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没落令嬢は空飛ぶサメを駆る 〜異世界転生してきた最強生物と一緒に騎士として成り上がります〜  作者: 二階堂まりい


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空飛ぶサメVSゾンビ達

「また未知のモンスターが出たんですか!?」

 リタの声が空に響く。

 彼女が乗るフカも、困惑したように吠えた。


「そのようだ。今はまだ農場を荒らしているに留まっているが、人的被害が出る前に食い止めなくては」

 ダンテが答えてくれた。


 王都の郊外まで飛んでくると、家畜を追い回して走る人型モンスターが目視出来た。


「フカなら分身してあいつらを一気に食べられる筈です」

 リタが進言すると、ダンテやセーナ、ヴェイルなど皆が喜びを浮かべた。

「頼もしいぜ、フカ様!」

「なるほどね」


 そして数十の天馬と一匹のサメに乗った騎士団達は農場に降り立つ。

 瞬間、鼻が曲がりそうな悪臭に出迎えられた。

「っ……あのモンスター、よく見たら死体じゃない!?」

 セーナが叫ぶ。

 言う通り、腐りかけた死体が走っていた。


「フカ、これは食べちゃ駄目なやつだ……!」

 リタが言った。フカも頷いている。


「奴らを屍と呼称する。地道に片付けていくぞ」

 ダンテが剣を抜き、先陣を切った。

 騎士団はそれに続く。

 屍を次々に斬り捨てていくが、どれだけ倒してもどこからか現れた屍が襲ってくる。


 妙だと皆が考え始めた時、ヴェイルが声をあげた。

「時空の歪みだ! 閉じずに屍を吐き出し続けています」

 ヴェイルが農場の隅に時空の歪みを発見するが、騎士団はかえって混乱する。

「つまり時空の歪みを消せば屍の群れはこれ以上出て来なくなる?」

「でも、時空の歪みを人の手で消す方法なんて知らない!」


「それでも行くしかない」

 ダンテの鶴の一声で、騎士団は時空の歪みに接近した。陽炎のように揺れるのがそれだ。


 その時リタとフカに向かって屍が跳んできた。


 リタはフカの背びれを引いて全力で躱したが、その体は時空の歪みに触れてしまう。

「……え」

 リタの脳内に流れ込んできたのは、見たこともない光景であった。

 海に浮かぶ、巨大な鉄の船。



 ガオ、ガオ、と声がしてリタは目覚めた。

 フカの背中の上で数秒意識を失っていたらしい。

 それをフカが懸命に起こしていたのだ。


「ご、ごめん、フカ……!」

 起き抜けの鼻に、屍の臭いが突き刺さる。

 その時、リタはハッとした。


「皆、離れて!」

 叫びながらリタは時空の歪みのすぐ下に火打石で火を放った。

 そしてフカの作りだすバリアが、燃える草地ごと時空の歪みを包囲する。


 時空の歪みから出て来た屍達は、どんどんバリアの中に溜まっていく。

 そしていきなり爆発し、時空の歪みを消し飛ばした。


「なるほど、屍の放つ腐敗ガスに引火させたのか……」

 ダンテが呟いた。


「あとは、既に居る屍を倒すだけです!」

 叫んでリタが剣を振り上げると、一気に周囲の志気が昂る。

 走る屍は次々に斬られ、または矢で射られていった。

 あっという間に一時間近く経過し、屍の死体という妙な物が農場に積み重なる。



「……これで殲滅ですかね」

 リタが言ったその時、彼女の後ろから最後の屍が跳んできた。

 反応が遅れたリタの代わりに屍を切り裂いたのは、チェーンソーに変化したフカの胸びれであった。


「フカ! ありがとう、助かったよ」

 フカを褒めるリタの元に、目を輝かせたヴェイルが駆けてくる。

「フカ様、何ですか今の剣は! 

 音がバリバリ鳴ってて大迫力でしたよ!」

「これがね、前に話した道化師を倒した時に手に入れた能力で……」

 説明しつつも、リタはどこか上の空だった。





 詰所に戻ってから、リタとフカはダンテに報告をしていた。

 時空の歪みに触れた時に見た、鉄の船についてだ。


 それを聞いて、ダンテは話しだす。

「実は私もここ最近、時空の歪みに異変を感じていた。

 珍しいモンスターや、見たこともないモンスターが増えてきている。

 言いたくはないが、フカが来たのと近い時期から」


「でも、フカを異世界から転生させたのは女神様です。

 女神様が変なモンスターを送り込むなんてことをするでしょうか? 

 私はモンスターとフカは完全な別件だと思います」


「……それもそうか。すまなかった。

 しかしリタが見たという鉄の船は気になるな。

 本当にそんなものが海に沈まずにおれるのか? 

 だとしたら、それを保有する者の文明は一体どれほどの技術を……」

 ダンテの半ば独り言と化した言葉を聞き、リタは拳を握り締める。


「あの、騎士団長。

 もし例の鉄の船が今後襲ってくるモンスターなのだとしたら、私達は……」

 勝てるのでしょうか、と言いかけたリタの手をフカの胸びれが握った。


 少しぽかんとした後、リタは笑う。

「そうだね、私は未来の貴族! 貴族は人を守るもの、だよね、フカ!」

 勝手に落ち込んで一瞬で立ち直ったリタを見て、ダンテは苦笑した。

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