒められたからだ。

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